第6話:第一ステップ
「おい、殺魔天武」
「… なんだ、貴様か」
奴隷小屋の門から出る直後だった殺魔天武を引き留めるガイム。
「もう一度… 一度だけでいい!チャンスをくれ」
「… 今日の選別は終わりだ。次回に期待するんだな」
「いいや、お願いだ!この通り!ただ、ただあの石を握らせてくれ…!」
俺はそれを物陰から見守る。場所は壁と看守の塔の間、門からも近く、いつでも作戦を決行できる。
「… 分かった、握れ」
ガイムに手渡しされた石、握った瞬間、強く光った。今までにない以上に。それはほんの10分前…
——ガイムの二の腕にはなんらかの紋様が描かれていた。
「これが魔力を抑制してる紋様だ」
「殺魔天武のやつか?」
「いや、これは俺が自分で描いた。この紋様の能力として、身体から出る魔力を制限する」
つまり、この紋様を使って自分の魔力を偽っていたということだ。これを解除するには破壊するか、紋様として機能させなければいい、つまりは…
「切れ込みをッ… 入れると機能しなくなる」
「これで大丈夫なのか?」
「ああ、これで本来の魔力が反映されるはずだ」
——ガイムの予想通り、石は強く光った。それを見た殺魔天武は各々驚いていた。
「こいつは生かしちゃあおけぇねぇ!」
デカいやつ、俺にいちゃもんつけてきたやつが刀を抜いた… 大太刀だ。だがそれを止めたのは、またしてもあの男だった。
「いや… 気が変わった。お前も連れて行く。馬車に乗れ」
ヨシ!計画通りだ!あとは合図をヤマトに送る。向こうも気づいたようだ、陽動作戦の開始だ。
「てめぇナガトぉぉぉぉぉ!!」
「やんのかタケル!!!」
うまく看守の注意がそっちに行った。殺魔天武もここを出た後、門は閉まってない絶妙なタイミング。門番は今… よし!今ならいける!俺は走って門まで行き、門番が騒動に気を取られてる間に門を出た。これで… あった!ガイムの泥の道!馬車から少しづつ落ちる泥を辿れば場所が分かる。
山道を通って20分ほど、泥は途切れたが、一本道だ。つまりはここをまっすぐ行ったところだろう。あとはガイムの憶測通りであればいいんだが—
—ガイムの憶測、それはある人物のこと。
「俺の指揮していた部隊にいた一番の問題児、あいつが同じ場所にいるかもしれない」
「弾として使うためか?」
「いや、あいつの魔力量は異次元レベルだ。月光の連中も流石に馬鹿ではないだろう。多分なんらかのために生け取りにされてる… はずだ」
「はず?憶測で話すのは危険だぞ」
「確信はある、月光は政府の関係で魔術や魔法に関することは限られた場所でしか行えない。目星はつけてるんだが、もし生け取りにしてるなら、決戦兵器がある場所だろう」
「それで?どうせ厳重にガードされてるんだろ?お前がそっち中に入れたとしても、そいつを解放できやしないだろ」
「だからお前に任せるんだ」
ガイムが懐から紙を取り出した。
「これを俺が連れてかれる施設の壁に描け」
「これは?」
「爆発魔法だ。とにかく描きまくれ。魔力に反応してキッチリ10秒で爆発できるようにしてある」
これで壁をぶち抜くのか。でもそれだけじゃ意味がないんじゃ…
「大丈夫だ。とにかく壁に穴を開けてくれれば俺らの勝ちだ」
——森に隠れ、機会を伺った。周りは誰一人としていなく、今がチャンスだ。壁まで音を殺し近づき、渡された紙を見ながら描いた。曲線と直線が交差するようなおかしな絵が本当に機能するのか半信半疑で。これはとにかく時間との勝負、10秒は短い、いくつ描けるか。
「こんなもんか…!」
自分の中で8秒経った、すぐさま草むらに飛び込み隠れた。
激しい揺れと同時に爆発音が響き渡った、成功だ。見ると壁には大穴が3っつ開いてた。
「このあとは… そうだ、早く戻らないと…」
そう振り返ろうとした瞬間、土煙が晴れ、見えてしまった。この施設の趣旨は分かっていた、だけどいざそれをこの目で見ると、悍ましかった。それは、さっきまで俺らを見下してた奴隷が、緑に輝く魔法陣の中で人間ではない何かに変わっていく光景だった。下半身はなく、腸も胃も全てがはみ出て、尚且つ彼の顔は幸せそうだった。
「うぷっ…」
思わずその場で吐き出してしまった。俺は… とんでもない世界に来てしまったのだと、再度認識した。
「貴様か… 反乱軍か… 敵国の伏兵か… どちらにしろここで斬る」
そこにいたのは、まだ幼い殺魔天武だった。ここで顔を見られるのはまずい!とにかく何かで顔を隠さないと…!
「なんだ、その面は…?」
気がつくと、確かに顔には仮面が張り付いていた。つけた覚えないし見覚えもない。服装もしっかりしている。
「覚悟しろよ…」
抜刀し今にも斬りかかろうとしたところ、突然爆発音がした。施設内でだ。
「くそっ!仲間か!?」
「風気・鉄拳!」
後ろから殴りかかる形で土煙から飛び出して殺魔天武を殴り飛ばした、が流石に刀で防がれた。
「君… あぁそうか!成り行きは分からんがひとまず理解だ!ここから逃げるぞ!」
ガイムは俺を見て言った。どうやら向こうはガイムのことを認識できてないようだった、土煙のせいなのか?
「生きては帰さんぞ、反乱軍!」
「風気・竜巻!」
「!!」
拳から放たれた風が殺魔天武を飛ばした。
「悪いがお前とは関わりたくないんでね!行くぞ、タケル!」
「おう!」
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