エドラド城下町・4
エドラド駅前広場──
駅の目の前には、円形の広場がある。内側を沿うようにしてベンチが何脚も並び、中央には噴水もあった。
ベンチで食事を摂ったり、寝ている人。
走り回ってる子供や、立ち話をしている母親たち。
酒を片手に持つおじさん。
手品師や道化師などのストリートパフォーマー。
歌うたい、絵描き、路上販売者が点在し、それなりに広場は賑わっていた。
雄大と小松は、右奥のベンチに座っている。
「でもショックだったな……電車ぐらい乗せてくれても良いのに…」
小松の方を見ずに、そう言った。
雄大の視線の先には、道化師が居る。コミカルにおどけてから玉乗りを失敗する道化師。数人のギャラリーから笑いが起こっていた。
「仕方ないです。せっかく呼び寄せた兵士に逃げられちゃまずいってことですよ」
小松は顔を下に向け、ため息を吐く。
「ああ…何か自分でこんなことを言っているのが嫌になりますね……」
「だな。エドラドの都合で連れて来られたのに何でこんな目に合わなきゃいけないんだろ……」
そう言い切ったあとに、雄大のお腹が「グゥ〜」と、鳴った。
小松がそれを聞いて「プッ」と吹き出した。
「あ、ごめん。さすがにお腹減ったよな〜」
と照れながらも明るい感じで言った。
「そろそろなんか食べに行きましょうか」
小松が提案した。
■
2人がメイルンストリートをしばらく歩いていると、『エドラド料理』と看板を掲げる食堂を見つけた。
雄大は、表のガラスケースから料理の値段を確認してみた。
料理は1品が400リルツから500リルツとどれもがリーズナブル。
『ぶち切れ大根のおでん』『オークの香草焼き』など、変わったメニューもあり、雄大には魅力的に映った。
「ねぇここにしない? エドラド料理を出してるんだって」
目をキラキラと輝かせて、小松に言った。
「ん〜……異世界の食材を使っているんですよね。僕たちが食べても大丈夫な物なのでしょうか」
小松は不安そうだった。
「試しに1回入ってみようよ。もし不味くても次違う店に行けば良いだけだし」
(次違う店に行けば良いだけか……)
小松には雄大のようなポジティブな発想がすぐには浮かばないし、彼のその考え方が新鮮だった。
「…分かりました。入ってみましょう」
雄大に何となくだが納得させられ、そのまま2人で食堂に入店した。
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