第4話 消失

 仕事終わりに急いでコンカフェAへ向かうと、ちょうど30分ほどは滞在できる。

 こはくさんのいる日で、行ける日には基本的に毎回通う。そんな日々が続いた。みどりさんとの2度目のチェキから2週間ほどが経ったある日、私はようやくこはくさんとの初チェキを撮った。

 2人で猫のポーズをしたもので、惜しむべきは彼女がマスクをしていることだった。

 チェキへの落書きには「いつもありがとう」と書いてくれた。たったの2ヶ月ほどだったが、私は既に彼女の数少ない常連だった。

 この頃、彼女の誕生日が近いことを知り、その時にはさすがにドリンクを入れるなどの貢献をしよう、あるいは簡単なプレゼントでも…となんとなく考えていた。

 同時に、彼女の年齢を知った。18歳。短大の卒業を来年に控えた、もうすぐ19歳になる女性。

 私は、言葉を濁さずに言えば、ガッカリした。22歳だろうが18歳だろうが歳の差が大きいことに変わりはないが、それでも成人前だという彼女の年齢はあまりにも大きな壁である。

 親子ほどではない、というのは確実だったが、それでも恋心のような感情を抱くには無理がある。親子ほど離れてはいないにしろ、親との方が近い可能性は否定できない。

 …それでも、お祝いはしなければ。推している者として。

 しかし結論から言えば、その機会は訪れなかった。


 こはくさんとの初めてのチェキを撮った後、彼女が出勤することはなかった。

 2週間ほど実習で忙しくなるとは聞いていたが、それにしても、彼女の欠勤は2ヶ月以上も続いた。そういえば、すぐにではないが近々卒業をするかも、とも言っていた。

 Twitterに更新もない。半ば諦めつつ、3ヶ月後のある日、私はこはくさんのいないコンカフェAに向かった。

 初めて会うキャストに、「誰推しなの?」と聞かれ、私はなんでもないふうに「こはくさんだったんですが…卒業しちゃいましたかね」と軽く言った。

「あー、そうですね」

 無情な肯定。残念がる私にキャストたちは明るく接してくれたが、私は酷い脱力感に見舞われていた。

 こはくさんに出会ってからおよそ4ヶ月。会って話せていた期間は2ヶ月。たったそれだけなのに、私の中では彼女の存在は大きなものだった。

 帰宅後、私は彼女のTwitterのDMにメッセージを送った。

 今まで本当に楽しかったということ。こはくさんだからこそ楽しかったということ。コンカフェに不慣れで、キャストドリンク等も一度も入れられず申し訳ない、ということ。あの日が最後だと分かっていれば、直接、最後の挨拶をしたかったということ。今までありがとう、お元気で。


 こうして、私のコンカフェ通いは終わった。

 悔いは残ったが、最後のDMは自己満とは言え爽やかな終わり方でもあった。

 そのはずだった。


 次回、転職。

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