第61話 それぞれ目を閉じたら
「私の勝ちでいい?ミオ」
「そうだね。私の負け」
「やっと初勝利。ミオに勝てたよ」
マオが嬉しくも少し寂しげに話す。ミオもフフッと笑ってマオから少し目をそらした
「弱くなったね」
「私は弱くなってないよ。マオが強くなりすぎたんだよ」
そう返事をすると、観客の方に目線を向け、ログやマリヤがいるか確認する。マリヤは、魔術を使うのを諦めたクラスメイト達の側で不安そうな表情で見ていた
「でも私に一度勝てただけじゃ、グレニア学園が有名になるなんて出来ないよ」
「分かってるよ。これからもっと頑張らないといけない」
マオの言葉を最後に二人見つめ合う。ミオがふぅ。と一息ついて、目を閉じると、マオが一歩ミオに近づいた
「そう、ここから始まり」
集まった本の表紙に写し出されるマオとミオの試合を見ながらログが呟く。ログの周りにいた本達が
空へと飛んでいき、ログの上で見えていたフランのピンク色の長い髪が移動した本に隠れ見えなくなり、ログの視界から青空も見えなり、足元が少し暗くなった
「すごい魔力ですね」
二人の様子を屋上の入り口付近で見ているユグスが驚きつつ一人呟く。すぐ横をすり抜けていく、ログが集めた本に見入っていると、入り口の扉がガチャと勢いよく開いた
「ユグス校長、見つけましたよ!」
グレニア学園の先生達が息を切らし声をかける。ユグスが気づいて返事の変わりにニコリと微笑むと、すぐにユグスの周辺の様子に気づいた先生達が驚き唖然としている
「校長、これは一体……」
「グレニア学園をランク一位に押し上げる魔力と魔術です」
ユグスの言葉に先生達が首をかしげ、顔を見合わせる。いつの間にかユグス達のいる場所も本が集まり、空が見えなくなっていた
「なんですか、この本の数……」
集まった本で辺りは暗く戸惑ってい見ていると、一瞬、無数にある本が眩く光り、ユグスや先生達がぎゅっと強く目を閉じた
「大丈夫か?」
眩い光の中を瞬きもせず見ていたログが呟く。集まっていた見えなくなっていた空が視界に広がると、ログの目の前に、ピンク色の長い髪が揺れて見えた。ログが少し顔を上げると、左右に体を揺らし体の様子を見るフランが立っていた。声をかけずフランを見ていると、視線に気づいたフランはエヘヘと笑って少し嬉しそうにログに話しかけた
「魔術がスゴいですね、魔力でお腹がいっぱいになりそうです」
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