第46話

人生で初めての彼氏だった。

別に好きなわけじゃない……なんて言い訳したくなるほどの人だった。

中学時代の友人のそのまた友人、そんな彼だった。

付き合う前までは楽しかった。

その人といると笑顔になって、なんだか楽しいから、これが「好き」なのかもしれないと勘違いして、告白という大船に乗ってみることにした。

―――1週間も持たなかった。


「あっ、マサト!お疲れ様!」

「待たせた?」

「ぜーんぜん」


3人と解散した後に彼氏と会う予定があって、近くのスーパーで待ち合わせをしていた。

彼氏の学校が終わり次第会う、という話だったが、予定の時間を過ぎてもなかなか現れなかった。LINEも既読がつかず、気がついたら1時間以上も待っていた。

待つのは得意じゃなかった。自分から攻めたいタイプの私には、ひたすら待つなんて合わなかった。イライラを飲み込んで、デートしたその日の夜、私はこっぴどく叱られた。


理由は、イツメンが男だということだった。

イツメンについて聞かれて、ノコノコと写真を見せた結果、ヤキモチを妬かれてしまった。

ただのヤキモチなんて可愛らしいものじゃなかった。酷い罵詈雑言を含んでいて、最終的にそれが理由で私から振ることになった。

朝の5時まで攻防が続き、私は思いっきり泣いてしまった。

3人のことを否定されたことが悔しく、悲しかった。自分が選択を間違え、変な相手と付き合ったせいで、友人が貶されるのは耐えられなかった。


2時間も眠れなかった私は、でかい声をあげながら教室に入った。

「あーーーー」

「おはよう夏莉……顔すごいな」

「どうしたの?」


泣き腫らした目はバレているのだろうか。

クマが濃いのだろうか。顔が浮腫んでるのだろうか。いや、全てか?


「いやー……マジで彼氏がさぁ、クッソキレてきて、3時間しか寝かせてもらえなかった」

「え?夏莉彼氏できたの?」

「あ、うん。こないだ。」

「俺らの知ってる人?」

「いやいや他校、告られたからなんとなく付き合ってみた」

「なんじゃそりゃ……」


ドン引きする2人を横目に、愚痴が止まらなかった。悔しかったんだと思う、彼なんかに全てを否定されたことが許せなかったんだろう。

ふゆちゃんの気持ちなんか、考えてすらなかった。


「ま、寝る前に もう相手しきれないわ〜って言って別れてきたけど」

「何ヶ月付き合ったん」

「1週間!ホント情けないよね〜」

「短すぎだろ……」

「なんか不安になってヤキモチ妬いちゃうみたい。めんどくっさ、キレてくんなしってかんじ。あと電話ながすぎ」

「愚痴止まんないじゃん」

「はは……ごめんごめん」


お腹を摩るふゆちゃんを見て、ハッとした。

私、何やってるんだろう……そう呟きたくなる頃には、ふゆちゃんの手を取って、保健室に駆け出していた。


本当に私、何やってるんだろう。

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