あの世への歩み そうだ、ペットを飼おう。
「やっぱ、商人って大変?」
「え、何です。急に。今はそんなこと言ってる場合じゃ……。ゅう――者様に、比べれば」
「まー色々とね。でも結局、今やってる仕事が仕事が一番大変だと思うのが人の性かな」
「全く、です」
「盗賊って苦労人なのかな、いやでも臨時収入が時々入ってきそうだし、でも、安定しないからやっぱり勇者よりかは、あーだから狙うのか?」
「何、言ってるんです」
「もしかして商人と盗賊って、運命共同体なんじゃない」
「な訳ないでしょう!」
「ダメ?」
「駄目に決まってるでしょう!」
「あーそっかー」
こんな雄大な大自然を浴びても尚、同じ理解に到達し得ぬとは此奴等も所詮、生を預かって当然の身分だと思い込んでるんだろう。
「まぁ、俺もなんだがな」
颯と降り立ち、面と向かってご対面した。
揃いも揃って人相の悪い奴らばっかだな。
「まったく、お前ら定職にも付かないでカッコつけて、情けない!」
「貴方は今やってる職務を放棄してるでしょうが!」
「あんな端金如きで身命を賭せなど、ぐちゃぐちゃと、俺の価値はもっともっと高いから」
「何を、逆ギレしてるんです! いいから、勇者としての力を発揮してください!」
「へいへい、分かっておりますよ」
更に距離を詰め、相手の悪党の眼差しが黒一色になったところで雑談を交えることに。
「この剣が何で俺をまとわりつくかわかるか?」
勿論、俺だけで。
「相当な剣捌き? 絶対的な力? 無生物への扱い? 違う。昔、俺は図らずとも戦闘狂の立場にあった。だから血を好み、そして争いを好む此奴が、神が気付けば宿っていた」
「話は終わったか」
「あぁ、ご静聴感謝します」
「では、用件に入ろうか」
「早速、暴力ですか」
「いや」
「『いや』も何も追い剥ぎで来てんだから、いずれにしろやってくるでしょうが」
「闇雲に、それ自体を否定する必要はない」
「……」
「暴力は悪ではない。第一段階又、振り翳す前から正義を謳うから畏怖の対象にされているだけだ。そう、これはあくまで交渉。命までは決して取らない」
「都合のいい理屈だな。でも、残念ながらそれは通らないよ」
「ほう、理由をお聞かせ願おうか」
「この戦い、何があっても俺が勝つから」
「死相が出ていてもか?」
あちゃーバレちゃってるー。
不節制が祟ったなぁ。自由って案外、不便。縛られてるより、よっぽど気楽だけど。
「俺って目的達成とそれに関わるあらゆる妨害はこれを以て排除するって決めてるんだ」
だって、架け橋には贄が必要じゃん? よと、格好的にめちゃ重な刃をチラつかせる。
「心優しい龍神と言われるほど生温い性格してないよ、俺」
「では、貴公に商人の倍の報酬を支払おう」
「ほー」
「なっ」
立場で全く別の反応が過ぎ去っていく中、左ん目見開いて指を差し、次の一手で更なる絶望の淵へと突き落とす台詞を吐き捨てる。
「これ、義理の父親が助けてくれなかったせいで義眼になったんだよね。そん時、『弱い奴が悪いってのを座右の銘に』
「『生きている』。と?」
「その通り」
「そんな」
「お宅ら、階級は?」
「二人は銀、我が身は金等級に在る」
「だったら、普通に生きようよ。あーでも、そっちの道の方が稼げちゃうのか」
「御意に」
「俺だってこんなことしたかった訳じゃねぇよ、でもさぁ、やっぱ生きてるとあんのよ、たくさん」
身なりと顔立ちから察するに、皆が王都出身であるのに何でこんな貧乏なんだろうか。
「よし、帰るか」
「えぇ⁉︎」
「我々は一向に構わない」
どうせ、また明日もあるんだし。今日のことは数時間後の俺、明日は明日の俺に託すとしよう。
「あ、あんた! ほっ、本当は勇者似の人間なんじゃないか」
「偽装は大罪だ、懸賞金が幾ら付くか」と直様、寝返った発言に、俺は飛ぶ構えに入る。
「もしかして、今から捕えられるの? 俺」
口に出さずとも、全身がそう表していた。
そして、結局、囚われの身から羽撃いた。
決して振り返ることはなかったが、背からの横殴りの視線が、後の不穏を引き立てた。
それとはまるで別の靄が逃げ仰る先に大きな影を落として、自然と先の道を閉ざした。
当然、歩みは止まり、何とか撒いたものの絶不調タイム絶賛、更新中の俺の身には負のオーラが漂い、被食者の香りが立っている頃だろう。
「ハァ。はぁ、……」
ずっと。
こんな晴れた日に誰かを気にして生きていくのか。
まぁ商人はどう足掻こうが手出しできないだろうし、役目は果たしたと言っても過言じゃない。よね? うん。俺偉い、頑張った。
きっと、また何かしらの縁があったら会えるさ。
うん。
でも、嫌だな。こんなの。
そう、思考から遠くかけ離れて。
「そうだ、ペットを買おう」
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