第7話(一)

 ───天音さんが学校に会いに来て、あわただしく俺のことを写真に撮って(今度は花まみれだった……なにやら花の形をしたアクセサリーをつけさせられた……)、「じゃあね!」とあっけなく東京に帰って行って数日───、

 テストも終日をむかえてほっとした放課後、教室に間宮が迎えに来た。

「今日、街の方遊びに行かない?」

 そう言われて、びっくりした。

「珍しいな……お前がそう言うの」

 いつもは───その、ずっとうちに来てるのに。

 そのままお泊まりコースなのに、と少しその後のことを思い出しながら赤くなっていると、間宮がニヤリとして、

「泊まるけど、たまにはデートもいいと思って」

「デートって……」

 なんだそれは。

 さらに赤くなっていると、

「街行くの? 俺も行こうかな」

「ぎゃあ! 藤井先輩?!」

 急に沸いて出た藤井先輩にびっくりして叫んでしまう。

「ど、どうしたんですか?」

 動揺しながら、さりげなく間宮の前に入りガードした。

(また間宮にキスなどされたら堪らない)

 いつぞや藤井先輩がしたことを思い出し、間宮への壁になっていると、

「……真純……あべこべだから」

 背後から間宮が静かに突っ込んだ。

 何があべこべだ。スキがあるんだよ、と後ろを睨み付けた。

 視線を藤井先輩に戻し、

「街にって……受験生なんじゃないですか?」

 遊んでていいのかよ、と思いを込めて聞いてみた。

「テストも終わったし、息抜きだよ。その前に堀に言うことあるんだけど」

「堀なら日直で職員室行ってるはずで……」

 いない堀を探して教室内と廊下を見た。

「言付けなら俺聞いときますけど」

 で、さっさと帰れ、と無言の圧力をかけた。

 藤井先輩は面白そうに俺を見ながら、気にした様子もなく、

「いいよ、待ってる。一緒に遊びに行こうよ。あ、その前に荷物持ってくるね。待ってて」

 ひらひら手を振って藤井先輩が教室を出て行った。

「………………」

「………………」

 唖然として見送ったが、俺は間宮を振り返って見上げた。

「……どうする?」

「どうするって……待ってないと後々面倒なんじゃ……」

 間宮も戸惑った様子で俺を見下ろした。

 試験終わりの解放感がしぼんでいく。

 せっかくの間宮とのお出掛けなのに、と少し残念に思ったのは───間宮には内緒だ。

 呆然としてると、

「何ぽかんとしてるんだ?」

 堀が戻ってきたようだった。一人ではなく佐々木も後に付いてきていた。

「今日デートなんだろ? 何浮かない顔してるんだ?」

 からかうような佐々木に憎まれ口を言い返そうとしたが、素直に現状を伝えてしまう。

「……実は藤井先輩が……」

 伝えると、堀は「部活のことだな」と納得顔だったが、佐々木は思案げに、

「あー……なんなら俺も行こうか?」

 俺と間宮が佐々木を見る。

「そうしてもらう? 真純」

 間宮が言うのに、俺も甘えようかなと思ってしまう。

「うん」と俺はうなずいた。

(まったく)

 ───どうなることやら。

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