第3話:仲間探し
3日目、俺とナガトは脱獄に使えそうなルートや道具を探すことにした。民家の後始末だからいろんなものが落ちてたりする。
「うーん… 脱獄するにしたってよぉ、どっからどうやって逃げりゃいいんだ?」
「まずは地図だな」
屋根の瓦礫の裏でコッソリと作業しながら作戦を練る。幸い看守は手を抜いて少し離れたところから俺らを見てる、会話は聞かれる心配はない。
「地図ったって、看守や軍人がどこにいるのか分かんなきゃ一発アウトだぜ?」
「そうだな…」
この土地に馴染みのある人間が欲しい。でもそんなやつ、この地に来たばかりの俺らの中には居ないかもしれない… いや?この奴隷小屋には確か他の奴らも居たはずだ!そいつらを当たってみよう。
「ナガト、お前が声を掛けたやつの中にアリジュア大陸を熟知してる奴はいなかったか?」
「え?あーと、1人いるぜ。名前は確か… ガイムだったかな?」
「じゃあそいつを正式加入させて聞いてきて欲しい事がある」
聞きたい事をナガトに伝えた。それの回答次第で脱出ルートを決めよう。
「まぁまず、一番現実的なのは陸で日光連か李国に逃げる、だな」
「でもそれだとよぉ、馬で追いつかれるんじゃねぇか?」
「うーん、流石に徒歩で行くのは危険か…」
ふと上に目をやる。この国には空警なるものが存在し、常にワイバーンに乗って飛んでいる。
「空から逃げるにしても、手慣れた空警に一発アウトだろうしなぁ」
「じゃあ残るは海路、か」
海路か。船を盗めばいけるが、海でどこに逃げるってんだ?またきた場所に戻る気か?現実的じゃねぇな。
「そこんとこはあの質問の返答次第で考える」
ここで鐘が鳴った、業務終了を伝える鐘だ。俺らは仕方なく話をここで切り上げて小屋へと続く道についた。朝の業務が終われば次は食事が待っている。ここで俺とナガトは別れて行動する。ナガトは主にスカウトで、対象は俺らと同じ産まれながらの奴隷か不当な理由で奴隷になった奴だ。
「タケル、こいつがさっき話してたガイムだ」
東洋顔の背の高い筋肉質の男だった。多分俺らが来る前からここに居た奴隷だろう。
「やぁ、ガイムさん。早速質問の答えを聞かせてくれないか」
「その前に、一つだけ忠告させてくれ。生半可な覚悟で脱獄しようなんざ考えてんならやめといた方がいい。この国には鬼よりも厄介な奴らがいる」
「それは?」
「魔狩りの隊、この国で最強とも言われる部隊、殺魔天武」
殺魔天武、か。うん、おっかなさそうだなー。まぁこの国最強ならこの国に外に出りゃ意味ねぇじゃねぇか?
「あいつらは、この国の法律で禁止されてる魔術を使って国を守る部隊だ。魔術復権派であった俺もそいつらに捕ま—」
「魔術?え、魔術使えんの!?」
「お、おう… 俺らは今特殊な術で魔術が使えないがな」
「マジかー。あ、続けてくれ」
「あいつらは一人一人が一騎当千だ、この首都を守る為一時的前線から離れ、帰ってくると聞いている。脱獄するなら奴らの居ない時だ」
「それがいつ分かれば良いんだけど、そんなご都合よく分かるわけ…」
「ないな。どうする?脱獄は諦めるか?」
「いいや、俺は諦めない!」
「よし、ならいい事を教えてやろう」
そう言うとガイムは周りを気にしてから話した。
「アリジュア大陸には内海あって、あそこは李国の軍船がよく徘徊してるから月光国は無闇に立ち入れないんだ。そこで考えたんだが、そこに浮かぶ島に逃げればいいと思うんだ、陸路だと殺魔天武に追いつかれるが、月光国の軍艦は殆どが先の海戦で沈没された。逃げるなら海路だ」
俺らが何もしなくても李国側の軍船に怯えて月光国は手が出せない。いい案だ。月光の軍船を全部使うなりしてしまえば向こうは追ってこれない。
「そこで一つ生じる問題があるんだが…」
「なんだ?」
「その島ってのは現在誰の所有地でもないだ」
「それの何が悪いんだ?」
「それがなぁ… ワイバーンがいるんだよ、それも大量に」
ワイバーン…?え?ワイバーンもいるのこの世界?え、こわ。
「ええと、ワイバーンってあの、龍みたいな」
「そうだ、大きさは3mぐらいはある。種族によってはもっとかもな」
それは誰も所有権を欲しがらないわけだ。月光の奴らが空警に使ってるのはグリフォンだ、聞いたところ鈍いしすぐ疲れることから先頭には不向きらしい。
「でもすぐに李国や日光連に逃げればいいんじゃないか?」
「それも一手だが、その国をよく知らないと危ないだろ?」
「あんたは詳しくないのか?」
「生憎な。この国の教育方針で大陸のことは学べても、敵国がどんなのかは全て情報規制されてる」
闇の独裁国家じゃねぇか、ここ!でもまぁ、隣の草は青く見えると言うし、反乱防止のためだろうな。
「おっと、忘れる前に。ナガトが事前にあんたに聞いた質問の答えを教えてもらってもいいか?」
「あぁそうだったな。『外部で協力を仰げそうな有力人物、或いは団体はいるか』、これについては『ノー』だ。俺の仲間も根こそぎこの豚箱の中に入れられた。んで『脱出は現実的か』、これはまだ曖昧なところだ。俺らだけなら一人ぐらいは生きて海岸まで辿り着けるだろうが、この収容所にいる奴隷全員は正直非現実的だ」
「そうだよなぁ、やっぱ武器も無けりゃツテもない状況だもんなぁ」
「…ただ一つだけ可能性はある」
「なんだ?」
「日光連がこの首都を攻撃する日、警備は薄くなる。そこを狙えば確実とまでは言えないが、脱出できる」
「やっぱりこの街の荒れ方、何度か襲撃に遭ってるんだな」
「あぁ、ここ一ヶ月でもう10回は来てる。もうすぐまた攻撃を仕掛けてくるだろう」
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