第7話(ニ)
うちに連絡してから、俺と間宮、佐々木とそれと───藤井先輩とでバスに乗った。
(……なんだこのメンツ)
間宮と並んで席について、なんなんだろうと思う。
ちなみに堀は藤井先輩の言付けで部活関係の用事があるらしくまだ学校だ。
「どこ行くつもりだったの?」
後ろの席から藤井先輩が聞いてくる。藤井先輩の横に佐々木が座っていて、珍しい組み合わせだった。
「……どこって」
俺は間宮を見た。
「いや、行きたいとこあったけど後にする」
間宮がおずおず口にする。
「そう? じゃあゲーセン行く? 奢るよ」
「奢んなくても」
藤井先輩の申し出に俺は戸惑った。
「いいよ。お小遣い使い道ない感じだったし」
「藤井先輩確か大きいお寺の息子だったですよね」
佐々木が割って入ってきた。
「甘えてもいいんじゃないか?」
「いや、でも」
「いいよ、甘えてよ。先輩なんだし」
「……はぁ」
藤井先輩の言葉に俺は間宮と目を合わせてからうなずいた。
つーか、佐々木は全生徒の家の仕事知ってんか、と疑問に思ってしまう。
───しばらくバスに乗っていると、三人の女子学生が乗ってきた。
高い声で楽しげに話しながら空いてる席についた。
───ふと、
そのうち一人がこっちを見て、なにやら他の二人に言っている。三人が一斉にこっちを見た。
「うち一応進学校だから目に付くよね」
藤井先輩が後ろから言ってくる。
ぽかんとする俺を余所目に藤井先輩が女子学生に手を振る。
きゃあ、と歓声が上がる。
(おいおい)
「女の子興味ないの?」
(……だから)
藤井先輩の言葉に、間宮と付き合ってるの知ってるくせに何言ってるんだろうと思う。
だから、
「よくわからないです」
と、返す。
少ししてから女子学生の一人がこっちにきた。
(……え?)
通路側の間宮の前に止まり、声をかけた。
「あの、名前教えてくれませんか?」
「え?」
間宮が聞き返す。俺はその女子学生を凝視した。
「いや、その……」
ちらりと俺を見てから、間宮が口を開いた。
「俺付き合ってる人いるから」
それを聞いて女子学生が「すいませんっ」と言って去って行く。
呆然としてる俺に、間宮は困ったように笑う。
(……しまった)
最近間宮は髪を整えて眼鏡を外しているイケメンモードだ。
(女の子にモテるんだ───)
「女の子の方がいいんじゃないの」
藤井先輩が言うのを煩わしく聞いたが、顔には出さずに、
「そうですね」
と、返していた。間宮が意味ありげに俺を見る。
「藤井先輩に来なくて残念ですね」
佐々木が後ろで言うのが聞こえた。
「俺もモテるよ」
いけしゃあしゃあと藤井先輩が言っていた。
「……俺」
気を紛らわすように会話に入った。
「ぜんぜんモテないんですよね」
「……………」
「……………」
「……………」
沈黙が返ってくる。
なによ。
「真純はモテるのに気がつかないし、女の子は女の子で真純がきれい過ぎるから引いてるんだと思う」
間宮が言うのに、はぁ? と思う。
「なんだそれ」
「……自覚ないんだ?」
藤井先輩がポツリと呟いている。
「周りはそれで苦労してるんですよ」
佐々木がバッサリ言っている。
なによ。
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