第8話 邪悪な気配のする場所

ランドクルーザーに見送られて四人は魔物退治へと旅立った


西へ東へと放浪しながらあちらこちらの町へと立ち寄った


法王カルタスは聖杖グリダヴォルをランドクルーザーから譲り受けていた


これは歴代の法王が受け継ぐ物で聖なる力を強化出来るモノだった


アンジェラと言えば城に残して来た息子達が気になる様子だった


ロヴェルト王子は魔刀政宗を使って魔物を倒していく様が見られた


ミネルヴァは魔槍トライデントで敵を薙ぎ払う


アンジェラは後方から魔弓ダヌーシュで狙い撃つ


前衛と後衛の攻守が上手く噛み合い次々と魔物を倒していく


各地を周る中でアンジェラは禍々しい気配のする場所を感じ取った


高い山に囲まれているようで近くを通っただけで身の毛がよだつほどだった


アンジェラが感じ取った気配はカルタスも気づいたようで宿屋で休んでる時に互いに声をかけた


「そうか…アンジェラも感じたんだね?邪悪な波動を」


「ええ…あれは魔王の波動に違いないわ」 


その夜アンジェラは夢を見た


整った顔立ちの男が語りかけて来た


適当に話していると手を掴まれて抱き寄せられた


抵抗するものの凄い力で振り解くことが出来ない


唇を奪われてようやく離れる事が出来たがその男は不敵な笑みを浮かべてこう言った


「近いうちに迎えに行くよ…抵抗すれば城の兵士や侍女達が犠牲になると思ってくれ…」 


その言葉にアンジェラはゾッとした


物凄い邪悪なオーラが放たれたからだった


城はカルタスの結界により邪悪な者は近づけないはずだが不安が過った


「アンジェラ…また会おう」


そこで目が覚めた


汗びっしょりになっていたアンジェラはシャワーを浴びる事にした


すると掴まれた場所に跡が付いているのに気がついた


(あれは夢じゃなくて邪悪な者の介入だったのね…ではアレが魔王なの?)


綺麗な顔立ちだったが邪悪なオーラに包まれていて怖かった


その後も世界を周りキングナーガ城に帰還した


それからというものアンジェラは得体の知れない気配に怯えるようになっていった


流石の法王カルタスも異変に気づいてアンジェラ問いただした


「なるほど…魔王がアンジェラを狙っているんだね?それなら結界を強化しないと…ランドクルーザー様に相談するよ」


それから城の結界は二重になり強さも強化されたようだ


それからしばらくしてアンジェラはまた夢を見た


それはランドクルーザーが見たものと同じで更に追加された要素はアンジェラが魔王に犯される描写だった


真っ裸にされ抵抗出来ないようにされた上で何度も性交渉させられたのだ


アンジェラは吐き気がした


人妻を犯すなんて悪趣味も良い所だわ


などと思っていた


自分が死ぬ事を知ったアンジェラはカルタスにその事を告げた


ただし魔王に犯される事を伏せた上で…


カルタスは戸惑ったがその事を受け止めたようで勇者となるリヴァルトとミュレイアが産まれる事を知り彼等に全面的に協力する事を誓った


ただし先走り過ぎた支援はしない事も頭に置いた上で…


そしてアンジェラと別れが近づく事を惜しみながら日々を過ごすのだった


妻が攫われる事を知っていても何も出来ない自分が歯痒くて仕方なかった


後に息子の為になるとはわかっていても到底受け入れ難い事実に胸を痛めた


ランドクルーザーもまた孫達の気持ちに胸を痛めていた


そしてとうとうアンジェラが魔族の手により攫われてしまった


その夜ランドクルーザーは夢を見た


それは邪神ロキと堕天使ルシファーそしてセシリアの影である魔女エルディアが五百年後にこの世界を脅かすというものだった


ただその時に彼等の前に立ちはだかる若者達の姿を確認した


多彩な種族の精鋭達が勇者となり戦う姿


自分達の遠い子孫達である事は明らかだった


再び繰り広げられる邪悪な存在と勇敢な若者達との戦いの結末を見たランドクルーザーは胸が躍った


まだまだ世の中捨てたものではない


そう思えたからだった

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