第12話

シーン2 side つくも


少しだけ意識が戻ってきたことで体中に痛みを感じた。

ただ痛みがあるという事は動かす事が出来るかもしれない。

そう思って少しづつ動かせそうな箇所や損傷がどの程度か或いは本当に何かに挟まっていないのかを予測しながら腕や足が無事なのかを先ずは感覚で探ろうとした。

「まさか今更、こんな所爆破する奴がいるとはね」

そうやってまだつくもが状況を確認している間も誰かの声が近くではっきりと聞こえてきた。

幸い痛みがあるものの瓦礫に挟まって動けないとか酷い怪我とかは無さそうだった。

それから改めて相手が発言していた言葉について考えてみる。

それを素直に信じるのならこの声の主はアイツとは無関係とみてもいいのかもしれなかった。

「あなたは誰」

とは言えそれをまだ断定はできないので警戒しながら相手の素性を問う。

その間に上半身を起こして薄く目を開ける。

半分思っていたが辺りは光が入らないのか暗くてほとんど何も見えない事が分かった。

ただ、最後に手に握っていたサーベルだけは意識が途切れても手から離さなかったのか今もちゃんとそこにあった。

なので仕方ないが今はサーベルを明かり代わりにする他ないようなので迷うことなく電源を入れると鈍い電気の通う音がして直ぐに起動した。

こっちもどうやら壊れていないことにほっとしつつ少しだけ辺りが明るくなったのでようやく現状の確認が出来そうだった。

視界がようやく確保されて辺りを見るとどうやらたまたま瓦礫の空洞に落ちたようだった。

改めて足元を照らすと瓦礫が散乱していて足場が悪い事と持って来ていた手荷物は近くには落ちていないことが分かった。

暫く下側を確認した後で上を見上げると思っていたよりも広い空洞が広がっていた。

それから左右に目を向けると広さはよく分からないがしっかりと瓦礫で塞がれている様に見えた。

これで一応、一命は取り留めたもののまだ助かってはいない事がはっきりとした。

「へぇ。そんなモノ持ってたんだ」

倒れている間に何かしらのチェックはしなかったのかそれともレーザーにつては見落としたのかそんな声が聞こえて声が近づいて来る。

現状の確認ができたのでその相手が近づいてきた気配と声がした方に振り向く。

相手は特に隠れたりこちらを警戒する様子もなく照らした方向から少し離れた場所で立ち止まって立っていた。

よううやく視認したその相手の姿を見て先ず目に入ったのは手にしている武器のライフルだった。

ただその銃口は下を向けていて指も引き金には入っていなかった。

なのでやはり現状では敵対する意思はないのかもしれない。

それから服装は黒を基調としたラバースーツのようなモノを身にまとっていて体のラインが割とはっきりとでる感じだった。

肝心の顔はフルフェイスでおおわれていて見えなかったが声とそのボディーラインから判断するのなら女だと思われた。

「出口はあるのか」

取りあえず今の所、敵意はなさそうと判断して視線を周囲に戻してそう尋ねてみた。

辺りを確認した時から思っていたが周囲がこれだけ暗い割に明かりらしきモノは持っていないようなので顔に装備しているフルフェイスには暗視スコープ機能があるとみた。

そしてつくもよりも早く行動していたのなら既に出口を見つけてはいないか一縷の望みをかけていた。

だが、その首はゆっくりと左右に揺れた。

「残念だけど自分たちでどうにかする他なさそうだね」

落ち着いた口調ではっきりとそう言った。

現状、助かりそうにないと理解していながら話始めてから感じていた違和感。

そうこの相手からは特に慌てた様子やこの状況に対しての怯えが見えない。

「それじゃあ、どうやって助かる気だ」

とは言え、自力で助かる見込みが無いのであればこの状況をどうするつもりなのか。

そう思って相手に詰め寄ろうとしたが別にこの状況になったのは彼女の責任ではないので声を荒らげた後で「すまない」と直ぐに謝って後ろに下がった。

「まあ、慌てるよね普通」

そんな此方の様子すら余裕で見届けて彼女は腰に付けていたポーチから何かを取り出した。

急な行動に一瞬警戒したが取り出したそれを目の前で軽く折るとどやらそれは発光式のペンライトだったらしくそれをこちらに投げてよこした。

「それも使えるかもしれないからエネルギーは無駄にしないようにね」

投げたと言っても全然飛距離が足りなくて地面に転がったペンライトを瓦礫に落とさないように拾い上げる。

その瞬間にも細かい瓦礫が崩れたので見えている足場もちゃんとしている保証はなくもしかしたらここから一歩でも歩いたらそこに穴が開いて落ちる可能性もあるかもしれない。

そんな事を考えながらも言われた通りサーベルの電源を切る。

拾ったライトの明かりはサーベルに比べると劣るがそれでも近くの周囲を十分に照らせていた。

彼女の方は相変わらず何も持っていないのでやはり暗視スコープ付きなのだろう。

「それでこれからどうするんだ」

彼女の余裕ぶりからすれば流石に何も考えてませんはあり得なさそうなのでそう尋ねる。

「少し待ちましょうか」

少し予想とは違ったがそう言うなり瓦礫の上に座ってしまった。

待つという発言に疑問を感じたが少し考えてもしかしたら外に仲間がいるのかもしれないと言う可能性に気が付く。

そしてかりに彼女が発振器も所持しているのならこの場所をその仲間が見つけてくれる・・・そんな所なのかもしれない。

「所であなたは何でこんな所に居たの」

此処は住み分けされた居住区ではなくかつて放棄された外界。

しかしこの場においてそれは相手にも言える事でもある。

「それはお互いにではないか」

まだ、相手が何のために行動しているのか分からないのでこちらも迂闊なことは言わない。

「そこを言われると確かにそうなんだよね」

こうやって話をしていると彼女の発言は何処か意思が軽い気がした。

聞く気があるようで興味は無い。

そんな様子が言葉から見て取れるようだった。

「いやーこんな時なんて聞いたらいいのか私にはやっぱり分かんないや」

どうやらこちらの事情を聞きだしたい気持ちはあるがそれをどやって遂行するのかを考えるのは苦手なのかもしれない。

ただそれはつくも同じでどんな風に聞くべきか考えてみたが何も浮かばなかったので結局、思いついたまま聞く事にした。

「お前は何か組織で動いているのか」

勿論、こちらも答えないなら相手からも特に何も教えてはこないだろうと思いつつ聞いている。

「あー・・まあ、この格好をみればそう思うよね」

そう言いながらライフルを瓦礫に立てかけて置いて両膝を起こしてその上に両腕を置いた。

「違うのか」

「いーや、その通り」

割とあっさりと認められてつくもが拍子抜けしたが向こうは特に気にした様子は見せなかった。

「別に隠す事でもないからね」

やはりどこかあっさりとした感じで言葉が続いている。

「待つと言うのはその仲間が助けに来るという事か」

先ほど思いつた考えが正しいのかそれだけはっきりさせときたかったので聞いておきたかった。

ただ、そうだとしてもつくもを一緒に助けてくれる保証は無いのかもしれないが。

「多分、来てくれると思うよ」

待つことを選択した割には彼女自身その可能性については余り高く見積もっては居ない様子だった。

「来ない場合もあるのか」

「どうだろう。でもまあ、近くには居るはずだから」

彼女の発言から察するのなら元々、数名或いは彼女含む二名以上で行動していて何故か彼女だけ何処からか単独で行動していてこの状況に巻き込まれたとういう事なのだろうか。

「助けが来なかったらどうするつもりだ」

現状で待ちを選択するのならそれが来なかった場合はどうするつもりなのか。

「そーだねぇ・・・暫く待っても来なかったら外に出られそうな所を探そうかな」

答えはどうやら行き当たりばったりのようだった。

「結局そうなるのか」

その場合は協力するのかどうかは分からないがつくもは改めて体がちゃんと動くのか確認を始める。

体の痛みはだいぶ引いてきたのか初めに感じたほどではなくなっていた。

どうやら打ちどころが良かったのか落ち方や落ちた先がよかったのかそんな感じだろうか。

そんな感じで体を動かしていたら後ろから声がかかった。

「その時はよろしくねー」

変わらず軽い感じの声でそれがどの程度の期待が込められた言葉かは分からないがどうやら協力するつもりはありそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る