群青の羊たち
秋乃小路 栄三郎
第1部 13年前
「数十年に一度の大寒波北の大地に襲来」
ニュース番組では昨年も聞き覚えのあるフレーズを今年も聞く、そんな季節になった。そんな事にも気にもならない程に仕事に振り回されていたボクにそれは届いた。
大学時代、サークルでお世話になった先輩であるトラさんの結婚式の招待状だった。
「トラさん懐かしいなぁ。オレの家の住所、誰から聞いたんだろう。」
そんな事を思いつつも数年も会っていない先輩からの結婚式の招待状。僕が行っていいのだろうかと考えたが、自分をあのサークルでお世話になった先輩の結婚式に出席しない理由がなかった。
懐かしさを覚えた僕は、家の押し入れから大学のアルバムをガサゴソと引っ張り出して開いた。
「サークルに入った初日、ガチガチに緊張していた僕」
「先輩方からのスパルタ指導に音を上げて泣いている僕ら」
「合宿先で先輩方に揉みくちゃにされながらピースをする僕たち」
そして、あの人との撮った写真。
-13年前-
「お願い!お願い!!お願い!!!ウチのサークルに来てくれない!?」
「すみません....。入りたいサークルがあるので..。
それに僕、映画とかドラマ見るの好きですけど演技となると....。」
地元球団である日本ハムファイターズファンである僕は大学入学をしたら絶対にプロ野球サークルに入ろうと思っていた矢先の勧誘であった。
「じゃあ1日だけ!1日だけウチの劇団見に来てよ!!それで入る入らない決めてくれれば全然いいからさ!お願い!!!」
「うーん、わかりました。じゃあ1日だけなら.....。」
「え!?ほんと!?!ありがとーー!!!!絶対絶対楽しいからさ!あ!あと君の名前聞いてなかったね!名前なんて言うの??」
「観光文化部の長門栄介です」
「栄介くん!いい名前だね!!栄光のエイ!!
栄介って長いからエイくんって呼ぼ〜」
「そこまで長くないじゃないですか笑」
「まぁまぁ、そこは気にしないの!笑 ということで明日絶対良い舞台にするから絶対絶対見に来てね!じゃねエイくん!バイバイ〜!」
断れない性格である僕は彼女のその必死な説得により1日だけ劇団サークルを見学しに行った。それが桃さんとの出会いだった。
-札幌北栄大学劇団サークル「空」-
30年前当時の観光文化部であった5人組が演劇ユニット「青」を結成したのが北栄大学劇団サークルの始まり。イベント企画や大学祭をきっかけに地元のテレビプロデューサーの目に止まり、果ては地元のローカル番組をスタートさせるという伝説を作り上げた。
ただ、ここ数年はテレビ離れも進んだせいか演技そのものに興味を示す若者が減ってしまい部員が著しくないらしい。
そんな新入生特別ステージと題した劇団サークル
「空」の舞台演目-「ヴァンパイア」-
冴えない大学生活を送る地味な大学生なのだが、実はヤクザ一家の跡取りである「レイジ」とその事実を知らない幼馴染「カレン」の恋愛模様を描いた作品。
「ボクはその演技に惚れてしまった」
まるで自分自身がレイジとしてその現場に立っているような、まるでレイジを愛していたカレンがそこにいた。演技...??いや、あれは演技ではなく、本当に彼女にカレンの魂が宿っていたように。
「今回の舞台とても面白かったです!正直自分は舞台なんて見たこと無かったんですけど、少し興味が湧きました。なので少し考える時間を.....。」
「うおえ!?ほんと!?やったー!!みんなー!入部希望が出たぞー!!」
「エイくん本当にありがとう!!絶対絶対後悔させないから!一緒に楽しもうね!!」
「まだOK言ってないんだけどな…(苦笑)」
まるで自分たちの赤子が産まれたかのように狂喜乱舞しているサークルのみんなの喜んでいる姿を見たボクはついつられて笑ってしまった。
この出会いがボクらの運命を大きく変わるなんて夢にも思っていなかった。
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