第7話 丘の上の家
城から飛び降りると、僕は必死にアルトにしがみついた。
あまりの高さにぎゅっと目をつぶる。
後ろの方から兵隊達の叫び声が聞こえる。
そんな時、アルトは僕の肩をぽんぽん、と叩いた。
「見ろよ、空。」
アルトに促され、僕はおそるおそる目を開けた。
「・・・・すごい。」
僕はは思わずそういった。
真っ暗な空には、満天に星空がある。
これまでに見たことのない程の星空だった。
「これ、星?」
「え!?お前星も見たことねぇの!?」
「失礼な!星ぐらい見たことあるよ。でも、こんな空一杯に見たのは初めてだな!」
よく考えて見たら、こんな空を見たのは初めてだ。
よほど空気が澄みきってなければ、都会では見ることが出来ない。
仕方がないから、満点の星はプラネタリウムで人工的に星空を見た記憶がある。
現代の日本はとても明るい。
だから、小さな輝きを持つ星はなかなか見えづらい。
「お前の住んでる世界にも、星は見えるのか。」
アルトは尋ねた。
「もちろんあるよ!でも、こんな風には見えない。夜もこんなに暗くないからね。」
「暗くない?」
「そうだよ。暗くないんだ。」
「なんでだ?。夜に何するんだよ、店だって殆ど閉まってるだろうに。」
「閉まってないんだ。24時間営業っていって、お店は閉まらないんだ。そうゆうお店が沢山あるんだよ」
「そうなのか。夜も明るいのか。じゃあ、人はいつ休むんだよ?」
「昼間休む人もいるよ。でも、わかんない。」
「昼と夜が逆になるな。」
「そうだね」
アルトにそういわれて、僕の住んでいる世界がどれほど混沌としているのかを実感した。
「アルト、何処で降りるんだ?」
「俺の家。弟が待ってるはずた。もともと頃合いをみたら適当に逃げるつもりだったし。」
「弟がいるんだ。」
「ああ。双子の弟。俺らと同じ十二使徒だ。」
アルトは街から少し離れた丘の上にある家の手前で下りた。
その家は赤い煉瓦作りの家で、煙突からは煙りがでている。
コンコン、とドアをノックするとガチャリとドアが開いた。
「お帰りなさい、兄さん」
アルトとそっくりな少年がでてきた。
アルトと違うのは、髪と目の色。
この少年は銀色の髪で蒼い目をしていた。
「よく出てこれましたね。今日はお客さんもご一緒みたいですし。」
少年はニコリと微笑むと僕を家の中へと招き入れてくれた。
そして暖炉の前のソファに座ると、温かな紅茶を入れてくれた。
それから、一連の流れを話す。
「じゃあ、水色君は『コラール』の声を聞いたんですか。すごいですね。」
アルトにそっくりなのに、性格は正反対。
穏やかな言い方で、ニコニコとしている。
「そういえば、私の名前を言っていなかったですね。私はテナ。私も一緒に楽譜を探しますよ。
私も十二使徒ですから」
そう言って、テナは聖跡を僕に見せた。
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