Episode.1 日常

 朽ち倒れかける高層ビル。

 乾き荒んだ土とアスファルト。


 当たり前のように築かれた駐屯地と、そこを警備する

“人型機械生命体”。


 それに対するは、建物の瓦礫に身を隠す戦闘用に改造された。

“アンドロイド”。


 今回の任務は、機械生命体の排除とパーツの回収。


 アンドロイドは自身のこめかみに指を当てると、頭の中から人間の声が響く。


「目標地点に到着。これより戦闘を開始する」

「了解」


 戦闘の開始。そうアンドロイドは無線機へ呟けば、勢いよく瓦礫から身を晒す。


 アンドロイドの頭部に内蔵された視覚レンズに捉えるは、三体の機械生命体。

 その全てが人間の兵士を模した人型であり、それぞれは両手にアサルトライフルを構えていることを確認する。

 そして戦闘態勢に移行するアンドロイドに対して棒立ちする機械生命体では無い。


「あんどろいどヲ発見。敵ハ一機。破壊スル」

「戦闘態勢ニ移行。集中砲火デ制スル」


 三体の機械生命体はアサルトライフルの銃口を一体のアンドロイドに向け、一斉に引き金を引く。

 放たれるは、視界を埋め尽くすほどの鉛の弾幕。

 それに対してアンドロイドは銃弾の発射と同時に突進し、腰に携えていた鞘から銀色に輝く刀を引き抜く。


 アンドロイドが刀を抜けばその先に待つのは蜂の巣か。否、自身に飛んでくる全ての弾道を正確に読み取り、自身に当たる弾丸のみを確実に弾く。


「後退スル……!」


 機械生命体は怖じけずに突っ込んでくるアンドロイドに咄嗟に後ろへ下がる判断をするが、それも一体が頭部から股下まで一刀両断されるのを防ぐには遅過ぎた。アンドロイドは三体の内の一機。真ん中の機械生命体を破壊する。


 次に狙うのは左右どちらか。アンドロイドは両方から銃口が向けられることを察すると、真上に高く飛び上がる。

 その垂直跳びは地上から五メートルは離れる高さで、思わず左右の二機は銃口をすぐに高く上へ向ける。


「落トセ!」


 二機はすぐに空中へ飛び上がったアンドロイドを撃ち落とそうと一斉に銃弾を浴びせるが、アンドロイドは空中で刀と共に落下しながら回転し、全ての銃弾をそれで弾く。


 そして刀の間合いは二機の頭部に到達すれば、勢いはそのままに刀は同時に機械生命体の頭を二機同時に真っ二つに切り裂いた。

 血ではなく、小さな精密に作られたパーツが勢いよく弾け飛ぶ。


 機械生命体はドサリと地面に倒れると、もう動かなくなる。


「三機の機械生命体の破壊を完了。パーツの回収後、帰還する」

『了解。よくやった』


 アンドロイドは無線機で任務の完了を報告すると、三機の機械生命体を一つ一つ最後の止めを刺すかのように刀で地面ごと突き刺す。

 そして慣れた手つきで機体をパーツごとに分解していき、専用のケースに収めていく。





 地球を一撃で滅亡に追いやった大地震から10年。

 人類はアンドロイドが自ら新たに作り出した使命。“人類の保護”によって新たに作られた避難所で約一万人の収容数と共に暮らしている。

 

 この一万人という数字は、現在の地球の生存者数。最早地球にはアンドロイドと機械生命体以外、本来の一割も残っていないと考えられており。

 人類は生き延びるのではなく、

 アンドロイドの更なる支援を選択した。

 武器開発を担当していた機械生命体に、人類の戦闘能力では勝ち目が無く。人類を脅かす機械の破壊は、全てアンドロイドに任せている。


 だから“生き延びる”ではなく。

“死なないようにする”それが現在の人類の考え方となっている。


 これは最早、地球で暮らす人類は滅亡したのも同義であり。

 これは……。


 人類を守るアンドロイドと

 人類を殺す機械生命体の戦争なのである。

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