10 感情を感情で呪って

 光。

 瞼を開いた楓の目に最初に飛び込んで来たものは蛍光灯の光だった。

 自分の体に何かが貼り付いている様な違和感を感じる楓。

 彼女は今、自分の置かれている状況を確認するため、目を細めながら辺りを見回す。


(ここは、私の部屋……? 私は家に戻って来ている……?)


 と、ベッドにで横になっている楓の側から、


「楓! 起きたか!」


 その声の主は金髪の長身の女性、三島瑠奈であった。


「瑠奈……」


 自分が自宅に戻って来ているのだと気付き気が緩む楓。

 彼女が寝ているベッドの隣で、瑠奈が座っていた椅子から立ち上がり楓の顔を覗き込んだ。


「それで体の具合はどうだ?」


 心配そうに尋ねる瑠奈の言葉を受け楓は直ぐに意識を集中させ自己診断を行う。


「消耗はまだしていますが、それ以外は問題無いようです」

「ああ、よかったよ……」


 ほっと胸を撫で下ろす瑠奈。

 一方、心を落ち着かせた瑠奈に反して楓の心は心配事でざわついていた。


「瑠奈、真依は……それに楠さんに長谷川さんが無事かどうか分かりますか?」

「三人共無事だよ」

「本当ですか……良かった」


 瑠奈の言葉に楓も自分が抱えていた懸念が解決され、安堵の息をつくのだった。


「ところで、瑠奈。 私の体に付いているこれは?」


 ほっとしたところで楓は自分の体に貼り付いている物の正体を瑠奈に尋ねた。


「ああ、研究施設から受け取っていたお前の状態を診断する装置さ」


 瑠奈の指差す方を向くと楓の部屋に不似合いな医療機器らしき装置があり、そこから伸びる線が楓の体に貼り付いているパッドと繋がっていた。


「それでお前の体を診たところ、体の損傷は特に無く最大稼働の消耗による一時的な強制休眠らしいと結果が出たから施設の職員と連絡を取り合いながら経過を見ていたんだ。

 だがお前が中々起きないもんだから、その装置の結果を疑って、そろそろ施設に直接連れて行こうかと考えていたぞ」


 相当気を揉んでいたのか、ベッドの横に置かれた、瑠奈が座る椅子の場所まで延長コードが延びており、そこへ差さった充電器に繋がったスマートフォンを瑠奈がその手にしっかりと握っているのを楓は見逃さなかった。


 楓はふと、閉められているカーテンの向こう側から、部屋へ射す光が少しも無いことに気付く。


「瑠奈、私が意識を失ってからどれくらい経ちましたか?」

「四、五時間程かな?」

「四、五時間……!?」


 楓は驚いた。

 研究施設にいた頃の以前の自分では、意識を失うほどの消耗がそれだけの時間で回復するなど考えられなかったからである。 


(私も成長している、ということですか)


 彼女は自分の身に起きている確かな変化に気付く。

 そして、その変化は彼女がツヴァイを追い始めてから最大稼働を使う必要に迫られた危険な戦いが続いてきたという証明でもあった。

 楓が己の成長を実感していると、瑠奈が質問を投げ掛けてきた。


「それで、意識を失う程、消耗した原因は何なんだ、楓?」

「ツヴァイです」

「やはりそうか……何があったか私に教えてくれ」

「ええ」

 

 楓はスクラップ置き場跡で起きた事のあらましを瑠奈へと話しだした。


「あのスクラップ置き場跡でイルフが突然暴走しだしたんです。 原因は勿論ツヴァイです。

私は最大稼働を用いてそれを撃破。 その後、発見したツヴァイと接触しましたが最大稼働の反動と消耗で意識を失いかけていた私はそのまま弟を取り逃がし、そして強制的に休眠状態に陥ってしまいました」

「成程な」


 一部始終を聞き終え頷く瑠奈。

 楓は話を終えた後、今度は瑠奈の方から話を聞きたげな様子だった。


「瑠奈、私も聞きたいのですけれど私が意識を失ってから何がありましたか?」

「一ノ瀬さんが警察を呼んだんだが、その時に外出中の私にも連絡があってね。 で、車で出かけていた私はお前の体に内蔵されている発信機の信号を辿りながら、お前を迎えに行ったのさ」


 すると楓にある疑問が浮かぶ。


「私は警察に見つからなかったのですか?」

「お前の力を見た楠さんと長谷川さん曰く、このまま警察に見つかったら自分達と三島さんが絶対面倒臭い目に遭うから、ってことでお前を連れてスクラップ置き場から出て行ったんだとさ。

 自分達が三島さんの力のことを知るための機会も失ってしまうから、ともな」


 瑠奈は図らずも自分達にとって都合が良い結果になったとはいえ、飛鳥と凛のあの場での決断と行動力に呆れて苦笑した。


「じゃあ、二人から私の事についてかなり質問されたんじゃないですか?」

「ああ……激しく追求されたよ。 思い出しても胃が痛くなる……」


 げんなりとした表情になり記憶を思い返して青ざめる瑠奈。


「それから後日改めてちゃんと事情を説明する、と伝えて二人には一度帰ってもらったよ。

 で、お前をこの部屋のベッドに寝かせて研究施設から受け取っていたお前を診断するあの装置で状態を確認してたんだ」


 瑠奈は再度、楓の状態を診断している医療機器らしき装置を指差した。

 

「そうだったんですね……」


 意識を失ってから起きた顛末を聞き、真依と飛鳥と凛が無事家へ帰る事出来たのを知って、楓は先程以上に強く安堵した。

 と、瑠奈が、


「一ノ瀬さんには感謝だな」

「真依と連絡先を交換していたんですね」

「ああ、初めて一ノ瀬さんと会った時に彼女の連絡先を聞き出す目的でだったんだがな。

 それが結果的にお前の危機を救うことになって人との繋がりってのは作っておくべきだな本当って心底思ってるよ」


 しみじみと呟いた瑠奈の言葉を聞き、自分が無事自宅へ帰って来られたのは多くの人の助けがあってのものだと、楓も身に染みる程感じているのであった。

 

 楓はもう一つ尋ねたい事を瑠奈へ聞く。


「瑠奈、ツヴァイがどうなったかは知っていますか?」

「奴ならこの町を出て行ったみたいだよ」

「弟の行方を知っているんですか……!?」


 予想外にツヴァイの明確な場所を把握してそうな瑠奈の返答へ楓は驚きの声を上げる

 しかし、


「いや、詳しい場所までは分かってない。

 楓、ツヴァイの体にもお前の発信機と同じ物が内蔵されているのは知っているな?」

「ええ、ですが弟の発信機はある日を堺に信号が不安定になり、まるで機能していなかったはずでは?」

「ああ、それがだな、お前が意識を失ったタイミングで奴の発信機の信号が突然、明瞭なものとなってこの町から離れて行ったんだ。

 それから暫くの後に再び信号は不安定なものとなってしまったがな」

「どういうことでしょう?」

「さてな。 奴の意図も、どういった手段で自在に信号を撹乱しているのかも分からん。

 私達の知らない能力に目覚めていて、それを用いて信号を撹乱している、なんて話もある。

 その能力がツヴァイが暴走させたイルフの近くでスマートフォン等の機能が麻痺する理由ではないか? あるいは、掌握の副次的な効果ではないか? ともな」


 瑠奈はまるで把握することが出来ていないツヴァイの現状に頭を悩ませ、腕を組み眉根を寄せた。


 瑠奈がツヴァイの事について話した後、ややあって楓が瑠奈へ言葉を掛ける。


「瑠奈、もう一つ報告しなければならないことがあります」

「何だ?」


 暫し何かを躊躇う様に視線を落とす楓。

 それから彼女は心を決め瑠奈へ目を向けると、自分をモニターする装置の音だけが小さく鳴る部屋の沈黙をその口で破る。


「私は、人を本気で殴ろうとしてしまいました」

「……おい、ちょっと待て。 マジで言っているのか、それは?」


 それは瑠奈にとって衝撃の報告であった。

 楓の報告を聞いた瑠奈はにわかに狼狽えだす。


「はい……私がある他校の生徒達との喧嘩に巻き込まれた事は真依から聞いていると思いますが、その生徒達に真依を人質に取られ、目の前で長谷川さんを好き放題嬲られ、私は怒りで我を忘れて人を本気で殴ろうとしてしまいました……」


 楓の報告の内容を聞き眉間に寄せたしわへ指を当て黙って何かを考える瑠奈。

 彼女は険しい視線をベッドの上の楓へ向ける。


「……この事については本気で言わせてもらうぞ。 何やってんだお前は!?」

「すみません……」


 瑠奈の怒鳴り声の迫力と自責の念で楓の謝罪は消え入りそうな声によるものとなってしまった。

 だが、瑠奈の激しい叱責は終わらない。


「お前は兵器だ! そのお前が本気で人を殴るという事はミサイルや大砲で人を撃つのと同じだって事だぞ!? 分かってんだろうな!?

 それで人を殺してみろ! 任務が中止になるどころか、間違いなくお前に廃棄処分が下るぞ!!」


 楓が他校の生徒へ行おうとした事、それは楓が廃棄処分にされる以上の問題に関わりかねない行為であった。

 楓は瑠奈の叱責を重く受け止めスクラップ置き場跡での事を悔恨していた。

 己を本気で戒めたくなる程に。


「申し訳ありません……

 強制休眠に陥りツヴァイは目の前で取り逃がす。 感情をコントロール出来ずに人を殺しかける。

 本当に出来損ないの駄目イルフですね、私。 自分でも全く、と呆れてしまいますよ。

 今、出来るとするなら自分で自分を締め上げたくなる程です……

 何で私には感情なんてものがあるんでしょね……? こんなもの無ければ良かったのに……」

「……」


 今、正にその感情で自分に不甲斐なさを感じ自身を責め立てる楓。

 普段の楓からは全く想像出来ない己を責める弱々しい姿に瑠奈は心中から楓を叱責する気持ちがサーッと引いて行くのを感じていた。


(全く……お前も甘い奴だな、瑠奈)


 瑠奈は逆に自らを心の中で叱ると打って変わって落ち着いた声で楓に話し掛けだした。


「殴ろうとしたってことは殴ってはいないんだな?」

「はい、相違ないです」


 瑠奈の言葉にベッドで横になりながら頷く楓。

 楓が肯定した後、瑠奈は小さく溜め息を吐くと、


「楓、ツヴァイを取り逃した事と怒りで我を忘れて人を殺しそうになった事は間違いなく大きなしくじりだ。 特に人を殺しそうになった方は弁解の余地もない。

 だが、それで必要以上に自分を蔑み自分の感情までも呪うのはよせ。 お前はその感情で一ノ瀬さんという大切な友達を得ることが出来たんだろ?」


 瑠奈は自虐をする楓を宥めようとした。

 しかしベッドで横になり天井を見つめたままの楓の表情は硬く、彼女の目は酷く冷めていた。


「友達なんて兵器には不要です。 感情だって任務の妨げにしかなりません」


 感情を切り捨てようとする楓の言葉には返って自分の感情を恨めしく思うような想いが籠もっていた。

 そんな楓が瑠奈の目には自暴自棄になっているように映り、自分の叱責は道理の通ったものだったと思いつつも楓の事を不憫に感じてしまうのだった。


「確かにお前は兵器だ。 だがな、お前は友達である一ノ瀬さんを大切な存在だと思っているんだろ?

 以前、廃棄処分になって一ノ瀬さんと別れることになるのは絶対に嫌だとお前が言ったのを私ははっきりと覚えているぞ。

 それに我を忘れる程怒ったのは一ノ瀬さんと長谷川さんのことが自分にとって大切な存在だったからだろ?」


 瑠奈の問い掛けに楓はただ天井を見つめたままであった。

 瑠奈は構わず続ける。


「大切な人のために怒れるお前は同時に大切な人のために優しくも出来るはずだ。 それはきっと巡り巡ってお前に良い形で返ってくる。

 例えばまた新しい大切な人が出来てその人達と楽しい思い出を作る事が出来たり、とかな。

 だから自分の感情と友達を大切にしてくれ」


 瑠奈の言葉を聞いて楓は見つめていた天井から瑠奈へと視線を向ける。

 その視線は瑠奈へ縋る様な期待の眼差しであった。


「兵器として任務を行うための邪魔になってでもですか?」


 楓は瑠奈へ抑揚の無い声で質問を投げ掛けた。

 だが楓の心中にあったもの。

 それはこの質問を否定してくれという強い祈りの様なものだった。

 そして瑠奈は楓の眼差しを真正面から受け止め口を開く。

 

「再三言っているがお前は確かに兵器だよ。 だが私はお前に頭の天辺から爪先まで無感情な兵器に成り切って任務を行ってもらおうなんて思ってはいない。

 現在のお前の直接的な管理者である私がお前を徹底的に兵器として任務に当たらせるつもりなら、『アインスがどこまで人間らしく振る舞えるかの実地試験です』だのなんだの舌先三寸で本社の連中を丸め込んでツヴァイ捕獲の任務と同時にお前を学校へ入れさせる、なんて事をそもそもしてないよ」


 肩を竦め苦笑を浮かべる瑠奈。


「それから感情が任務の邪魔になるというが、邪魔になるどころかお前の優しく他者を労る気持ちとそこから来る気遣いはお前の管理者である私を何度も助けて任務に貢献しているよ」

「本当ですか……?」


 あえかな声で楓は瑠奈の言う貢献について問う。


「ああ、単に私の心身を労ってもらっているってだけじゃない。 楓が私を心配してくれたから私は楓に警察署でイルフの襲撃から助けてもらい今もこうして無事仕事に就けている。

 そうじゃなかったら今頃この任務がどうなっていたかは分かったもんじゃない」


 瑠奈の話を聞くうちに弱々しかった楓の目へ次第に力が戻ってくる。

 瑠奈は話を続ける。


「で、お前の感情を穏やかにして任務に意欲を出してもらうためにリフレッシュさせるとするなら友達と遊ぶ事はお前にとって何よりのリフレッシュだろ?

 そういうことだから少なくともここで生活している間はさっきも言った通り自分の感情と友達を大切にしてくれ」


 楓の中に激しい感情が湧き始める。

 しかしそれは、先程までの自分に対する怒りや自暴自棄な感情ではなかった。


「そして、それは任務のためだけじゃない。

 前にも言った通りお前に幸せになってもらいたいっていうのが私の願いだからだ」

「瑠奈……」


 瑠奈の優しい宥めによって楓の中に生まれた感情、それは瑠奈への激しい感謝の念だった。

 今にも堰を切り表へ溢れ出そうな激情を楓は辛うじて堪えていたのだった。 


 瑠奈は楓へ穏やかな笑顔で微笑みかける。

 が、瑠奈はその微笑みをニヤリとした笑みに変えると、


「ただしその上で任務は全うしてもらうし禁則事項は厳守してもらうがな」

 

 楓の中の激しい感情を見透かしてか、彼女をリラックスさせるように瑠奈は重要なはずの事をわざと悪戯っぽい口調で喋る。

 すると楓は苦笑して、


「難しいことを言いますね……本当に困難な任務です」

「お前ならやれるさ」


 瑠奈の言葉は上辺だけではなかった。

 楓を信じる心の底からの言葉であった。

 と、瑠奈がまたもやニヤリと笑う。


「あとそれに追加で今度はクソ野郎にブチ切れる前に深呼吸を六秒すること、いいな?」

「拳を納める事は厳守しますがビンタくらいなら許されますか? 黙って好き放題やられるのはやっぱり腹が立ちますので」

「十分に加減をしてな。 お前ならそれでもクソ野郎共との格の違いを思い知らせる事が出来るよ」

「分かりました。 これで今度はスッキリ出来ます」


 二人はお互いの冗談に吹き出して笑うのであった。


 +++++


「瑠奈」


 いつもの優しい声で瑠奈の名前を呼ぶ楓。

 楓は瑠奈が自分の心に落ち着きを取り戻してくれた事と、いつも自分に思いやる言葉を掛けてくれる事への大恩を感じていた。

 それと同時に楓はそのような瑠奈の気遣いに疑問も感じていた。


「瑠奈はどうしてここまで私に良くしてくれるんですか?

 私を本気で叱ったり優しく宥めてくれたり……」

「んー……仕事だからってのもあるんだが――」


 瑠奈は椅子に座ったまま身を前へと乗り出して自分の過去を語り始めた。


「十年程前かな。 当時、私の母は色々な事が重なってずっと体調を崩していたんだ。

 そんな母を見かねた私の父は母の仕事と家事を手伝わせるために家庭用向けのイルフを何体か購入したんだ。

 その後、療養に努められた母は無事、体調を回復することが出来たんだよ」


 遠い目をして思い出を振り返る瑠奈。


「それにな、そのイルフ達は忙しい中、私の遊び相手になってくれたり勉強を見たりもしてくれてね。 本当そのイルフ達には感謝しているよ。

 という訳で私はイルフの事が好きなんだ。 このイルフ関係の仕事に就いたのもそれが切っ掛けかな」


 自分とイルフの過去を話すうちに瑠奈は再び穏やかな笑みを浮かべる。

 楓は瑠奈に視線を向けて黙って彼女の話を聞いていた。


「それが一つと、もう一つは――」


 瑠奈は話の途中で僅かに間を置いた。

 これから話す事が楓本人の前だと少し照れくさくなってしまう話だったからだ。


「楓、お前は覚えているかな? お前達姉弟の何度目かの評価試験の顔合わせで私は施設の資料の紙で指を切ってしまったんだ。 その時、お前は自分の事のように私を心配して早く治療しないとって慌てふためいてね。

 周りの職員に消毒液はないか? 絆創膏はないか? って聞いて回ったんだ」

「すみません……よく覚えてないです……」


 瞼を少し閉じた状態で気まずそうに細い声で返事をする楓。

 ところが瑠奈は自分が話した過去について楓が記憶していなかった事をまるで気にしていない様子であった。


「だろうな、ほんの些細な事だったから。

 でもお前の記憶にすら残らない程、些細な事でお前は私を本気で心配してくれたんだ。

 驚いたよイルフがここまで感情を持つことが出来るのか、ここまで人間のためを思って行動出来るのか、ってね」


 瑠奈は自分の記憶を遡るように視線を上へと向けた。


「それからかな、なんとなくお前達姉弟のことを会社の商品としてではなく心を通わせる事ができる個人として見るようになったのは」


 と、瑠奈は恥ずかしそうに楓から顔を背けて、


「まぁ、そんな訳でその頃から私はお前を……あー、いい奴だと思って気に入っているというか何というか……ん?」


 瑠奈が再び楓に視線を移した時、楓はスースーと安らかな寝息を立ててぐっすりと眠っていた。


「おやおや」


 自分の話の途中で墜ちる様に眠った楓に、瑠奈は少し呆れて、そして微笑んだ。


「おやすみ」


 瑠奈は楓に小さく言葉を掛けると延長コードに繋がった充電器を取り、椅子から静かに立ち上がって部屋のドアへと向かい歩きだす。

 すると、瑠奈はふとある事に気付きベッドの上で眠る同居人の方へと振り返る。 


「それとお帰り、楓」


 そう囁き瑠奈は廊下へと出て楓の部屋のドアを優しく閉じた。


つづく

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