第12話 夏祭り!
その土日は夏祭りだった。まず、土曜日に3人娘と行き、日曜日に翔子達と行くことにした。
3人娘と露店を楽しむ。小学6年生とはいえ、3対1のハーレム状態は楽しい。というか、単純に露店が並ぶお祭りは楽しい。僕達は、笑いあいながら祭りを楽しんだ。僕は金魚すくいが得意だった。3人が金魚を欲しがったので、3人の分の金魚をとってみせた。ちょっとカッコイイところを見せられたかもしれない。
ところが、バッタリ会ってしまった。
「あれ? 崔君やん」
「あ! 翔子! 千夏ちゃんも! なんで? 明日の予定やろ?」
「うん、明日は崔君達と行くから今日は千夏ちゃんと2人で回ろうっていうことになったんやけど、その子達は?」
「あ! えーと……」
僕は腕時計の『戻る』ボタンを押した。
「その子達は?」
もう少し戻らないといけない。もう一度ボタンを押した。
「あれ? 崔君やん」
もう少しだ。ボタンを押した。
「金魚すくいだー!」
あ、戻り過ぎてしまった。また金魚をすくわないといけない。ちょっと面倒臭いけれど、まあ、いいか。
そして、たこ焼きを買って曲がり角を曲がってみる。露店や人気の無い方へ。
「こっちでゆっくりたこ焼きを食べよう」
これで、正面から迫って来る翔子達を回避できるはずだ。翔子と3人を会わせるのはまだ早い。今は準備不足だ。僕は冷や汗をかいた。
冷や汗をかいたが、また4人で祭りを楽しむ。3人娘がほしいものは全部買う。食べる。遊ぶ。これで機嫌が悪いわけがない。だが、また出会った。
「あれ? 崔君やん」
その夜、僕は何回『戻る』ボタンを押したかわからない。
「崔君、なんか疲れてない?」
「いや、大丈夫。元気、元気」
翌日、今度は翔子、千夏、陣内、そして僕。夏祭りを楽しんだ。前日も楽しかったが、翔子と一緒の夏祭りもまた楽しい。また金魚すくいで実力を発揮した。陣内の分まで金魚をすくった。そして、気付いたら僕は翔子と手を繋いでいた。
ところが、出会ってしまった。
「あれ? 崔君やんか」
振り向くと、そこには3人娘。
「昨日、祭りに来たやんか」
「うん、だから今日は女子3人で来たんやけど」
「え! そうなん?」
「その子は? あ! もしかしてB小学校の翔子ちゃん?」
「あ、崔君、この子達A小学校の3人娘?」
僕は、腕時計の『戻る』ボタンを押した。
「あれ? 崔君やんか」
また、ボタンを押した。
「金魚すくいやー!」
“また、金魚すくいかよ!” 僕は何回目かわからない金魚すくいをやった。
そしてその日も、何度『戻る』ボタンを押したかわからない。
「崔君、なんか疲れてる?」
「いや、大丈夫。元気、元気」
「ちょっと休む?」
「ああ、コーヒーでも飲もうか。千夏ちゃん、陣内、喫茶店に入ろうや」
なんとか、僕は夏祭りの2日間をしのいだ。
嗚呼! あの頃に戻りたい。 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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