第8話  ツムギ、その恋心!

 ツムギ達が連れて行かれたのは、役所の局長室だった。禿げ上がった局長は、頭の汗を拭っていた。


「局長、連れてきたぞ」

「ああ、ゼロ、お疲れ様。ツムギ君、アリエス君、座ってくれ」


 みんな、ソファーに座る。お茶が運ばれて来た。


「ツムギ君、結論から言うと、君の眼鏡の外し方がわかったんだ」

「え! そうなんですか?」

「そうだ。元々、死神の眼鏡が一般人の顔から離れなくなるということはありえないんだよ。調べたら、君のご先祖様に原因があったんだ」

「もしかして、それが“ドクター”ですか?」

「え! なんで知ってるんだ?」

「ついさっきまで、ツムギの身体はドクターに乗っ取られていたんだ」

「なんだって! ドクターが姿を現したのか?」

「ああ、ツムギの血の中に眠っていたドクターの遺伝子がツムギを動かしたらしい」

「何がきっかけでそうなったんだ?」

「アリエスがツムギに体罰を与えたらしい。それで、ドクターは蘇ったんだ」

「アリエス君、いくら先輩でも体罰は禁止しているだろ」

「すみません。ツムギが間引く相手にチャンスを与えるのをやめさせたくて」

「今後、体罰はやめるように」

「はい……」

「それで、どうする? ツムギ君」

「何がですか?」

「君には3つの選択肢がある」

「3つですか?」

「その眼鏡を外して、一般人に戻って天国へ行くか? もうしばらく死神を続けてから一般人に戻って天国へ行くか? 一般人に戻らず死神として生きていくか? この3つの選択肢だ」

「あの……それを決める前にゼロ様と少しお話していいですか?」

「ああ、いいよ」

「ツムギ、廊下に出よう」


「話って何なんだ?」

「あの……すごく言いにくい話なんですが」


 ツムギは俯いて、頬が赤くなるのを誤魔化そうとした。深呼吸をする。


「もしかして、俺のことが好きだということか?」


 ツムギは顔が更に紅潮した。見透かされていたのか? だとしたら恥ずかしい。


「あの、どうしてわかったんですか?」

「簡単なことだ、女なら、誰でも俺に惚れるからな」


 自信満々な言葉だったが、ゼロが言うと不思議なことに違和感は無い。


「そう……ですよね」

「お前の気持ちはわかっている。だが、今、その気持ちに応えることは出来ない」

「いいんです、気持ちを伝えられただけで満足です」

「満足したのなら、死神をやめて天国へ行くか?」

「いえ、もう少しゼロ様のお側にいたいです」

「死神を続けても、なかなか俺には会えないぞ。いいのか?」

「はい、それで、ゼロ様に対するこの気持ちが治まったら天国へ行きます」

「じゃあ、当分は死神、いずれは天国、これでいいな?」

「はい、流石に永久に死神になるとは言えませんので」

「よし、局長に言おう」


「局長、いずれは天国へ行くが、もうしばらく死神を続けるらしい」

「そうか、ちょうど人手不足だから助かるよ」

「私はどうして呼ばれたんですか?」

「ああ、アリエス君はA級に戻ってもらう」

「A級に戻れるんですか?」

「ああ、たった今から君はA級だ。これまで通り、頑張ってくれ」

「やったー! 頑張ります!」

「じゃあ、任務に戻ってくれ」

「はい、いってきますー!」

「それから、ツムギ君。君にはB級死神をサポートにつける。古株で、ホムラという男だ。まあ、君の教育係だと思ってくれ」

「はい、サポートしてもらえたら嬉しいです。どんな方ですか?」

「君とよく似た男だよ。もうじき、来る。それより、ツムギ君、是非ドクターと入れ替わってくれ。久しぶりにドクターと話がしたい」

「はい、出来るかな…………久しぶりだな、トゥウェルブ」

「おお! ドクターか? ドクターなんだな? 久しぶりだな」

「確かに懐かしい。だが、ゼロもトゥウェルブも変わってないな」



 ドクターは局長とゼロ、2人との会話を始めた。







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殺す死神、殺さないJK死神! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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