第39話
そうか。今の出来事は夢か。
夢の中で必死に走っていたせいで、全身に汗をかいていた。体も熱くまだ頭も痛い。
それよりも、私は今見た夢の内容が理解できなかった。
夢の中で母は私を「ジェシー」と呼んだ。
父と母は死んで、私は孤児になって、安否不明になって…。
まさか、と思った。レイ様が一番警戒していた「ウィレット・ジェシー」という人物が、この私だなんて。
レイ様はそれに気がついていたのか?それとも偶然か?
今も隣ですやすやと眠るレイ様が信じられなかった。
今までずっと私と仲良くしてくれたのは、私を敵に回さないようにするため…?
私に一切手を出さなかったのは、私がウィレット・ジェシーだから…?
もしかしたら、レイ様は私を殺すつもりなのかもしれない。
何もかもが信じられなくなって、私は部屋を出た。こんな状態で彼の隣にいられるわけがない。
一階のリビングに下りて、昨日のようにソファーに寝そべった。
レイ様は以前、過去の記憶を取り戻すことができれば前世に戻れるかもしれないと言っていた。あの過去と何が関係して、前世に戻ることができるのだろう。
なにがどうあれ、現実を知ってしまった以上はもうレイ様と一緒にはいられない。
私の両親を殺したのが彼だったなんて。そして彼の父親を殺したのが私の両親だったなんて。
先手を打ったのは私の両親なのかもしれないが、彼のことも許せなかった。私の居場所がどこにもないのは、彼のせいではないか。
無性に彼が許せなくなって、私はどうすればよいのかわからなくなる。
とりあえず契約は解除してもらおう。この先行く当てはないが、こんな状態で彼と過ごすよりはマシだ。あいつも理由があって私を懐に置いているのだろうから、私がなにかしでかせばすぐにクビになるだろう。
眠るつもりはなかったが、ソファーに寝そべって暗いくらい天井を一人で眺めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます