第7話  ツムギ、覚醒する!

 アリエスの鎌で袈裟斬りにされたツムギは、痛みに悲鳴を上げた。だが、身体は斬られていない。


「あれ? 私、斬られたはずなのに」

「安心しなさい。死神同士は殺し合えなくなっているのよ。だから、何回斬られても死なないし傷つかない」

「じゃあ、不死身じゃないですか!」

「そうね、でも、死んだ方がマシだと思うかもしれないわよ」


 アリエスが襲いかかってくる。ツムギは目を瞑った。今度はアリエスの連撃を受けた。痛い! 痛いなんてものじゃない! ツムギは悲鳴を上げ続けた。


「まだまだ! 出来の悪い後輩には体罰も必要よね!」

「もう……やめて……」

「じゃあ、ターゲットに執行猶予を与えるのをやめる?」

「私のことは、放っておいてください」

「やめるとは言わないのね」

「私は……人を信じていたいんです!」

「その考え方が間違っているのよ!」


 また、アリエスに斬り刻まれる。アリエスは強い。まともに戦闘をしたことの無いツムギが敵うわけがなかった。勿論、アリエスはそれを承知で斬り刻んでいるのだ。要するに、いびっているのだ。アリエスは、自分が降格されたことを恨んでもいた。自分が降格させられた原因であるツムギを痛めつけて楽しんでいるのは明白だ。


 その時! ツムギは内なる声を聞いた。


“この程度の死神に手こずってもらっては困るなぁ”


 次の瞬間、アリエスの鎌をツムギが鎌で受け止めていた。それから、見事に攻守が交代した。ツムギの連撃がアリエスの身体中を刻み続けることになった。今度は、アリエスが悲鳴を上げ続けることになったが、ツムギにもどうしようもなかった。


 ツムギの身体は誰かに乗っ取られていたのだ。やめたくても、やめることが出来ない。


 そこで、声がした。


「ドクター、そこまでにしてやってくれ」

「おう、ゼロじゃないか、久しぶりだなぁ」

「ドクター、目覚めたんだな」

「ああ、この小娘が叩き起こしてくれた」

「ゼロ様、これはどういうことでしょうか?」


 アリエスが、荒く息をしながら問いかけた。


「今、ツムギの身体を支配しているのはツムギの先祖の死神だ。ドクターといってな、最高幹部の1人だった」

「ツムギに死神の血が流れているんですか?」

「そういうことだ。今、儂がツムギの身体を操っている」

「そんなぁ、最高幹部だなんて……強すぎます。反則ですよ」

「まあ、お互い様だろう?」

「確かに、私もツムギに体罰を与えましたけど」

「おあいこ、だな」

「はあ……」

「ちょうど良かった。ツムギについてわかったことがあるんだ。役所に来てくれ」

「儂も行っていいのか?」

「後でツムギとも話をさせてもらえるなら、是非来てほしい」

「わかった、行こう」

「アリエスも来い。お前にも多少は関係のある話だ」

「私も同席していいんですか?」


 アリエスもゼロに恋している。一緒にいられるのは嬉しい。アリエスは同席することを望んだ。


「では、役所に戻ろう」


 役所に行くと、局長室で局長が待っていた。



「よし、関係者が全員揃ったな」







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