第2話(五)

 腕を引っ張られて、椅子に投げられるように座らされた。

「っ、って何!」

 乱暴な動作に文句を続けようとしたが、いきなりシャツのボタンを外しにかかられる。

 ……待っ、

「待てっ、何考えてんだよっ」

 学校だっての!

 素早く前をはだけられる手を俺は止めようと払おうとしたが、その手をおさえられた。

「……なんで抵抗するの?」

「は……?」

「先輩相手には抵抗してなかった」

「それはっ、藤井先輩はただの嫌がらせで、お前のは本気だからだ!」

「……嫌がらせって、どこから出てきたの?」

「どこからって……っ」

 説明すんのめんどくさいなっ、と内心唸ってると、胸の先端を掴み上げられた。同時に首筋を強く吸い付かれる。

「……っ」

 ───変な感覚が下肢にくる。

「ちょっ、ちょっと待……っ」

 これまずい、と慌てて逃げようとしたが、首から胸元まで何度も吸われたり舐めたりしながら、グリグリ先端をいじられる。抵抗しようとする力が抜けていった。

「や、止め……」

「こういう事もずっと許してくれなかった」

「……っ」

 だから、それはっ……。

 カッときて、間宮のすねを蹴り上げた。

「っ……!」

 不意打ちを食らって、間宮が身を離す。

「それはっ、お前にも原因あんだろっ!」

「何それ……」

 わけがわからないと言う顔で、呆然とする間宮に、ぶちまけるように俺は叫んだ。

「女の子扱いしてっ……俺、男なんだよ!」

「……? どういう事? 知ってるよ、そんなこと」

 言いながら、間宮が俺の下肢を握り込んできた。

「……っ」

「ちゃんとわかってるよ。なんで今さら」

 反応を見せるそこを執拗に擦ってくる。

「……あ、ぁ……まみ……」

 待って、と動く手を押さえようと伸ばした手を無視して、俺に噛み付くように口付けできた。この日始めてのキスで、駄目だと思いながら流されそうになり、思考がぐちゃぐちゃになる。

「……っ、ぁ」

 助けを求めるみたいに、俺は間宮の首に腕をまわした。

「─────」

 一拍置いてから、間宮が俺のベルトに手をかけた─────瞬間、

 ガラリと扉が開いた。

「……!」

 間宮と二人で入ってきた人物を凝視した。

「───何やってんだ」

 渡辺先生だった。

 ぽかんとした顔でこっちを見ていて状況を探っているようだった。

 と、間宮が小声で「すいません……」とつぶやき、準備室から出て行ってしまった。

「─────」

 先生と残されて、しばらく経ってから───、

「……そういう事は、学校でするんじゃないよ」

 のんびり諭すように渡辺先生は、口にする。

「……………っ」

 教師なら他に言う事あんだろっ!

 突っ込みを入れたかったが、噛み殺して「すいません……」と間宮と同じくつぶやいた。

「あと服もちゃんとしなさい」

「……っ!」

 言われて慌てて外れたボタンを直した。……かなり恥ずかしいぞ、これ……。

「そういう事に教室使うなら、もう貸せないぞ」

「───わかってます」

 今までのことも思い出し反省してると、

「───落語研究会、続けたいんだけどなぁ、僕」

 再び、のんびりつぶやく先生に、俺も再度思う。

 ───他に言う事あんだろっ!





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