第14話
目を開けると自分が寝ていたはずのベッドが視界に入り込んできた。ふかふかの絨毯は私がベッドから転げ落ちた衝撃を完璧に受け止めてくれる。カーテンから漏れた光が暗い部屋の中を照らし、直進性の高い光は空気中に舞うホコリをキラキラ光らせる。チンダル現象だ。ゆっくり起き上がると、少しひんやりとした爪先を絨毯が優しく包み込んだ。近くにあったスリッパを履き私はカーテンを開けて暖かい陽の光を全身で浴びる。
なんて良い朝でしょう。
部屋のドアを開けると、ちょうどメイドが通りがかり、バチっと目が合った。
「おはよう。ハンナ。」微笑みながら優しく言うとハンナは大きく目を見開き、おはようございます、と小さく呟いたあと何事もなかったようにまた歩き出した。あら、いけないわ。私、クリスティーナは寝起きが悪いことで有名で3日に一回は般若になると恐れられているほどだったわ。ゆっくりと眉間に皺を刻みムスッとした顔を作ろうとするもどうしても口元がだらしなく歪んでしまう。むふふ。昨日のことを思い出すとどうしても顔がにやけてしまう。『すごいわティーナちゃん(お嬢様)』むふふふふふ。いけない、いけない完全に天狗になってる、私。
「お嬢様⁈」おや?今度はマーヤがやってきた。
「昨日に引き続き今日も早いお目覚めですね」
「そうね」何せ私は才能の原石!だからね!磨けば光るような魔法の才能が私の中には眠っているのだ。今ならなんでもできる気がする。私の辞書に不可能の文字はないことよ。
「私も心を入れ替えて、少し早起きとやらに挑戦してるの。ちなみに今は何時?」
「今は、10時ですね。奥様も旦那様も朝食を済まされました。」
・・・・・え、あの、昨日も思ったんだけど私に対するマーヤ基準の早いってこの程度なの?
ま、まぁ、まずは肩慣らしというところよ。それに前世の記憶を取り戻したばかりだから。あやしまれないように慎重に行動するべきで、、つまりこれも計算のうち!そしてお母様、昨日あんなに褒めて自慢の娘だとまで言ってくれたのにこの仕打ちは何ぞ⁈
「お二人とも朝食ではお嬢様の話題で持ちきりでしたよ」え、そうだったの?
「ええ、何せ〝生まれた時から〟お嬢様には空が〝紫色〟に見えてたわけですから。まさに・・」
まさに?
「「天才」」
ふぉおおおおああ、、、ってなんかマーヤ以外の声が聞こえたような?
振り返るとそこにはキラキラ光る銀髪の輝かんばかりのイケメンが。で、どちら様?と言おうとしたけど、この顔、見たことある、、
「坊ちゃん!おかえりになられたのですね」
そうだ、この家で坊ちゃんと呼ばれるのは、私の実の兄、ビルトしかいない。
「マーヤさん、坊ちゃんはちょっと、、この年でそれは、、恥ずかしいから」
「まぁ、申し訳ありません。そういえばもう18歳になられたのでしたね。それにしても暫くぶりで」
「あぁ、休暇がとれてね。久しぶりに帰ってきたらティーナが魔素が見えるようになったっていうじゃないか」お兄様はここで私に視線を移すと「すごいじゃないか、ティーナ」と続けて言った。ええ〜そんなに褒めても〝まだ〟なにもできませんよ、わたしぃ。
「じゃあ、僕は長旅で疲れたから少し部屋で休ませてもらうよ」
「はい、お兄様」もっとおしゃべりしたかったのにぃ、ちえっ。
「お嬢様、さぁ朝食を食べに行きましょう。クレア先生も、もうすぐいらっしゃいます」
そっかぁ、今日もクレア先生の授業かぁ、実は今朝から昨日の鬼特訓の甲斐あってふくらはぎが筋肉痛なんだよね。でも!今の私ならなんだってできる、何せ私には隠されていた魔法の才能が───
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