西洋風ファンタジー世界に、何かと『呪い』はつきもの。
しかし、本作のように「もし日本産の恐怖映画や都市伝説が異世界へ渡ったら?」というアイデアを実行させた作品はそうそう無いだろう。
それらの怪異の様子は丁寧に描写されるため、元ネタとなる『Jホラー』の多くを知らない自分のようなビキナーでも素直に楽しめる。まさしく『Jホラー入門』にうってつけの一作だ。
ホラー的な観点では、4番目のエピソード「地底の村」がとりわけ出色の出来と思われる。
小説を読み進めているだけにも関わらず、まるで無意識のうちに知らない路地に迷い込み、いつの間にか神隠しに遭ったような不思議な感覚を覚えてしまった。
『読書そのものがホラー体験と化す』という摩訶不思議な経験は、間違いなく得難いものだった。
見ると一週間以内に死ぬ呪いのビデオ、入居者が次々と怪死を遂げる呪いの家……そんな、どこかで聞いたような呪いの現象がファンタジー風な異世界に輸入されてしまう本作品。「異世界にビデオテープ持っていっても再生できないじゃん」というツッコミに対しても、ちゃんとビデオが巻物となり、現地の人でも読める親切設計で対応してくれます。
要するにJホラーのパロディなんですが、本作の偉いところはパロディでありながらギャグっぽくならず、しっかりと怖いところ。
上辺のイメージを借りただけという内容になっておらず、原作の要素を作中に上手く散りばめているのもお見事で、元ネタの呪いの恐ろしさに加えて、呪いがきっかけで起きる人間ドラマの中にもしっかり恐怖を演出してくれます。特に第2話の「黒い巻物2」はシスターの語りも上手ければ、短い中に張られたさりげない伏線も巧みで、元ネタがわからなくても恐ろしい完成度の高い短編になっています。
今のところまだ4話しかないのですが、このユニークなホラーの世界をもっと観てみたいので、今後の更新にぜひとも期待したい一作です。
(「越境する恐怖……」4選/文=柿崎憲)