第77話 制空を競って
その日、ロイクとロベルトを屋敷内で見かけることは無かった。
レイドはそのことに少し疑問を感じつつも、明日に備えて寝ることにした。
――そして、次の日が訪れる・・・
~アミアン北西部、街壁の上にて~
「おい、敵の姿は見えるか?」
「いや、まだ確認できない。空も同じくだ」
戦士たちの話が聞こえる。
現在アミアン連合軍は、北西部に集中しており敵を真っ向から迎え撃つ形だ。
その他の地域は、コレル領軍が援軍として守っている。
「レイド君、準備はもうできたかね?」
「ミゲル将軍。貴方は兵士の指揮を?」
「いや、私も遺跡に乗り込もうと思う。君の力になれるはずだ」
「分かりました・・・」
一年前、遺跡の探索に行こうと持ち掛けたのはミゲルだ。
しかし、レイドはミゲルがどこまで戦えるのか知らない。
そのあたりがかなり心配でもあった。
「他に誰が遺跡に入るのか知っているかね? あまり詳しく聞いていないのでな」
「えーと、エレーヌ、カイン、ロイク、ロベルト・・・ ってあれ? ロベルトはどこだ?」
他の皆はそろっている。しかし、ロベルトだけそこには居なかった。
(昨日ロイクと話していたはずだ・・・ ロイクに聞いてみるか)
「ロイク、ちょっといいか?」
「ん~? 何かな」
「ロベルト、どうしたんだ?」
「・・・あ~。彼はね、今回最前線に立たないよ。色々事情があってね・・・」
レイドは、勘づいて小声で話すことにした。
「・・・もしかして、奴が裏切って?」
「う~ん・・・ 結構尋問してみたけど、口を割らなかったんだ。けど、何か事情があるのは確かだね~」
「・・・そうか」
「一応、遺跡に行くメンバーからも外したよ。危険だからね」
「他に戦力は・・・ いないか」
「仕方ないよ。あ、でも他の人には言わないでね、士気が下がっちゃうから」
「分かった」
ロイクとレイドは互いに見合う。
――あまり気にしていなかったが、ロイクとはずいぶん一緒に戦ってきたな・・・
生死を分ける戦いに、常にロイクがいた。その点では、彼のことを一番信用している。
「レイド、何の話をしているのですか?」
エレーヌがやってきた。
「いや、ただの世間話さ。それより、そっちはどうだ?」
「例の準備は終わりました、後は奴らが引っかかってくれるかどうか・・・」
「・・・来たぞ。敵襲ー! 敵襲だ!!」
監視役の兵士がそう叫んだ。
全員が北西部を見る。
「・・・百、千、五千、、、 い、いちまん・・・ 陸は計り知れない数です!」
「空も、大型魔獣が多数いる模様!」
「ついに来たか・・・」
「街壁の上に居る戦士たちよ! 今から私、ミゲルが指揮を執る! まずは作戦の通りに攻撃を始めよ!」
「「「おう!!!」」」
そうして、戦いの火蓋が切って落とされた・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「将軍、黒化ドラゴンがこちらに接近してきています!」
それに加え、黒化ワイバーンなども襲来してきていた。
「前回は、空で負けてしまったが・・・ 私が率いている以上、そんなことはさせん! 飛行魔術師、ワイバーン兵を出動させよ!」
「はっ!!」
前回は飛行魔術師のみで、数の暴力で負けてしまった。
しかし、今回はワイバーンを使い、航空戦力の増強に成功していた。
「すごいワイバーンの数だ。なぜこんな量を・・・?」
「黒化ワイバーンのせいによって、居場所を失ってしまった個体をかくまったそうです」
「なるほど・・・」
「エレーヌ! レイド! こっちも応戦するぜ!」
カインはそう呼び掛け、弓を放ち戦い始める。
流石は弓の名手だけあって、確実に一匹一匹堕としている。
「援護します! Εκρηκτική μαγεία ... έλα σε Μένα ...!」
――ボォォォンッ!!
味方から少し離れたところに、爆裂魔術を放った。
「ギャゥゥ!!」
「そうか、爆風で飛ばしているのか!」
「空は格好の的ですよ。当たらなくても堕とせるんですから」
「・・・あれで十匹は逝ったんじゃねえか? こっちも負けていられねえな!」
敵は徐々に押されているようだ。
アミアンに備え付けてある兵器も火を噴いている。
「グルル・・・ ガァ・・・!」
敵は地上にいる兵士をターゲットに襲い掛かってきた!
「・・・レイド、来ましたよ! 援護お願いします!」
「任せてろ!!」
「ギャァゥ!」
「させるか!」
――ガキィィィィィン!!
エレーヌに迫った黒化ワイバーンの爪を、レイドはしっかりと受け止めた。
「Φλόγες! Κάψτε!」
「ギャァァァァゥ!!」
「・・・炎魔術か。いいぞ!」
「さあ、次の獲物に移りましょう!」
空での戦いは優勢を保ったまま推移できている。
今回の制空権はこちらが取ることになるだろう!
「報告します! 敵の地上軍が動き始めました!」
「・・・ついに来たか。そのまま奴らをおびき寄せろ!」
「はっ! 将軍!」
戦いは地上に移っていく・・・
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