Episode.3 文明の痕跡

 ZEROは新たな任務を引受けるとPOLEの入り口で別のアンドロイドと合流する。


「よ、ZERO。今回は救援と調査任務らしいな? 救援ってこったぁ、あっちは苦戦やら兎に角助けて欲しいってことだよな。つーことは俺の出番って訳だ」


 彼の名はYMIRユミル。北欧神話の巨人の名を付けられたこのアンドロイドは、全武装に大砲やミサイルなど銃火器が搭載されており、一撃で敵を葬り、緊急的な戦力が必要とされることを想定して、巨人を模した脅威性の高い造形をしている。


 また戦闘に意味は一切無いが、開発者の嗜好によって人間を模した感情プログラムが組み込まれており、人間との会話は割と弾んでいる。


「YMIR。任務の協力感謝する」

「いいってことよ。今回も好きに暴れさせてもらうぜ?」

「今回は救援と現地調査の任務であり、殲滅作戦ではない。火力を中心とした戦闘は非推奨である」

「……。やっばおめえには話は通じねえか」


 ZEROは無感情で設計されているが、その他のアンドロイドは多少なりとも感情が設定されており、ZEROとの会話はどうも弾まない。

 YMIRは既に分かりきったことではあったが、改めて呆れを感じてその場の会話を打ち切った。


 そうしてZEROとYMIRは作戦に出発し、一時間程で目的地に到着した。

 目的地は既に棄てられた人が作りし軍事基地。もう使われていない戦車や機関砲が放置され、軍事施設であろう建物が半分朽ちた状態で、佇んでいた。


「目的地に到着。救難信号を新たに受信。距離三五〇メートル。前方奥の建物の中からと推定」

「んじゃ、調査開始といきますか」


 ここでの調査任務は現地の資源の回収や状態の調査が目的だが、資源の回収に至っては戦闘後のパーツ回収も含まれる。

 しかし、現地にある兵器を分解する必要は無い。


 既にアンドロイドと機械生命体との戦闘において人間の技術は役に立たず、分解したところで何にも使えないからである。


 ZEROとYMIRは一番近い建物へ入った。

 建物の中は電気が一切点いておらず、真っ暗闇だった。


「視界不良。ヘッドライトを点灯。敵性反応:無し」

「おう、こっちのソナーにも反応は無い。じゃあ俺は奥の方に先に行ってるわ」

「了解」


 ZEROとYMIRは二手に分かれて調査を開始した。棄てられても未だに動き続ける物には気付かず。

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