番外編

第21話 焼き肉屋と星(Star Festival 2024 PIXIV) 

 午後9時、学園前駅から少し離れた所にある焼き肉屋。


「やっぱり1番おいしいのが肉ですよね」


 私はうきうきしながら、肉を焼く。


 基本的に週一で焼き肉屋へ行きたいから、1人焼き肉屋か食べ放題の焼肉屋へ1人で行く事が多い。だけど今日は違う。


「そうだよね。おにくおいしい」


 私と同じように、夕占ゆううらさんが肉を焼く。


「でもこういうお肉をもみじちゃんやべにはくんは食べられないんですよね。それは悲しいです」


 もみじちゃんとべにはくんも誘ったのだけど断られてしまったので、それをつい愚痴ってしまう。


「しゃーないよ。べにはは明日仕事あるから、外食よりも家で休まないといけない」


「明日は平日ですから、仕方ありません」


 べにはくんは土日祝休みで、基本的に平日は仕事している。そこで土日仕事がある私とはスケジュールがあいにくい、かなり残念なことに。


「そういえばもみじちゃんは最近どうですか? 金曜日の夜は私仕事していることが多くて、最近もみじちゃんと会えていないんです」


 生の肉をひっくり返しながら、気になっていたことを聞く。


 もみじちゃんが生きている金曜日の夜、ここ最近私は残業していることが多い。そこで悲しいことに、私はもみじちゃんと会えていない。


「大丈夫だよ、元気にしてる」


 夕占さんは肉をひっくり返しつつ、答えた。


「元気にしているのならいいです。もみじちゃんやべにはくんはストレスをためやすいタイプでしょ。だからつい気になってしまいます」


 最後の肉を焼く。これで今日は終わり。


「まあね。べにはももみじ同様にストレスをためているみたいだから、これから2人がどうなるか分からない。でもなんとかなるんじゃない? べにはともみじだし」


 肉を全部焼けた夕占さんは、オレンジのシャーベットを食べ出した。


「そうだといいです」


 最後の肉を口に運ぶ。じゅわっとした肉汁が口の中に広がって、おいしい。


 肉の後にデザートのソフトクリームを食べてから、私達は焼き肉屋を出る。


「あっ星だ」


 真っ暗な空。その中にある小さな光を、夕占さんが指さした。


「星ですね」


 白くて小さい点。それが1つだけ暗い空にある。私だけじゃなくて夕占さんにも見えるってことは、この星は空想じゃなくて現実にあるものだ。


「大阪が光でいっぱいだから、奈良県では星なんて見えないんだけどな。特に今のような夏は、星が見えるとは思いもしなかった。うん、これは何かいいことがあるかも」


「そうですね」


 もし星を見ることでいいことがあるのなら、それはもみじちゃんとべにはくんにあって欲しい。


 生きることがうまくいっていないもみじちゃんとべにはくん。2人の人生に救いがありますように。



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