閑話 神聖教誕生 2
仏教宗派は多岐にわたる。特に日蓮宗と浄土真宗は仲が悪く、衝突することもしばしばであった。幾度かの紛争により、林宗ら日蓮門徒が京から追い出されたのちも、諍いは続いた。
それも富子の乱までのこと。
時の将軍足利義尚が近江の陣中で没した。かの御人は熱心な一向宗門徒であったので、我々としては僥倖というほかなかった。宴までしたほどである。
次の将軍と目される足利義視は天台宗の元僧侶。これまでのように一向宗がひいきされることもあるまいと、日蓮門徒は舞あがった。
雲行きが怪しくなったのは将軍殿没の報から幾らもしない日のことであった。
京との連絡がとれない。憎き一向宗どもに寺を焼かれたあとも京に残った日蓮門徒たちはいる。彼らから京の情報を得ることが常であった。ところが約束の期日になっても死者がこない。これはおかしいとこちらから使者を派遣するも帰ってこない。
なにやら騒動があったらしいと、京と信州を行き来する商人から聞いた。
なにがあった。お家騒動か。まさか慈恩寺殿が復帰なさるのか。ではなぜ使者が帰ってこないのだ・・・
いっこうに真相がつかめぬ日々をおくっていた。
早朝に強烈な揺れで目を覚ました。いら立ちながら目を開けるとひどい形相の友がいた。
震える声で、一言。
「守護の軍勢が、攻めてきた。」
わけもわからぬまま寺院を飛び出すと、本堂が焼けていた。
友人に引っ張られながら大木の洞に入り、息を殺した。
見知った顔が野蛮な具足どもに殺されていく光景を眺め続けた。
法話にあった地獄とは、こういう世界だろうか。
※
あれから随分と時が経った。周辺の寺院は全滅のようだ。
大勢の僧侶が殺され、逃げ出すことに成功した我々も苦杯をなめた。山麓の村に逃げ込んだ僧侶は殺された。守護の軍勢が村ごと焼き払っていった。
まちに逃げ込んだ僧侶は殺された。傷ついた町人を手当したところ、報奨金目当てに当の町人から密告されたらしい。
信濃守護の突然の凶行に我々は慌てふためいた。どうすることもできない。
武力を抱える寺は僧兵ごと焼かれ、富を築いた住職は身ぐるみはがされて川に流された。
「三万PV感謝」戦国記 因幡に転移した男 山根丸 @yamanemaru55
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「三万PV感謝」戦国記 因幡に転移した男の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます