第9話(五)

 ───寝そうになるのを起こされて、何度も穿たれて腰の動きを再開させられる。

 明け方まで快楽を享受して、「いい加減にしろ」と怒った後、しぶしぶ間宮が後片付けもしたが、身体が気だるく意識が朦朧としている。

(……学校、あるのに)

 俺のベッドで、俺を抱き締めながら横になる間宮を恨めしく思う。

「───起きてる? 間宮」

 服を着た間宮の胸に額を擦り付けて、聞いてみた。

「うん?」

 笑みを含んだ声音で間宮が応じる。

 頭のてっぺんに唇を当てられる。俺の腰に回った腕が力がこもる。

 ───嫌ではない。

 嫌ではないが、まだくっついてたいんかい、と幾分呆れもしてしまう。

「学校、あるからそろそろ準備しないと」

 時計をチラ見して言ったが、間宮はぎゅっと俺を抱き締めたまま、

「……学校サボっちゃおうか?」

 本気のような声音で言ってくる。

「なわけいかないだろ」

 何言ってるんだ。

「間宮のお母さんに悪く思われちゃうだろ。今後の、将来のこともあるんだし、ちゃんとしないと……」

「このまま真純のこと誰にも見せたくない」

「………………」

 そういや昨日、してるとき、似たようなこと言われたなと思った。

 ───俺以外見ないで、だったか……。

「それ物理的に不可能だろ」

「物理の話をしてるんじゃない」

「……あー」

 俺の言葉にツッコミが早い。

「何がそんなに不安なの? 俺ちゃんと……お前のこと、好きだよ?」

「俺の方が真純のこと好きなの大きい」

 何張り合ってるんだ。

「どう言えば安心するんだよ? ちゃんと俺、お前とおんなじ大学行って、二人で暮らすこと考えてるよ。反対されるかもしれないけど、それは最小限にして、お前と一緒にいること勝ち取りたいと思ってるんだよ?」

「俺だって真純と一緒にいたい。でも真純はいつも誰かに目に入ってる」

「なわけあるか」

 あーもう。会話にならない。

「とにかくもう準備して朝ごはん食べよう」

「………………」

 しぶしぶ間宮が起き上がった。

 少しほっとして、俺もベッドから出た───。


 * * *


「なんか共倒れな感じがする」

 学校での休み時間、佐々木を見つけて、俺はそっと言ってみた。

「間宮と?」

「うん」

「別れるの?」

「別れないけど」

「なんだよ。のろけ話か」

「のろけじゃなくて。なんか間宮が不安定なんだよ」

 どうしたもんかと俺は聞いた。

「お前が注目されるのが不安なんじゃないの?」

「注目なんかされてない」

「お前はいい加減、自分の容姿に対する自覚を持て」

「自覚ってなんだ?」

 不思議がる俺に佐々木がため息を付いた。

「まぁいいけど……もう少し好きだアピールしたらどうだ?」

「してるよ。将来の話もしてる」

「将来ってなんだ……? もう少し甘い話でもしろよ。固いんだよ」

「……固い?」

 俺は眉をひそめる。

「もっとイチャイチャするか、それか他のやつに絡まれたら断固拒否するとか」

「うーん……」

 俺はさらに眉をひそめる。


 わからない。


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