エドラド城下町・3
雄大と小松は、いつの間にか『エドラド中央駅』の前にやってきた。
この場所はエドラド王国内で、1番乗降客数が多い大きな鉄道駅である。
エドラド中央駅は、最もエドラド城内に近いためセキュリティが厳しい。常時武装した警備兵たちが改札近くやホームに配置され、目を光らせている。
不審者や敵国のスパイも城下町に入り込んでくる可能性があるからだ。
雄大は、駅を見つけてテンションが上がっていた。
「なぁ小松、せっかくだから異世界の電車に乗ってみようよ!」
と雄大は、小松に提案する。
「え…でもさすがにあんまり遠くに行かない方が良いような気がしますが……」
小松は乗り気ではない。
「じゃあひと駅だけでも良いからさ」
と、雄大は半ば強引に小松を券売機に引っ張って行った。
「えっと次の駅は『エドラド2区』か。200リルツって書いてあるな」
異世界者らにはエドラド王国から20万リルツという額のお金が支給されていたため、2人とも切符を買うことが出来た。
雄大が切符を入れ改札を通ろうとした時だった。
改札機のランプが赤に点滅し、警報音が「ジリリ」と鳴り響いた。
その瞬間、雄大と小松の前に、2人の警備兵が立ちはだかった。警備兵は槍を構えている。
「えっ! 何だよこれ!…」
雄大は慌てた。
「何でこんなことをするのですか?」
と小松が、冷静に警備兵Aに聞いた。
「お前らが異世界者だからだよ」
と警備兵Aが答える。
その言い方は冷たく、こころなしか槍を握る彼の手に力が入ったように見えた。
場に緊張感が走り、小松は小刻みに震えていた。
「…何で僕らが異世界人って分かったのですか?」
小松は警備員Aに聞いた。
「国が税金を投入して作った魔導具のおかげだろうがよ」
と警備員Aは、吐き捨てるように言った。
警備員Bが補足するように話し出す。
「改札で識別する仕組みだ。あんたらが通るときは赤に光ったんだよ。異世界人なら赤、それ以外は青に光る仕組みになっているんだ」
(そんな道具を使ってまで僕たちを管理したいのか…)
小松は、悔しかった。
「あの…おれたち電車に乗りたいだけなんですけど…」
雄大はそう言った。
(え!?…この人は、この状況でなに言って…)
小松は、雄大の行動に理解が追いつかなかった。
「悪いがそれは出来ない。あんたらは国が発行した通行許可証は持っているか?」
警備兵Bが言った。
「持っていません…」
雄大の声が小さくなった。
「じゃあ無理だ。通してしまえば逃亡を謀る異世界者も居るからな。異世界者が行っていいのは、宿舎と訓練所、それとこの城下町を含めたエドラド1区の範囲内だけだ」
と、警備兵Bが説明した。
「そうなんですか…」
雄大が落胆する。
「分かったらとっとと引き返せ!」
警備兵Aに怒鳴られ、雄大と小松は駅から離れた。
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