第60話 お菓子の用意を考えたら
マリヤが試合会場に向かっているその時、空中で対戦をしていたマオとミオ。一瞬、次の術を考え、目を離したマオが、ミオの魔術に押され、地面に勢い良く叩きつけられた
「ミオさん!」
「どうしよう……回復の術使う?」
「試合中はマリヤさん以外ダメだよ!」
目の前で倒れたミオを見てクラスメイト達があたふたと狼狽えだす。不安そうに顔を見合わせていると、間一髪魔術で地面に直撃を免れたミオがゆっくりと体を起こし、ゆっくりと立ち上がった
「わ、私マリヤさん探してくる!」
「待って、魔術で探せない?」
走って探しに行こうとした瞬間、呼び止められて慌てて立ち止まる。ふぅ。と深呼吸をして目を閉じ術を思い出す
「えーっと、捜索の術は……」
頭を抱え悩む姿に不思議そうに首をかしげる
「あれ?その術って、得意じゃなかった?」
「そうなんだけど……。使えなくて」
「緊張して使えないの?」
「うーん……」
首をかしげ術を再び思い出す。回りにいるクラスメイト達も術を思い出そうとしていると、走って戻ってきたマリヤが息を大きく吸いながらマオとミオの様子を見た
「マオ、ツラくないの?」
「こんなの、フランの練習に比べたらツラくなんかないよ」
そう言うと、ふぅ。と息を整え、コツコツと足音をたてながら苦しそうな顔をしているミオに近づいていく
「ちゃんと油断せずに勝てますかね」
「油断より緊張で負けるかもしれませんよ」
ログと一緒にマオとミオの試合を見ているユグスが、ログの呟いた言葉にフフッと笑いながら返事をした
「お話し中にすみません、新しい家にはお菓子はありますか?」
たくさんの本に姿が見えない中フランが大声で二人に問いかける。フランの声がするログやユグスの頭上の方に顔を向けると、フランの姿は本で隠れ見えない中、ユグスがフランに答えた
「ええ、用意しておきますよ」
「家に溢れるほど用意してくださいね」
「お菓子のための魔力があれば、是非」
ユグスの返事が聞こえたのか、フランのピンク色の長い髪がユラユラと左右に揺れて見えた
「フラン、ちゃんと集中しないと魔力を失うぞ」
「ご主人様こそ術を間違わないようにしてくださいね」
さっきよりも機嫌の良さそうなフランの声に、ログがはぁ。とため息をついた
「では、また後で……」
ユグスがそういうと、周辺に大量に浮かんでいる本を避けながら去っていった。少し目線を後ろに向け、ユグスの後ろ姿が見えなくなると、上を向いて、フランの様子を見た後、近くにあった一冊の本を手に取った
「予想よりも早く魔術も魔力も集まったな。フランのお菓子を考える時間が出来そうだな」
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