第2部 エレンデに愛を込めて

-現在-


「トラさんお久しぶりです!前に東京で会って以来ですね!」


「エイ〜!ホント久しぶりだな!お前元気にしてたかー?」


トラさんこと那須原虎威さん。ボクが入部した当時4回生だった先輩で、男性陣の先輩方で1番お世話になった。演技指導だけでなく礼儀作法、プライベートも。


「そいえばなんでボクの住所知ってたんですか?」


「ジョーから聞いたんだよ。というか、ジョーしかお前の住所知らんみたいだったし。お前あれからみんなと会ってないのか?」


「最近忙しくて全然みんなと連絡とってないんですよね。インスタグラム見たりしてみんなの生存確認だけはちゃんとしてるくらいで...。メールのやり取りは全く」


「桃のところには行ってるのか?忙しい時こそ1度あいつのところに行ってちゃんと顔出して来いよ」


トラさんの一言でドキリとした。そういえば桃さんのところに行けてなかったと。仕事が忙しいを言い訳に行くことを放棄していた。


「エイ、お前今も好きなのか?桃のこと」


「そりゃそうですよ。あの日から桃さん以外の人を好きになった事なんてないですよ」


「気持ちわりぃー!!笑 やっぱお前ストーカーで1回訴えられろ!!笑」


「いいじゃないですか!!笑 一途のどこが悪いんですか! 第一ストーカーじみた事なんて1度たりともしてないですし!」


「そもそもお前もう30だろ?お前もそろそろ現実見て他の人探せって」


「余計なお世話ですぅー! トラさんだって今の彼女さんの事、2年も片思いしてたの忘れないですからね!」


「2年と10数年を一緒にすんな笑 てかなんで知ってんだよ!笑」


「いやトラさんがインスタでそう言ってたんでしょ!」


「あり?そうだったっけ??笑」















「ホント2人とも仲良いですなぁ〜!!羨ましいかぎりですなぁ〜笑」


「うおあ!?桃さん!? いやフツーにジョーと野球の話してただけですよ?笑」


「ねぇねぇ、何の話してたの?トレードがどーたらこーたらって話聞こえたけども??」


劇団サークル「空」に入部して早3週間が経ち先輩方や同期の顔や名前がある程度覚えてきた。特に同期のジョーとは同じ学部や巨人ファンだった事もあり打ち解けるのも早かった。


「近いうちにエイと札幌ドームに行って試合見に行こうって話してたんすよ」


「桃さん野球なんて見ないでしょ?笑」


「なーに言ってんの!言ってなかったけどこれでもあたし、高校時代野球部のマネージャーやってたんだからルールどころかポジティンだってわかるわよ」


「ええそうなんすか!?」


「なんなら椋木なんて1年の頃から知ってるし〜」


椋木ことムックはボクやジョーと同じ時期に入部した同期だ。ボクらは知らなかったのだが、同じ高校の先輩後輩の間柄だったらしい。ムックだけ何故ニックネームではなく苗字で呼ばれてるのかなと思ってたけれどそういう事だったのか。


「みんな静かにー!!.....では7月に披露する舞台のサブタイトルを発表します!!」


タイトルは「エレンデより愛を込めて」

架空の国家、エレンデ共和国を舞台にした作品。エレンデ共和国の国王「セペルス国王」が平民である「レイラ」に恋をするという物語。だがしかし、レイラは国で蔓延していた病、黒鉛病にかかってしまうという物語だ。


エレンデより愛を込めては、演劇界の中では特に名の知られた作品である事は周知の事実だった。すなわち、今回の作品を世に出して劇団サークル「空」を復活させるという先輩方の並々ならぬ覚悟の現れだったのだろうとボクは悟った。


「今回の主演のセペルス国王役とレイラ役はオレら4回生の厳選な審査を行ったうえで決定する事にしましたのでよろしく」


「ということは、オレら1回生にも主演の可能性があるってのか!?」


「そういうことみたいだな」


ジョーが興奮を隠せないままボクに話しかけた。


「桃はレイラ役やってみたいと思う?」


「うーん、私は主役級とかはちょっと自信ないなあ〜。どっちかというと私とかよりも涼ちゃんがやって見た方が絶対良さそうだよ?」


「私はパス、てか今回の作品から本格的に裏方回るつもりだから」


「え、ウソでしょ?それトラさん達に伝えてるの?というか、伝えたところでみんな納得しないでしょ」


「みんながなんと言おうと私は舞台より裏方でのびのびやっていた方が楽しいの」


涼ちゃんこと、榎本涼香さん。桃さんと同じ2回生であり同期。演技力は劇団サークル「空」の中でも群を抜いており、次世代部長候補の筆頭格なのだが如何せん周りとの協調性が全くもってないのが致命的な欠点であり、心の開いた先輩方や同期としか話さない。勿論ボクら1回生とは挨拶程度にしか話していない。




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