リュドス・フォンヘルト・2
🧙
呼び鈴の音が聞こえ、リュドスが立ち上がった。出入り口まで行きドアを開けると、ライアンを先頭に、ディエゴ、小松、雄大が立っていた。
「君たちか。2日ぶりだな。誰かに用か? と言っても今の時間は俺しか居ないがな」
「リュドスさんにこの世界の情報を教えてもらおうと思って来たんだ」
ライアンが開口一番そう言った。
「俺を訪ねてきたのか。しかしよくここが分かったな。誰に聞いてきた?」
「ケイギさんに場所を聞いてきたんです。この時間なら、まだリュドスさんは居るだろうって」
雄大が答える。
「なるほど。で、具体的には何が聞きたいんだ?」
小松が前のめりになった。
「まず1番に聞きたいのは、元の世界に戻る方法です」
リュドスは数秒間黙って、言い切った。
「残念だが、今のところは無いんだ……」
小松の目が揺らぐ。
「無いって、そんな…嘘じゃないんですか?」
声が震えていた。すがりつくような目線をリュドスに送る。
「残念だが、今のところは無い……」
「でも、僕たちを呼び寄せた魔法があるんですよね! だったら戻す魔法も!……」
「存在しないんだよ」
と、リュドスは首を横に振る。
小松の両拳に力が入る。ライアンもディエゴも俯き、雄大だけが黙って小松の肩に手を置いた。
一拍置き、言った。
「それに……仮にそんな魔法があってもエドラド国の職員である俺が、その情報を君たちに伝えることは出来ない──君たちは徴兵された身なんだからな」
小松は言葉を失い、唇を噛む。目にはまだ諦めきれない光が残っていた。
リュドスは彼の表情を直視できずに目を逸らした。
🧙
肩を落とし背中を向ける4人。
リュドスは真一文字に口を閉じ、薄く唇を噛んだ。心のモヤモヤは消えない。
(4人の目……あいつらに似てやがる)
無意識に声が出た。
「おい、ちょっと待ってくれ!」
4人が振り返る。
「なんですか?」
雄大だけが応じる。
「この世界の情報が知りたいんだろ?」
「はい」
「なら、本を貸してやる。待ってろ」
リュドスは職員室に駆け戻り、自席から数冊の本を紙袋に詰めて戻ってきた。
「持ってけ…」と差し出す。
小松は顔を上げようとせず、ライアンもディエゴも苦い表情を崩さない。そんな中、雄大だけが一歩前に出た。
「借りても良いんですか?」
「ああ、職員という立場上、下手なこと言えないしな。自分で調べてもらったら助かるよ」
「じゃあ。借りておきます。いつ返せば?」
「気が済むまで調べてからで良い」
「ありがとうございます!」
雄大は満面の笑みでお礼を言った。その瞬間、リュドスの胸が高鳴った。雄大の瞳は、絶望を知らぬ純粋な光で輝いていた。
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