第6話 冒険のはじまり
「ここは俺達の住む国の城の中さ。それも、一番高い塔の上なんだよ。」
少年は落ち着きを払って言った。
近くにあった、たった一つの小窓から慌てて外を見た。
外は、僕の知らない世界が広がっていた。
赤い屋根の立ち並ぶ、煉瓦作りの町並みが広がり、ここは本当に日本ではなく、『コラール』の中の世界だとわかった。
「どうして、君はここにいるの?」
僕は聞いてみる。
「君じゃなくて、俺はアルトっていうんだ。」
「アルトは、何故ここに?」
僕は、何故少年・・・アルトがここにいるのかを尋ねた。
「俺は、捕まったんだよ。」
「なんで?」
「盗みに入ったんだよ、俺。つーか、正確にいえば取り戻しにきたんだが。」
アルトはため息をついた。
「なにを?」
思わず聞いてみる。
盗みにはいってまで取り返したいだなんて、どんなに大切なのだろうか?
「楽譜のままのコラールの楽譜だ。宿主がいなければ、コラールは楽譜に戻る・・・・」
アルトの言葉が途切れた。
何か深いことが、話の先にあるのかもしれない。
けれど僕はその先をあえて聞かなかった。
・・・・・なんせ初対面なわけだし。
「そうなんだ。」
そんな僕を見て、アルトは不思議そうにする。
そして笑った。
「お前、変だな。」
「変って何処が?」
「まぁ、いい。お前、どうするつもりだ?これから。」
アルトにそう言われ、僕は「あっ、」っと叫ぶ。
ここは城の塔の中。それも一番高い場所。
小窓はあっても人が通れる大きさではないし、小さな入口は鉄格子で鍵がかけられている。
アルトは「うーん」と考えて。
「仕方ねえな。ここを抜け出すか。」
アルトは頭をポリポリとかきながら、僕の方を向いて少し困ったように笑った。
「ここを抜け出す!?そんなことできるの!?」
「あぁ。できるさ。十二使徒を探しに行こうぜ。」
僕は更に驚く。
「楽譜、一緒に探してくれるの?」
僕がそう言うと、アルトは少しそっぽを向いて言った。
「あぁ。楽譜の声を聞いて集めろって言ったってことは、これからなにか起こるかもしれねぇし。
本当はもう少し城の様子を見るつもりだったんだけどさ。
城にある楽譜に戻ったはずのコラールを取りに来たけど見つからなかったしな。」
アルトは座りながら僕に隣に座るように促した。
僕たちは、たわいもない会話をした。
僕の国の話。アルトの国の話。
たわいもないが時間は潰せた。
どっぷりと日は暮れて、僕たちのいる塔は、小窓からの月明かり以外の明かりはなかった。
「アルト、どうやってここを抜け出すんだ?」
「任せとけって。十二使徒は生まれついてそれぞれ魔力があるのさ。楽譜を守るためにな。まあ、楽譜に込められてる力なんだけどな。ちなみに風を操ることができるんだ。」
そう言って、鉄格子に手をかける。
「今から、この鉄格子を俺の魔法でぶっ壊す。そしたら、手を引いてやるから、一気に走るぞ!何処でもいいから外に出れる場所を探す。」
「わかった!!」
アルトが鉄格子に手をかけると凄まじい風が吹いた。
「風斬り!!」
アルトがそう叫ぶとガシャーンと大きな音をたてて鉄格子は壊れた。
「やべぇ、ド派手に壊しすぎた。こりゃ、兵隊がくるな・・・行くぞ水色!!」
アルトてに僕は階段を下って行く。
塔は一体どれぐらいの高さなのだろう。
窓から見えた景色は相当高いところだった。
外に出る場所を探すなんて絶対に時間がかかる。
下っていったところで城の本殿へと繋がる渡り廊下を発見した。
・・・のはよかったものの、兵隊に見つかってしまったのだ。
「見つけたぞ!」
一人の兵隊がそう叫んだとたん、沢山の兵隊が僕たちを囲んだのである。
じりじりと詰め寄られる。
渡り廊下は屋根はあるものの、頭より上の方に塀はなかった。
肩から下は囲いがある。
しかし、渡り廊下自体は外に通じているがあまりにの高さで、そのまま飛び降りるなんて無理だ。
「アルト、外にはいけそうだけどどうする!?」
「囲いに上れ!」
「わかった!」
僕は石で出来ていた囲いによじ登る。
アルトも軽々とその場所に上り、仁王立ちしていた。
「そんじゃ、またそのうち会おうぜ」
アルトはそうゆうと、兵隊は少しずつ僕たちに近づく。
あんまり近づくと僕たちが落ちて死ぬ。
そう考えた兵隊たちは、むやみに僕たちには近寄れない。
「水色、飛び降りるぞ。」
「はあ!?」
「大丈夫!俺にしっかりつかまってろよ!」
そうして僕たちは城を脱出し、『コラール』を探すべく、外へと飛び出した。
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