第17話

「今日の夕ご飯は、クラムチャウダーとオムライスだよ」


 夕占ゆううらさんがそう宣言する。


「うわーお洒落な料理だ」


 なんでだろうね、カタカナの名前をする料理ってお洒落な感じがする。


 それがなんでかは、よく分からない。


「そうだよ、お洒落な料理」


 色味もおしゃれな感じがする。


 クラムチャウダーの白、オムライスの黄色と茶色。これは絶対おいしい感じがする。


 ということで準備をしてから、2人で食べる。


「おいしい」


 クラムチャウダーは濃厚で、オムライスのデミグラスソースもコクがあるのに中のデミグラスソースとの相性もばっちり。


 両方とも、とてもおいしい。


「それはよかった」


 夕占さんもにこにこ笑顔で、食事をしている。


「そういえばオムライスといえば、わんわんだよね」


 ふと思いついたことを言ってみる。


「そうかな?」


 夕占さんはそうは考えず、首をひねっている。


「うーんどこかで見かけたんだと思うけどな。あんまり覚えていない」


「それなら大したことないんじゃない? あっテレビに奈良が映っている」


 夕占さんがテレビを指さす。


 そこには奈良駅前を歩く、芸能人の姿があった。


「本当だ。でも私あんまりあそこら辺行かないんだけどね。昔はよく行ったけど、今はあんまり」


 コロナ禍前は近鉄奈良駅近くに行く事もあったよ。でもここ最近は、そんなこともない。


 というよりも家から出ること自体ないから、近所にも行かないのだけど。


「まあね。でも生きている時間が増えれば、行くことができるようになると思うよ」


「別に大して行きたいってわけじゃないからいいや」


 私は話を打ち切って、テレビを見る。


 テレビで取り上げられているのは、インドネシアのバッグや柿スムージー、それから鹿グッズだ。奈良にあるけど、私の住んでいる生駒にはあんまりなさそうな物なのかもしれない。


 そこでなじみがないので、あんまり興味がないかもしれない。でも大阪や京都の街よりはずっと親しみがあるから、いつもよりは気になる。


「そういえばこの番組で、火曜日に生駒駅から東生駒駅まで取り上げられたよ」


「それめっちゃ近所やん」


 私が今住んでいるのが生駒駅近くのマンション。そこを考えると、めっちゃ近い。


 何よりもテレビって基本的には奈良県から遠く離れた自治体か、大阪しか取り上げない。そこで奈良県がテレビで取り上げられることは奇跡だし、そのうちマイナーな生駒市が取り上げられるのはかなり珍しいことだ。


 とはいえここ最近生駒駅から東生駒駅までの間に行けてないって事実は、近鉄奈良駅近くとは変わらない。


 確か東生駒駅から生駒駅までにある小学校は、今年で開校してから150年のはず。それでキラキラとした看板が小学校に立っていたきれいだったな。


 まあそんなこと、どうでもいいけど。どうせ外へ行く事なんて、私はしないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る