第43話

俺の両親は反魔王勢力の『アレース』の奴らに殺された。

  

その数日後、俺は両親のかたきを打つべくアレースの幹部を狙った。

  

『ウィレット一族を根絶やしにできればこっちのもの』と以前父が話していた通りに、平和な昼に一族の屋敷を襲ってやった。

 

 不運な事にもウィレット・フィーガス総裁の子供だと思われる少女を一人逃してしまった。俺が殺る直前に転送魔法を使われたのだ。 


 あれが女だったため、子孫を残されたらまた振り出しに戻ってしまう。近いうちにあいつを殺さないとな…と思っていた。

 

 あれこれ考えているうちに、屋敷には『アレース』の人間が続々と到着しているようだった。 

 

 総裁とその家系が全滅したのだから、すでに組織として崩壊しているのにもかかわらず、執拗に俺を倒すことに執着しているようだった。人間の結束というものはどうも面倒だ。

  

 俺は急いでその場を後にし、いつもの姿に戻って屋敷に戻った。

 

 


 そこからは神経が磨り減るような時を過ごした。


 人を殺したことに恐怖心を覚えている自分が憎くて仕方なかった。俺は最初から人間の味方ではないのに。街中で出会う全ての人という人が敵に見えるのが恐ろしかった。


 足は勝手に速く動き、息が苦しくなるほどに走った。だいたい、なんで俺がこんなに苦しむ必要があるんだよ?

  

 俺だって好きで人を殺したわけではない。アレースの人間が俺の両親を殺すのが悪いんだ。先ほどまでの血にまみれた光景が脳裏に浮かび、気分が悪くなった。

 

 俺が魔王だなんて向いていないのかもしれない。このまま一生を怯えながら過ごすなら、もういっそ死んだほうがマシかもしれない。

  

 誰かに身を負われている気がして、ふと後ろを振り返った。そのまま階段をくだろうとした俺は、足がもつれて体が宙を舞った。

 

 宙を舞っている間に俺は死を悟った。まあ、このまま生きていても多分自殺しただろうし、事故死なら悪くないか。 


 もうそろそろ、全身にとてつもない衝撃が走るだろうと覚悟した時の事だった。 


 「痛っ…くない…。」

  

 俺のすぐ傍には、が倒れていた。 

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