第8話 古巣へ
メンエスに通い始めて、2ヶ月ほど。
日毎に、虚しさを感じていた。
初回で遭遇した「抜き」など無く……いや、それも一因ではあるだろうが、コンカフェやメンエスでこはくさんと話したとき程の楽しさや充足感は、他の女性と密着することでは得られなかったからである。
ある時、メンエスの帰り、私はあまりの寂しさに、こはくさんの勤めていたコンカフェAに行った。
そこで対応をしてくれた初対面のコンカフェ嬢は、なんだか冷たい態度だった。私が過去のコンカフェ嬢の推しだったからか、あるいは彼女がそういう性格だったからなのか、はたまた、私の態度が良く無かったからなのか。
改めて、こはくさんがもういないのだということを思い知った。
これが、私がコンカフェAに入店する最後の日となった。
それからメンエスに通うペースも少しだけ落ち着いてきた頃、私は自身の誕生日が近いことに思い至った。
もしもこはくさんとコンスタントに会えていれば、きっと営業の一環とはいえ「おめでとう」の言葉をくれただろう。
それが、今は望めない。
寂しくて、私はこれまでに出会ったメンエス嬢の中で、いちばん良くしてくれた「ハルカ」さんに予約を入れた。
彼女は所謂「抜き」があったわけではないが、私には彼女のしてくれたハグがとても嬉しかった。
ハルカさんに本指名を入れて入室した際、誕生日が近いのに寂しくて…と素直に告げた。彼女は喜ぶような素振りを見せてくれ、帰りの際にはポイントカードのようなものに「お誕生日おめでとう」のメッセージを添えて手渡ししてくれた。
ハルカさんは、正直に言えば私好みの容姿とは違ったが、彼女の優しさはそれでも嬉しく、大きな恩を感じたものである。
それからは、月に1度ほどのペースではあるが、ハルカさんのところにのみ通った。彼女の施術は健全なもので、毎回のようにしてくれるハグがとても心地よかった。こちらからハグさせてくれることがとても嬉しかった。
抱き合う最中に、彼女が寝息を立てることもあり、それもなんだか面白かったものである。
そんなある時、メンエス専用に作っていたTwitterのアカウントを、見知らぬメンエス嬢がフォローした。
次回、背徳。
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