第18話

 ベッドの側に、お洒落な紙袋が落ちてあった。


 その紙袋には『もみじ』と書かれた付箋が貼ってある。ということはこれ、私の分だろう。その紙袋の中には、ちゃんと箱もある。


 ということでリビングに、紙袋を持って向かう。


「おはよう。ねーねー部屋に何か紙袋に入った、箱があるよ」


「おはよう。それべにはが持っていた。もらいものかな?」


 夕占ゆううらさんは不思議そうに、紙袋を見る。


 付箋に名前が貼ってあるんだ、これが私の物じゃないってことはない。そこで私は紙袋から箱を取り出す。その箱は丁寧に包装されていたので、その包み紙もとる。


「これ高島屋のお菓子じゃーん。このチェック模様の紙袋、それ以外にないよ」


 夕占さんは紙袋を、丁寧に触る。


「へーそうなの?」


 確かに百貨店っぽい紙袋だなとは思う。でも私はそういう百貨店とは無縁だから、あんまり興味ない。


「ということは高級なお菓子かもしれない」


「そうかもしれないね」


 私はうなずいて、包装紙の中から箱を取り出す。


 その箱は青くて、金属だ。さーて中に何が入っているのかな?


「これ生駒の百貨店でも売っている、クッキーだよ」


 夕占さんは中身を見て、少しがっかりしたような顔になる。


「そうなんだ」


 百貨店で売っているクッキーなのだから、高級品だろう。だから別に良いのでは?


「だって。せっかく高島屋っていう遠いところのお菓子なんだよ? 絶対高い物だって思うじゃん」


「そうかな?」


 私はそうは思わない。多分生駒の百貨店も高島屋も、売っている物が全く同じ。ただそれだけのような気がする。


「まあこれおいしいからいいか。夕ご飯の後に食べよう」


「今日の夕ご飯は何?」


「おでんとみそ鍋」


 いやいやなんで、おでんとみそ鍋なんだ? どっちも汁たっぷりなイメージがあるから、両方を一度に食べないような気がする。


「珍しいね、おでんとみそ鍋なんて」


「おでんは昨日の残り。おでんが食べたくなって昨日作ったけど、大量にあまったの」


「へーそうなんだ」


 ならばみそ鍋は今日作ったってことだ。おでんが残っているなら、みそ鍋じゃなくて他のもの、例えば野菜炒めとかの方が良かったんじゃないか? そう思う。


「そうそう。おでんは練り物をたくさんいれて煮込んだんだけど、やっぱり1人じゃあ消費しきれないや。一生懸命煮込んだんだけどね」


 いやそれならべにはにも手伝ってもらえばいいじゃん。と思ったけど何か事情でもあるのかな? 私はべにはと夕占さんの関係がよく分からないから、どう言っていいのか分からないや。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る