長すぎる悪夢の始まり5
‥あの時、私は確かに、妹に首を切られた
ずっと目を逸らして居たけど、誰かに憑依した可能性も、捨てきれない。
話して来た感じ、この世界では彼の職業は確立されたものだと‥‥思う。
私の身の丈を話して、保護して貰うのもありかもしれない。
聖騎士とか言っていたけど、この世界では日常に存在する単語かも知れないし。
「あの、ヴァルツさんって、何者なんですかね?さっき、聖騎士って言ってましたけど‥」
「私?‥私は‥騎士団で働いている、聖騎士見習いだよ」
「そうなんですか‥」
先ほどみたいに、騙そうとしている感じはしない。
私の憶測でしかないが、騎士団というのは警察みたいなもの、なんだろう。
そうなると、ヴァルツさんは警察見習い‥いや、尋問じみた事もやって居たから、研修生?
いや、聖騎士団ではなく、騎士団と言った。
聖騎士しか居ない団体ではなく、他の役職もあるとすると、警部候補とか?
まぁ、それなりの地位にいることは確かだろう。
本当に憑依して居た時に備えて、身分を預けるのもいいかも知れない。
私を誤認逮捕(?)しかけた手前、無下にはしないだろうし。
本当のことを言ったら精神病院に入れられるのは確定だから、適当に作り話を交えながら‥
「‥こんな所で言うのも変なんですけど、私、記憶がないんです。だから、ヴァルツさんが言うリバツも、ヴァンパイヤも、騎士団も、ここに乗るために必要なチケットの入手方法も、何も分からなくて‥この船に乗ったのも、私の顔見知りが居ないか調べるためだったんです。でも、顔見知りには会えなくて‥‥私のわがままなってしまうのですが、ヴァルツさん。私の身元を探すお手伝いをしてくださいませんか?」
「あ、あぁー‥‥うん。私にできることなら‥」
やや媚びた感じになってしまった。
なんだか、ヴァルツさんの声色が氷鹿に似てるような‥いや、考えるな。ヴァルツさんは申し訳なさそうに相槌を打っている。このまま作り話を紡ぎ続けて、彼から身元を引き受ける言葉を‥。
「ヴァルツさんって」
言葉を紡いですぐ、豪雨の中の雷雨のような轟音が頭上で鳴り響いた。
近くに雷でも走ったのかと窓の外を見てみるが、雲一つない快晴の空があるだけだった。
では、この轟音は何なのだろう。
夢を見始めてからずっと、不思議なことに巻き込まれてきた。
やっと箸休め出来ると思ったのに、この夢は、私を休ませる気は無いらしい。
はぁとため息を吐いてみれば、おかしな事に気付いた。
ヴァルツさんの方から、呼吸をする音が聞こえない。
くっつくように隣り合って座って居たから、息切れの音も、布が重なって、離れる音も、確かに聞こえて居たのに。
この夢に入ってから、こんなおかしな事は何度も経験して来た。
冷や汗を流しながらヴァルツさんの方を見ると、いつの間にか立ち上がって居て、先方をただ見つめている。
その眼は何かをひどく怖がっており、恐怖から引き攣るように笑い、真っ白な肌は青白く変色していった。
彼の視線の先にある物を見るのが怖い。
あの轟音と共に、天井を突き抜けて来たのだろうか。
だとすると、床が突き抜けてもおかしくない。
天井からガラスの破片が落ちてこないと、変だ
なのに、振動すら感じ無かった。
なら、目の前の物体は、浮いてる?
ふと天井を見上げると、砕けたガラス片がゆっくりとだが、落ちて来て居た
だが、速度はあまりにも遅い。何秒も見つめているのに、ガラス片は埃のように落ちては上がるを繰り返している。
(何が、どうなっているの‥?)
鼓動が身体中を巡るようにな鳴り響く。
危険信号のようだな、と諦めたように心の奥底で呟く。
「危ない!!」
隣に居る筈のヴァルツさんの声が、背後から聞こえる。
(危ないとは言っても)
目の前に居る巨大な物体。
私の全てを覆う影を作り出している物を、初めて見つめる。
見つめ返す様に、8つの赤い目が私を凝視した。
馬のような鼻から4つの鼻息が漏れ出る
口の様な物は存在しないが、肉食を不要として生きていく事は、不可能と分かるほどに生物は大きい。
山羊の様な頭が異常に大きく、真っ赤な身体は頭に不釣り合いに小さい。私と同じくらいじゃないか?
などと考えていると、12本の腕の一本が、私を目掛けて殴りかかった
指先から汗が滴り落ちる
頭には強烈な激痛が走った
あぁ、この世界は夢なのではない。
現実なのだと、悪魔の様な何かに気付かされた。
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