第5話 聖跡
少年は僕に鋭い目つきを向けて僕に言った。
「お前のその腕の模様、十二使徒か・・・・??」
少年は眉間に皺を寄せたまま、僕をみあげる。
「急に現れた光のなかからお前は現れた。お前は、何者だ?」
少年は、僕に身構えている。
そして腕を見た。
肘と手の甲の間に書かれた青色の紋様。
ト音記号と十字架の重なりあったようなものがくっきりと記されている。
「なんだこれは・・・・!?」と目を見開いた。
僕はどうしたらよいのかわからないまま口を開いた。
「僕は水色っていうんだ。僕は小さな頃から聞いてきた歌を歌ったら突然光りだして気がついたらここにいた。」
僕は、自分の身に起こったことをそのまま話した。
「歌ったら楽譜が光だした?」
「そう。それで楽譜を離さないように必死で掴んでて」
「お前は異世界から来たってこと?」
「たぶん。僕は家の中にいたはずだ。」
少年はうーん、と考えて民族衣装のような不思議な服の袖を捲りあげると、碧色の紋様が腕にあった。
それも、色以外は僕とまるきり同じだ。
少年は僕に右腕を見せた。
「わからない・・・そして異世界から来た・・・。お前は何も知らないってわけか。
これは聖跡って言うんだ。俺は生まれてからずっと持ってる。
『コラール』の楽譜ってはこの聖跡の中だ。この聖跡は、娘に選ばれて楽譜を護る使命を持つ十二使徒の証だ。」
「はあ・・・。」
僕は曖昧な返事をした。
感覚が全くついてはいけなかった。
僕が十二使徒?
十二使徒って本当にいたわけ?
聖跡?それは聞いたこともない単語だ。
しかも話からすると、家にあった楽譜は今僕の腕にあるってことだろう?
「水色とか言ったな、お前。なぜここに来たかわかるか?」
そう言われて、僕は慌てて首を横に振る。
しかし、思い当たることがひとつ。
「そうだ・・・僕はコラールの声を聞いて、楽譜を探して欲しいと頼まれたんだ。」
僕がそう言うと、少年は目を見開いた。
「この楽譜に頼まれたってことは、楽譜の声を聞いたのか?」
「うん。楽譜を探してって、他の楽譜も探してってことなのかなあ。
そうじゃなくちゃ、なんで僕はこんな所にきたんだろう。」
少年は再びうーん、と考える。
そしてパッと僕に顔を向けると言った。
「楽譜を探して欲しいと頼まれた異世界の人間、か。
まあいい。お前の言い分は信じてやらんこともない。」
「本当に!?」
「だがな、残念なことにお前は異世界からこの世界にやってきた場所が悪かったな。」
「は・・・?」
思わず間抜けた声をだしてしまった。
少年は続ける。
「ここは俺達の住む国の城の中さ。それも、一番高い塔の上なんだよ。」
僕は思わず「なんだってええええ!?」と叫びそうになりながらも、両手で口を抑えた。
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