第59話 目を離した隙に

「ミオさん!頑張って!」

 二人の優勝を決める戦闘が始まり、ミオの学園のクラスメイト達が声が届くように大声で応援をする。何度も大声で叫び呼んでもその声は観客達の声にかき消され、少し叫び疲れたのか、はぁ。とため息をついた

「ねえ、あの子強いね……」

「うん、ミオさんの妹さんだよね、ミオさんと同じくらい強いよね」

「あんなに強いなら、私の学園でも上位になれるのになんでグレニア学園なんか行ったんだろ」

「さぁ」

 と、二人の戦いを見ながら話をする間に空に浮かんでいた二人がゆっくりと降りてコツンと小さな足音をたて、何度も大きく肩を揺らし息を整える

「強くなったねマオ。最下位の学園にいるなんて勿体ないよ。私達の学園に転校する?」

「遠慮しておく」

「なんで?すぐに学園のランク一位の生徒になれるよ」

 ミオが話している間に、音もなくミオの目の前まで来たマオ。顔を見つめあい、ミオがマオから少し離れるように、一歩後ろに下がった

「この試合に負けたら転校考えるよ」

 そう言うと、マオもミオから少し離れるため、二

、三歩後ろに下がった


「マオさん強いですね、大分練習したかいがありました。全然負ける気配がありません」

 集まった本の表紙に写し出されたフランが二人の対戦を見た嬉しそうに言う。ユグスも嬉しそうにウンウンと頷き、マリヤは不満そうに試合を見ている

「ミオさんの魔力は負けてないのに……どうして?」

「きっと学園をランク一位にしたいという気持ちが強いからでしょう」

「いえ、多分違うと思いますが……」

 ユグスの言葉にフランが言い返すと残念そうにため息をつき、ログは三人の会話を聞きつつ試合の様子を見続ける


「……なにこの本?」

 ユラユラと力無くマリヤの目の前を一冊の本が通りすぎ、その本に振れようと手を伸ばした

「触らない方が良いですよ」

 ユグスに止められ伸ばした手を少し下げる。フランがユラユラと力無く地面に落ちた本を手に取った

「あなたには今、魔力も魔術も無いですから振れても大丈夫ですよ」

 フランの言葉にマリヤがグッと顔をしかめる。ログに手に取った本を渡すと、試合が動いたのか、観客の声がより一層大きくなった

「試合が終わりますね」

 フランがそう呟くと、無数にある本に向かって行ってしまった

「君も戻った方がいい。負けちゃったら慰めないといけないからね」

 ニコリと微笑みながらユグスがマリヤに言うと、ログに目線を向ける。視線に気づいたログが本からマリヤに一瞬目線を向け、すぐまた試合が写す本の方を見た

「戻ります。後でちゃんと私の術は返してください」

 そう言うと、何処かにいるであろうフランを探しながらたくさんある本を掻き分け早足で試合会場に戻っていたマリヤ。足音が聞こえなくなると、ログがユグスに目線を向けた

「ではそろそろ本の片付けをはじめます。ちゃんと本棚を用意していてくださいね」

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