第9話 汚れ切った日々

 私のメンエスアカウントをフォローした見知らぬメンエス嬢を、ここでは「サクラ」さんとしよう。

 彼女がTwitterアカウントにあげる写真は、正直に言えば私好みの…いや、きっと大勢がそう判断するほどには美人だった。

 メンズエステに行くことへの抵抗などほぼ無くしてしまっていた私は、サクラさんに会うために予約を入れた。それまで通っていた、ハルカさんの在籍するお店とは別のものだった。より高級感のある印象の店だった。

 人気嬢であることを予想した私は、彼女が出勤表をお店のホームページに載せるなり、一週間も前に予約を入れた。

 それからの一週間は、なんだかわくわくしていたことを覚えている。こういったかたちでなくとも、自分で、好みの女性を指名するなどということは初めてだった。

 当日、指定されたマンションに入ると、出迎えた女性はちょっと写真と違っていた。美人ではあるが、それでも写真とは違っていた。いわゆる詐欺写真というものか。

 少し残念に感じつつも、私はいつも通り、こはくさんとのこと、そして、今はそのこはくさんにも会えないでいる状態なのだということを話した。

 サクラさんは、本業として働いている昼職のことや、好きな料理のこと、自宅のレイアウトのことなどを話した。

 サクラさんとの会話は、こはくさん以来の楽しさだった。それまでのメンエス嬢たちとは、よく知らない(それでも有名な)映画や音楽の話に、実際以上に興味があるフリをして話すようなことばかりであった。しかしサクラさんとは、互いの日常を交換し合うような、知らない知識を与えてくれるような、そんな充足感があった。

 それまでに通っていたメンエスよりも割高な料金設定だっただけに、部屋は綺麗だった。この度も抜きは無かったが、それでも、抜きがあった初回を含め、こはくさん以来、今回が最も楽しいメンエスだった。


 私はサクラさんとの時間に居心地の良さを感じ、それから2週間後、再び彼女に予約を入れた。

 低収入の私には大きな出費であったが、他に金のかかる趣味のない…いや、こはくさんのメンエスに行き始めて以来、二次元やカードゲームなどの趣味を控えていたこともあり、実家暮らしの私にはまだ貯金ができるほどの余裕はあった。

 さて、2度目のサクラさんのメンエス。結論から言えばここでは抜きがあった。

 まず、私がリピートしてくることは予想外だったらしい。初回は緊張のあまり、私はガタガタ震えていたのだそうだ。

 2度目ということでリラックスしていた私に、彼女は「触って良い?」と聞いた。今回も、その意図がすぐには分からなかった。はじめて抜きがあった時と同じく、何を今更…と思いながら「はい」と言った。

 しごき始める彼女に対し、私は困惑しながら「ごめんなさい」と何度も言った。謝らないでと失笑しながら言われたので、私はなんとか「ありがとう」と言った。

 彼女はそれ以外にも、胸を触らせてくれたりした。女性の胸を揉むなど、初めての経験だった。そもそもが、メンズエステの施術中に女性の身体を触るなど、こはくさんの手に触れた時以来である。そんな私に「触って良いよ」と手を握り誘導までしてくれた彼女に、甘える他はなかった。


 こうして、私はしばらくの間、隔週でサクラさんの元に通い、月一でハルカさんの元へと通った。

 ハルカさんにはハグをしてもらい、サクラさんには手淫を。汚れ切った日々だった。こうした中で、私はサクラさんに彼女の股を直に触れることを許されもした。

 当然、初めて触る女性のデリケートゾーンだった。三十代まで女性経験もなく、そういったことを半ば諦めていた私は、泣いて感謝した。

 他の客にはそこまでは許していないと、嘘か本当かは分からないものの、そういう私を喜ばせるようなことも言ってくれた。


 そんなある日、こはくさんから連絡があった。

「また会えるよ」

 新たなコンカフェでの勤務が決まったのであった。


 次回、再会。

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三十代童貞こどおじがコンカフェ嬢にのめり込んだ話(フェイクを交えた実話) @hikarabi-bororo

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