スムル・アスラー・1
「いらっしゃ……」
気怠そうな男性店員が、雄大と小松を上から下まで見て、視線を別のところに移した。
2人は隅の席に通されたが、明らかにテーブルをまだ拭いておらず、食べこぼしも残っていた。
向かい合わせで席につく。
「なんかあの店員愛想ないな……」
「はい。歓迎されていない気がしますね…」
小松も残念そうな表情を浮かべて言った。
「来て早々ですけど、他の店に変えませんか?」
雄大にそう提案したが、
「いや、せっかくエドラド料理が食べられるんだから今日はここで食べようよ」
と雄大は自分のわがままを通した。
メニュー表には、『ラクタルのスープ』、『蒸しスライム』、『ユギム草のピリ辛炒め』……など、見たことも聞いたこともない料理が載っている。
(スライムはゲームに出てくるあのモンスターのことかな? だったら面白そうだな)
雄大はワクワクしていた。
彼は少し悩んで『蒸しスライム』と『タマノメの甘辛焼き』を注文することにした。
小松は長考して『ユギム草のピリ辛炒め』に決めた。
雄大がさっきの店員を呼び注文をした。水が来てないことに気づいてそれも頼んだが、店員は、明らかに嫌そうな表情を浮かべた。
「あいつ一体何だろうね…」
苛々を隠しきれない感じで言った。
「あの人だけじゃないですよ。気づいてませんか?」
と小松に言われて、他のテーブルを見回してみる。周囲のテーブルからうっすらとした敵意のようなものを感じた。
『タマノメの甘辛焼き』を店員が運んできた。
店員は、料理と水を乱雑にテーブルに置いて、厨房の方に戻っていく。
「何なんだよ…」
雄大は小さく呟いた。
小松は青褪めた。
やってきた『タマノメの甘辛焼き』のヴィジュアルが、実にグロテスクだったからだ。
色は、濃い赤ピンク。直径7センチほどの球体状で、中央に大きな目玉が付いている。その物体に黒いソースがかかっていて、下側にもソース溜まりが出来ていた。
雄大は「気持ち悪いな……」と思いつつも、美味しそうな香りがしているのでその料理を食べることにした。
ナイフとフォークで端っこを切って、口に入れてみる。
その瞬間、小松が「大丈夫ですか…?」と心配そうな顔で雄大を見た。
(あ…これは食べたことがある味だ)
「これはイカ焼きの味だな。けっこう美味いよ」と発言した。
彼は小松にも「食べてみる?」と勧めたが、彼は首を全力で振って断った。
「じゃあ、せっかくだからこの目玉の部分も…」
フォークで目玉を突き刺して口に運ぼうとした時だった。
「止めとけ」
と、雄大は、フォークを持った腕を誰かに掴まれる。
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