第78話 突撃開始!

「こりゃあ・・・ 真っ黒な景色だぜ・・・」

「何て数だ・・・」


 黒き魔獣の大群は、森から次々と現れ辺りを埋め尽くす。

 黒化ジャイアントベアーなどの大型魔獣も、数えきれないくらいこちらに来ている。


「ラジ率いる地上部隊に伝達せよ! 敵が動いたとな!」

「はっっ!! 将軍!」


「さてと、エレーヌ殿、準備はできたかね?」

「はい。完璧に済ましてあります。後は奴らがそこに来るだけ・・・」


「そうか・・・ 他の魔導士も引き締めて作業を続けよ!」


「なあ、何の準備をしているんだ?」

「・・・まあ、見たら分かりますよ。そろそろです」


 先ほどから、アミアン連合軍は止まったままだ。

 制空を取ったはずの航空部隊も、何もしない。


「おいおい、敵がもう近くまで来ているぜ! 大丈夫かよ!」

「・・・今です!! Παγίδα της γης ... εμποδίστε τον εχθρό!」


「「「Παγίδα της γης ... εμποδίστε τον εχθρό!」」」


 他の魔導士も一斉に同じ詠唱を唱え始める・・・!


 ――ドォォォォォォォンンッ!!


「おわっ!! 何だ・・・! じ、地面が揺れているぜ!」

「やった! 成功しました・・・!」


「あ、あれは・・・!」


 巨大な魔法陣が現れたと思いきや、地面に亀裂が走り、大きな奈落が形成される!

 驚いた黒き魔獣たちは、次々と奈落に落ちていく・・・!


「よし! 今だ!! 航空魔導士、ワイバーン兵たちよ、攻撃を開始するんだ!」


「「「おおおぉぉぉっ・・・!」」」


 ミゲル将軍の掛け声によって、空の部隊は一気に攻撃を開始した。

 一度崩れてしまえば最後、敵は大混乱に陥る!!


「ギュアァッ!」

「ゴルヴァ・・・!」


「よし、だいぶ数が減ったな。レイド君、そろそろ用意するんだ。こちらも一気に駆け抜けて、遺跡に向かうぞ!」

「分かりました!」


「うむ、十五分後、北西の門にて集合だ」


 そうしてミゲルはどこかへ行ってしまった。

 ここに残っているのは、エレーヌ、カインだけだ。ロイクはいつの間にかいなくなっている。


「・・・お~い! レイド~ エレーヌ~」

「おい、今まで何してたんだ?」


「いや~ やることが無かったから周りを巡回していたんだ。それより、ロベルトを見なかったかい? どこにも居なくてね・・・」

「・・・まさか! ・・・いや、やっぱり何でもない」


 レイドは寸前のところで耐えた。

 ――まだ、皆に言うことは出来ない。


「その反応だと、こっちにも来ていないようだね・・・」

「どうしたんだよ。どっかで戦っているだけなんじゃあねえか?」


「・・・ひとまず、彼を見つけたら十分注意するんだ」

「注意ってなんだよ・・・ まあいいや、とりあえず俺らも北西門に向かおうぜ」


「ああ、そうするか・・・」


(ロベルト・・・ お前は、何がしたいんだ・・・?)

 ――そう、レイドに不安がよぎるのだった・・・



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ~同刻、アミアン北西部の森にて~


「チッ・・・ 忌々しいですねぇ。なんであいつら、こうも簡単に罠に引っかかるんでしょうか」

「・・・仕方ナイサ。ソレガ我ラノ宿命ダ」


 ――ロマン・べレーター、彼が”黒き魔獣”を率いていた。

 熱血教師だった頃とは打って変わり、非常に狡猾そうな見た目をしている。


「・・・それより、”彼”とは連絡がつながったんでしょうか」

「アア、奴ラ、アノ遺跡ヲ目指シテイルラシイゾ」


「へぇ・・・ それは好都合ですね・・・ あそこで迎え撃ちましょう」

「頼ンダゾ・・・」


 こうロマンと話しているのは、黒い”玉”だ。

 ロマンの首飾りにひっそりと付けられた”ソレ”は、ギラリと輝くのだった・・・







「よし、皆集まったか?」

「うん、遺跡調査チームも全員、そろっているよ~」


 先頭に立って指揮しているのはラジだ。

 彼は、地上部隊の総大将として馬に乗っている。


「レイド君・・・ 頼んだぞ」

「・・・絶対に生きて帰ってきますよ」


「当然だ。よし、門を開けよ!」


 ――ガラガラガラ・・・

 門が開けられ、戦いの様子がはっきり見えてきた。


 黒き魔獣は壊滅状態ではあるが、まだしぶとく千匹ほどは残っている。


「・・・今から奴らに正面衝突する! お前ら、準備はいいな!?」


「「「おうっ!!」」」


「・・・・・・・・・突撃ぃぃぃぃっ!!」


「「「うおぉぉぉっ!!!」」」


 歴史に残る地上戦が今、始まった・・・!

 レイドたちも別動隊として、ラジたちの後を追う。


「レイド、僕たちは出来るだけ戦闘を避けて、そのまま森へ、遺跡へ向かうんだ」

「ああ、分かっている!」


「ミゲル将軍よぉ、大丈夫か? ずっと走り続けられるか?」

「はっはっは、随分と舐められたものだね。こんな歳でも、体力だけは取り柄だ」


「皆さん、気を引き締めてください! 今から奴らの中を突っ切りますよ!」

「はっ、望むところだぜ!」

 

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