第7話(五)

 結局、藤井先輩がごはんおごってくれて、クレーンゲームでとったぬいぐるみを3体俺に押し付けて、藤井先輩が「またねー」と手を振って帰って行った。

「………」

「………」

「………」

 間宮と佐々木と顔を見合わせ、合わせたようにため息を吐いた。

「なんだってあんなポスター貼ってあるんだ?」

 佐々木がずっと疑問に思っていたであろうことを聞いてきた。

「ちょっと今、天音さん……いとこなんだけど写真撮った本人に連絡取ってるんだけど、仕事中なのか返信届かなくて……」

 間宮がスマホ片手に言った。

「藤井先輩、学校に告げ口したりはしないだろうけど、バレたらバレたで後が面倒だろう」

「あんま知られたくないかも」

 佐々木の言葉に、俺が本音を伝える。

「つーか、そのぬいぐるみどうにかしろよ」

「しょうがないじゃないか、藤井先輩が渡してきたんだから」

「とりあえず帰る?」

 佐々木の突っ込みに答えてると、間宮がまとめてくる。

「だな」

「なんか疲れたな」


 ───俺と間宮がバスに乗ろうとバス停にいくので、駅から電車の佐々木とは別れた。

「すぐバス来そうだな」

 時刻表を見ながら、間宮に言うと、間宮は困ったように笑って、

「本当は二人きりでデートしたかったんだけどな」

「また後でな」

 俺は言ってから、

「ところで行きたかった場所ってどこだったんだ?」

 聞いてみると、間宮は少し黙ってから、耳元に顔を近付けた。

「な、んだよ?」

 ちょっと動揺していると、間宮が意味ありげに笑いながら、低い声でつぶやいた。

「───アダルトコーナー」

 ぎょっとして、間宮を見た。

「……いろいろ、真純と見たかったんだけど」

「……な、何言ってんだよっ」

 こっちもいろいろ思い出してきて、それを振り払うように、怒鳴った。カッと全身が熱くなる。

「……おもちゃとか、買って上げたくて」

 あまりにもな言動に、俺は間宮の胸板を押して距離を取ろうとした。

「……ば、ばかっ、そんなの制服でかえるはずないだろ!」

 幸いにも近くには人がいない。

 ───でも、と思う。

 恥ずかしくなって、うつむいた。

「じゃあまた違う日に来ようね」

 間宮がいけしゃあしゃあと言った。

「行かないよ!」

 ふざけんなっと、にらむと、

「そう言うと思った。───佐々木も、真純は意外とお嬢だから止した方がいいって言ってたけど」

「お嬢ってなんだよ! 激しく日本語間違ってるだろうが!」

 ぎゃあっとなっていると、間宮は堪えた様子も見せずに、

「行きのバスの中でさー、女の子来たとき、真純妬いてたでしょ?」

「お前はもう黙ってろ!」

 怒ってるのに、間宮はすごく嬉しそうなのが、

 もうっ!


(腹が立つ!)


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