第3話 付与師の真実

 魔獣討伐から戻ってきた父上と母上の元におかえりなさいを言いに行くと、2人とも真剣な顔で僕を見つめている。


 僕はどうしたんだろうって思ってたんだけど母上がいつもと違う真面目な感じで僕に話しかけて来たんだ。


「ソラちゃん、よ〜く聞いてね。それで母が今からする質問に答えてほしいの」


 僕はその言葉に頷いた。


「ソラちゃん、母と父に付与をかけてくれたりした?」


 母上の質問に僕は素直に頷いた。それを見て驚く父上と母上。


「えっ!? でも付与士の付与ってレベル0だと身体強化だけで……」


「それも強化率1パーセントよね…… それに使用魔力が30必要なんだし、ソラちゃんはまだ2歳なんだからそこまで魔力が無い筈よね……」


 あれ? 儀式を受けた時に見られたと思ってたけど数値ってひょっとして見えないの?


「ちちうえ、ははうえ、僕、魔力呪(祝)力多いでしゅ」

  

 この世界では魔力っていうみたいだからあえて呪(祝)しゅ力とは言わずに僕も魔力って言う事にした。


 ちなみに2歳8ヶ月になった僕の能力は少し上昇している。父上と母上に付与をかけてたからかレベルも一つ上がったんだ。表記が少し可怪しいけど……


 それにバフとデバフの詳細を見られるようになったんだよ。


名前∶ソラ·カンディーラ

年齢∶2歳

職業∶付与師

称号∶辺境伯三男

位階レベル∶001

体力∶75

呪(祝)しゅ力∶300

技能スキル∶言語理解·不思議箱

  付与

祝福バフ】身体加速·身体強化·耐性向上

呪いデバフ】身体遅速·身体弱体·状態異常


【身体加速】

対象の身体を素早く動けるようにする。対象の速さを1とするなら3まで早くなる。効果時間は2日。レベルが上がれば上昇をもっと高く出来る。

必要呪(祝)力∶5


【身体強化】

対象の身体能力を強化する。対象の身体能力を1とするなら3まで強化できる。

(例)防御力10の者の防御力を30まで上げる。また力10の者の力を30まであげる。

効果時間は2日。レベルが上がれば上昇をもっと高く出来る。

必要呪(祝)力∶5


【耐性向上】

対象の物理攻撃、魔法攻撃耐性を1割増しにする。

レベルが上がれば色々な耐性を向上させる事が可能。効果時間は2日。

必要呪(祝)力∶10


 こんな感じなんだ。デバフの方はまだかける対象が居ないから説明を省くね。 


 父上も母上も魔獣討伐に向かってもその日のうちに家に帰ってくるから僕は2日に1回、2人に付与をかけてたんだ。


 僕の返事を聞いた父上と母上はそれでも不思議そうな顔を崩さない。だから拙い言葉で一所懸命に僕の付与できるバフの効果を説明てみたんだ。

 すると、


「なっ!? そんな馬鹿なっ!!」

「ええーっ!? ソラちゃんは付与士の枠を外れてるわっ!?」


 父上も母上も僕の説明に驚いているよ。


「信じられないが、だけど…… ソラの説明通りの効果があるのならあの時も無傷だった事の説明がつくな……」


「ええ、そうね。それに私の魔法の威力が上がった説明にもなるわ。身体を強化するっていう事はその者の持つ身体能力を強化するって事になるのだから私の魔法を使う際の魔力を強化してくれてるのよね」


 って何やら納得してくれたみたいだけど、その後に父上から話が始まったんだ。


「ソラ、お前の説明にはまだ疑問が残るけどそれには先ずソラに付与士の話を聞かせた方が良いと思う。なのでこれから普通の付与士と呼ばれる者たちの能力について話をしようか」


 そう言うと父上は僕にこの世界の付与士と呼ばれる人たちの事について話し始めたんだ。 


 【付与士】

 付与出来るのは一つだけ

 バフ効果は1パーセント

 デバフ成功率は20パーセント

 全ての消費魔力は固定で30

 魔力保有量が少ない(50〜100)

 レベルが10になっても変わらない


 ってまあ父上の話をまとめるとこんな感じらしいんだ。レベルが上がればと頑張った人もいるらしいんだけど、15まで上げても何も変わらなかったからそこで挫折したそうだよ。


「ソラ、これが普通の付与士の話しになるんだ。だがソラが俺やレーメに掛けてくれた付与はこの普通の付与士とはかけ離れているから驚いているんだよ」


 う〜ん…… そう言われても僕も付与師としか表記されてないからなぁ……


 そこで母上が聞いてきた。


「ソラちゃん、私たちにステータスを見せてくれる? ホントは親子といえど見せるのは良くない事だと言われてるけど……」


 そう言われた僕は躊躇せずに両親に自分の能力を開示したんだ。僕のステータスを見た両親が驚いているよ。


「なっ!? 魔力300だと?」

「付与士じゃなくて付与師?」


 どうも両親には呪(祝)しゅ力とは見えずに魔力って見えてるみたいだ。それと、母上が驚いてるのは何でかな? 付与師であってるよね?


「ソラちゃん、あのね普通は師じゃなくて士なの」


 母上が僕の疑問に答えてくれたよ。そうなんだ、この世界の付与士って師匠の師じゃなくて武士の士なんだね。ひょっとしてコレも呪(祝)しゅ力と同じであの神様のミスなのかな? きっとそうなんだろうね。


「そうでしゅか…… 僕の付与師はちがいましゅか……」


「あら!? 落ち込む事はないのよ、ソラちゃん。だって普通の付与士と違ってソラちゃんのバフは必ず掛かってるんだから。そのお陰で母も父も安全に魔獣討伐が出来てるのよ。有難う、ソラちゃん」


「そうだぞ、ソラ。ソラのお陰で俺は何度も命拾いをしてるんだ。だから感謝してるぞ」


 2人からそう言って貰って僕も少しは落ち着いた。そこである提案を2人にしてみたんだ。


「ちちうえ、ははうえ、一緒に魔獣討伐に行ってる騎士しゃんたちにもバフをかけてあげたいでしゅ」


 僕の言葉に父上が考え込む。母上はニコニコと笑顔になったけど……


「う〜ん…… 確かにソラにバフをかけて貰えば怪我をする者も減るだろうが…… 俺とレーメが一緒に行くのはうちの領地の騎士3名にマツディーラ家から来てくれてる騎士も3名いるんだ。俺たち2人を入れて合計8名になるしソラの魔力が足りないだろう?」 

 

  どうやら父上は僕の魔力の心配をしてくれてるようだ。なので僕は訂正しておいた。


「ちちうえとははうえお2人で必要な魔力は30でしゅ。8人に付与しても120でしゅ」


「なっ!? そ、そんなに必要魔力が少なくてアレだけのバフ効果があるのか!?」


「あなた、ロマン、落ち着いて。でもマツディーラ家の騎士に知られてもいいものかしら? 勿論、私はマツディーラ家の当主と奥様は信頼しているけど、騎士たちはうちからの箝口令に従ってくれるかしらね?」


「そうだな…… 9名来てくれてる騎士たちは交代で魔獣討伐に来てもらってるし、俺も騎士の1人1人と腹を割って話をした事が無いからなぁ…… 良し、取り敢えずソラ!」


「はいでしゅ、ちちうえ」


「俺がマツディーラ家の当主と話をするまで騎士たちに付与をかけるのは待ってくれ。なに、そんなに遅くはならない。レーメ、頼めるか?」


「ええ、ロマン。それなら私とソラも一緒に行くわ。ソラちゃんの婚約者であるクウちゃんにも会いたいし」


 で、話が決まって急にグレートマシーンガーン国に行く事になった僕。初めての外出がまさかの他国だとは思ってなかったよ。

 それも母上の転移魔法で移動するから文字通り初めての屋敷外になるんだ。 

 あ、でも松寺さんに会えるんだ。松寺さん、前世の記憶を思い出してるかなぁ?

 

 

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