これはまるで、異世界版・高瀬舟

森鴎外の高瀬舟に出てくる喜助という罪人がいる。
この人は、同心の羽田庄兵衛曰く「足るを知る」人だと言う。

この物語に出てくるシャベルくんにしてみても、その「足るを知る」人間性を持って、この過酷な世界を生きているのだろうと思わせてくれる。

しかし、高瀬舟とのちがいは、その人間性が、自らの希望として、成長とともに確かに身を結んでゆく様だろうか。

そこには、所謂、教養小説(ビルディングス・ロマン)の趣がある。

単純なスキル冒険譚にはない、人との出会いの中で培われるシャベルくんの内面の成長が、私の胸に温かいものを湧き立たせてくれるのだ。

それこそが、シャベルくんが時折思い返すあの言葉により深みを持たせてくれる所以なのだろう。

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