ウンスイというインチキ霊媒師

そんなこんなで俺はまた異端審問に掛けられる事になった。容疑はアンデットを聖都に誘き寄せて襲撃し、更に女神像を倒した事らしい。

 アコナイトがやらかした事を全て俺に被せる様だ。まあ、そうでもしないと教会は崩壊しかねない。短絡的な考えだがな。

 俺は異端審問が始まるまで個室に閉じ込められている。最近ボロ屋敷でしか寝泊まりしていなかったので、簡易的ではあるがベットがあるのは嬉しかった。

 疲れもあるからなのか拘束されているのにも関わらず俺は熟睡した。


 何だか外が騒がしい。せっかくゆっくり寝ているのに誰が騒いでいるんだ。

 扉の向こうでドタドタ誰かが来るのが分かる。その足音は俺の部屋の前で止まった。

 そして突如ノックもせずに扉が開いた。扉を開けたのはフィザリスだ。

「これはこれはフィザリス卿。ご機嫌いかがですか?狭い部屋で申し訳ないですがゆっくりしていってください」

「うるさい!それより外の市民をどうにかしろ!」

 フィザリスの顔は怒りで真っ赤になっており汗もダラダラと滝の様に流れている。

「どうにかしろと言われましても、私はずっとここで寝ていたので何のことやら?」

「お前を解放しろと大聖堂に市民が詰め掛けているんだ!あろうことか騎士や修道士までもだ!」

 当然の結果だろう。あの状況で全てを俺のせいにするのは無理がある。

「とにかく外に出て説明して場を収めろ!」

 フィザリスは鼻息荒く俺に命令する。

「説明とは教会が怪しげな物を使い、アンデットを操っていた事ですか?」

「そんな証拠は無い!」

「証拠なんて必要無いのですよ?肝心なのは外から見た時にどう見えるか、誰もが納得できるかです」

「何が言いたいのだ」

「今この状況では私が喋った事が真実になるのです」

 フィザリスは黙ってしまった。この状況では俺の言い分が全て通る。嘘も本当も。この教会を生かすも殺すも俺次第と言うわけだ。

「今や教会は崩壊寸前です。市民の心は離れ、アンデットを操る力も失われた。聖都を象徴する女神様像も今や瓦礫の山です」

「それはお前が倒したのだろう!」

「まあまあ、落ち着いて下さい。それに関しては私も悪いと思ってます。だから取り引きをしましょう」

「取り引きだと……?」

「そうです、教会の崩壊を免れ、貴方が法王になれる得しかない取り引きです」

 俺が笑顔でそう言うとフィザリスはごくりと唾を飲み込んだ。


 俺はフィザリスと取り引きをした後市民の前に出て説明した。

 俺はフィザリス卿の指示の下、教会内の悪事を探っていた事を。御使いとして目立つ事で敵を炙り出していた。

 そして黒幕がアコナイト法王とトライソーン騎士団長と分かり告発しようと準備を進めていると、それが奴等にバレて捕まってしまった。

 聖都での決戦直後に俺が拘束されたのは他に敵がいる可能性がある為匿っていたのだ。

 と言うのが俺がフィザリスの為についた嘘である。これで少なくともフィザリスが吊るされる事は無くなった。その後教会がどう変わっていくのかは残っている奴等次第だ。俺の知った事ではない。

 俺が出した交換条件はメリアを神聖騎士団の騎士団長にする事。アナスタシアの街を復興させる事。そして俺が復興の担当者となる事だ。

 俺は聖都から遠く離れてそこで過ごす事になる。フィザリスは俺が聖都から離れてくれるし、俺も教会から距離を空けれる。どちらにとっても良い事づくめだ。

 そういうわけで俺は今アナスタシアの街にいる。

 廃墟だらけであったこの街だがカクタスのおかげでありえないスピードで復興している。教会から人件費や建築費として資金がたんまり出たおかげでもある。教会が貯め込んできた資金をこれでもかとつかわせてもらってる。

 少しづつ住居ができて人が戻ってきている。特に大きく他の街と違うのはそこら辺にスケルトンが歩き回っていたり、ぷかぷかと浮かんでいる幽霊があちこちにいる事だ。

 悪霊と言われてきた奴等がこの街に集まって来ている。リリーが旅をしながら見つけた悪霊をこの街へ招待しているのだ。

 生きている人達もこの街では悪霊を怖がらない。それを分かってこの街に移り住んで来たのだ。まあ物好きな奴等だ。

「順調に復興しているな」

 俺はスケルトンを操るカクタスに声を掛けた。

「ああ、本当にお前さんには何から何まで世話になる」

「まあ、爺さんと約束しちまったから。しょうがなくだ」

「照れるでない」

「はいはい」

 教会から讃美歌が聞こえてきた。この街の教会にはアイリスが赴任した。正確には俺を追って来たのだ。少々面倒臭いが事情を知る者で固めた方が都合がいいだろう。

「心温まる歌声じゃ……何だが……召されそうじゃ……」

 カクタスが薄らと光が輝いている。

「うわあぁ!!カクタス!召されるな!召されるな!」

 俺は急いでカクタスの腕を引いて讃美歌が聞こえない所まで走った。

 しばらく走ると讃美歌は聞こえなくなりカクタスも光らなくなった。

「ふー危うく召されるところじゃった」

「死ぬなら復興が終わってからにしろ!」

「すまん、すまん」

 ここに住む悪霊共にも教会には近寄るなと言い聞かせておこう。カクタスまた復興作業に戻って行った。

 街をぷらぷらしていると街の外に荷馬車の列が見えた。先頭にはメリアが乗っている。

「久しぶりだなウンスイ」

「ああ、騎士団長様も元気そうで」

「やめろ、騎士団長なんて柄じゃないんだ」

「それより何でメリアが?騎士団長なんだろ?」

「とにかく人手が足りないのだ。教会もゴタゴタ続いているし、騎士達も怪我から復帰してない。だからこうして私もあちこちに派遣されてる訳だ。まあ、書類仕事より性に合ってるから問題ないがな」

 くっ、せっかく面倒臭い奴を騎士団長にして聖都に縛りつけたと思ったのに何でフラフラしてるんだ。

「何だ?何か企んでいるのか?」

「別に」

「そうだ、お前に見せたい物がある。運搬しがてら見てくれ」

「何だ?」

 メリアが乗る荷馬車に乗り込み、メリアの横に座った。

 メリアが紙を広げるとそこには一人の騎士の絵が描かれていた。

「グラジオラスか?」

「そうだ、聖都にグラジオラス様の石像を立てることにした」

 グラジオラスの熱心なファンであるメリアだがまさか石像まで立てるとは恐れ入った。

「それとこれもだ」

 メリアがそう言うともう一枚の紙を広げた。そこには自身の首を抱えているグラジオラスの絵が描かれていた。

「まさかこっちのグラジオラスも石像にするのか?」

「ああ、グラジオラス様は生前素晴らしいお方だったが、今は悪霊になり彷徨っている騎士の方が有名なのだ。だからその汚名を払拭すべく聖都を救った英雄としてこの石像を立てるのだ」

 メリアの思いは分かった、だが……

「教会からは反対されただろ?」

「ああ、いい顔はしていなかった。だが今は強くは出れない。だから聖都の復興に合わせて即急に作るつもりだ」

 メリアも真っ直ぐだけじゃなくてセコイ真似も出来るようになったのか。

 街の中心部に着きメリアは積荷を下ろしていく。積荷は資材に食材と至れり尽くせりだ。

「これが資金だ。大切に使えよ」

 メリアから大きな革袋を渡された。

「分かっているって……あれ?少なくないか?」

「ああ人件費を削った」

「何で!」

「お前がただで人助けをする訳無いだろ?だから調べてみると復興作業はカクタス司祭に任せて人件費を浮かせてるらしいな?」

 バレていた。教会からたんまり貰った人件費はほとんど使わずに貯め込んでいたのだ。例えバレても教会も強くは言うまいとたかを括っていたがまさかメリアにバレるなんて。

「大丈夫だ、抜いたお金はしっかりと人件費として有効活用させてもらう」

「何に使うんだ?」

「ここから馬で四日程の街で悪霊が出たらしい。騎士としては放っておく訳にはいかない」

「おい、ちょっと待て」

「行くぞウンスイ。人件費分は働いてもらうぞ」

 俺は問答無用で馬車に押し込まれた。そしてわざわざ街の人間に見せ付けるように馬車は走っていく。

 街の少女がメリアに声を掛けた。

「メリア様!ウンスイ様とお出かけですか?」

「ああ、ウンスイと一緒に悪霊を助けに行く」

「ウンスイ様!メリア様!いってらっしゃい!」

 その声を聞きどんどんと人が集まって来た。

「ウンスイ様!ご無事で!」「いってらっしゃい!」「帰って来るまでに復興を進めておきます!」

 こうなると俺は笑顔で手を振るしかない。

「こうなる事を分かってたな?」

 俺が笑顔で手を振りながらメリアに苦言を呈した。

「お前の真似をしただけだ。恨むなら自分の行いを恨め」

 メリアは笑顔で答えた。こいつも随分とやるようになった。

 どうやら俺もまだまだこのふざけた世界でインチキ霊媒師として働く様だ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

インチキ霊媒師とキョウセイ異世界悪霊退治 なぐりあえ @79riae

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画