第47話
そうして私はまた、3人に隠し事をすることもあった。
アルバイトの事だ。
親の仕事が傾き、怪しくなってきた為、学費の足しにしようとアルバイトを始めた。
そんな話を3人にできなかった私は、バイトしていることを隠していた……が、バイト先の飲食店にふゆちゃん一家がきたことがあった。
「いらっしゃ……あ、ふゆちゃん」
「夏莉」
それしか会話はなかったと思う。
あとは普通に接客して、家族と帰っていくふゆちゃんを見送った。
ふゆちゃんは性格上、残りのふたりにバイトの話はしないだろうと思っていた。
現に突っ込まれることも無く、バレていないと思っていた―――後に春希の話でバレていたことがわかるが。
そんなバイト先でも告白され、「好き」の正体を知りたかった私は安易に付き合っては別れるを繰り返した。
全ては恋愛感情の正体を知りたかった。
私が3人に抱くものや、家族に抱くものと異なる感情を知りたかった……好奇心だった。
今となっては馬鹿馬鹿しいが、思春期真っ盛りの私は、恋愛感情を感じられない自分が異常なんじゃないかと疑って仕方がなかった。
普通に近づきたくて、手探りで探していた。
「夏莉って」
「夏莉ちゃんって」
「なっちゃんて」
「城野さんって」
「俺の事好きじゃないよね」
その言葉に聞き飽きる頃には、もう高校三年生になりかけていたんだと思う。
ある一定の時から、恋愛というものを諦めてしまった。
自分に好意を向けてくれる人と片っ端から付き合うのをやめた。
そんな中でも、ふゆちゃんと付き合わなかった理由は、ふゆちゃんとの関係を壊したくなかったからだった。
甘い気持ちで付き合って、今までの人と同じ顔をさせたくなかった。
そんな最低な気持ちで見て見ぬふりをし続けた。
そしてその頃、秋也が異様に春希に執着していることにも気づき始めていた。
その目線は、男性が私に向けるものと同じだった。そんな小さな理由で、気づいてしまっていた。
どうか春希は気づかないように、そう願って、私は笑顔の裏にその気持ちを隠した。
少しずつ奥底で気持ちがすれ違う4人、そしてそれに気づかない4人、気付かないふりをする私、いや、きっと春希も気付かないふりをしてたんだろう。
少しずつ壊れゆく中で、宇野事件が起きた。
概要はもう言うまでもない。
私は今までのふゆちゃん達の話のとおり、宇野を介抱し、宇野に告白され、さっくり断った。
富田からはぶん殴られ、しばらく松葉杖生活となり、無茶した自分を恨んだ。
それ以上もそれ以下もない、ただの青春の1ページだ。
秋也にとっては別だろうけれど、私にとってはどうでも良い出来事だった。
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