第4話 遥かなる世界へ




来たれ、たみよ この場所に集つどえ

来たれ、民よ 天に祈れ


闇から黒い手がのびる時

民はひたすら逃げ続け

いつしかなにも無くなる時

空は黒く成り果てる


天より降りし十二使徒

魔法ちからをもつて凪ぎ払え

天より降りし十二使徒

闇を払いて救うのだ


来たれ、民よ この場所に集つどえ

来たれ、民よ 我らに力を




すべての歌詞を歌い終わった時だった。

再び楽譜から光が放たれたのだ。


「・・・は!?」


楽譜は凄まじい光を放ち、思わず僕は楽譜を手放す。


「水色!!」


異変に気づいた祖母が楽譜部屋に駆け込んできた。

そして目を大きく見開いて「なんてことなの・・・」と呟く。


「ばあちゃん・・・・」


「水色、楽譜を手に持ちなさい!離しちゃダメよ!!」


祖母に言われて慌てて一度手放した楽譜に手を伸ばす。

それでも楽譜は光を放ったままだ。

光は段々強くなり、僕は目を開けてはいられなくなった。

思わずぎゅっと目をつぶり、片手で光を遮る。

その時だった。

腕が熱い。焼けてしまいそうな熱さだ。

そして、恐る恐る僕は目を開けた。

僕の知らない世界が広がっていた。


「ここはどこだ・・・?」


「いやあ、それ俺が聞きたいんだけどね。」


思わずつぶやいた言葉に返答が返ってきた。

バッと後ろを向くと、そこには見たことのない少年が一人。

髪の色は色素の薄いブラウン。

瞳は碧色だった。

短髪で頭にはバンダナのような布を巻いている。


「日本人じゃない・・・・?ここはどこなんだ?日本はどこだ?」


「―――ん?どこだよ、日本って。」


少年はかなり落ち着きを払っている。

僕は一度深呼吸をしてよく考えた。

僕はまず祖母の家で『コラール』の楽譜を探していた。


「楽譜を探して」と声が聞こえて楽譜の部屋に行って、目映い光が起きたと思ったら、楽譜は現れた。

そして昔から聞いてきた『とっておきの素敵な歌』を歌ってと言われて歌った。


歌うと再び楽譜は光りだして、僕は目が開けていられなくて、楽譜を持って目をつぶった。

腕が焼かれるように熱かった。

そして今、ここは祖母の家の中ではない。


そして目の前にいる洋服、と言うにはかなり古臭いというか、クラシカルというか、ナチュラルな感じの服を着た少年。

日本人には感じられないような瞳の色。

さらに、石のタイルでできている薄暗い謎の建物の中。


少年の言動からしてもここは恐らく日本では無い。

日本ではない、どこかの国。


僕は戸惑いながらも状況確認をした。



「ここは・・・『コラール』の楽譜の中?」



僕は呟いた。





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