第3話 仲間
俺は前世における妹との会話を思い出していた。
「ナナミ、このゲームって仲間とかいるのか?」
「いるよ」
「へえ、どんな奴なんだ?」
「そりゃ、爺さんの仲間は爺さんでしょ」
確かにあいつはそう言っていた。
そうか、仲間になるのも爺さんか。
……あんまり期待しない方がいいのかもしれないな。
しかし、今は少しでも戦力が必要だ。
俺のHPは老人の時も若返った時も0・2なのだ。微力であっても仲間のサポートはあった方がいい。
俺は伝説の剣を鞘に戻した。
そうすると俺の若い肉体は、元通りのヨボヨボの爺さんの体に戻っていった。
「──ううぅぅっ」
俺の体はとてつもない疲労感に襲われた。
そうなのだ。俺が伝説の剣を使うと毎回極度の疲労感に襲われる。だからなるべくなら伝説の剣は使いたくないんだよな。
俺は横になって体が回復するのを待った。
1時間ほどして体調が良くなったので、俺は地下迷宮のどこかにいる仲間を見付けに出発した。
「早く見付かるといいんだけど……」
10分ほど歩くと、そいつはすんなり見付かった。
妹の言っていた通り、爺さんだった。俺はさっそくその爺さんに声をかけてみた。
「おい、爺さん大丈夫か?」
「…………」
「爺さん、生きてるか?」
「……んあ? ……ヘルパーさんかい?」
「いや、違うよ」
その爺さんはベッドで寝たきりだった。
要介護3くらいだろうか?
「…………」
ナナミ、ふざけんじゃねぇーっ!
何で仲間になる奴が寝たきりなんだよ!
「……そこの爺さん、悪いけどオムツを替えてくれんかの?」
「え? ……あぁ、わ、分かったよ爺さん」
俺は仕方なく寝たきりの爺さんのオムツを変えてやった。これじゃ老老介護じゃねえか。
しかし、俺が来るまでこの爺さんはどうやってオムツを変えていたのだろう。
そして俺の介護生活は3日ほど続いた。
「……どうやらお迎えが来たようじゃ」
「え、そうなのか? まだ元気そうだけど」
「爺さんには世話になったのぉ」
「いや、気にするな爺さん」
そして寝たきりだった爺さんは、安らかな笑顔を浮かべ天国へと旅立っていった。俺は爺さんを火葬して、小さな墓を作ってやった。
まぁ看取ることが出来て良かったが、果たしてこのイベントにどんな意味があるのだろう。
もしかして、後々に「伏線回収」的な物があるのだろうか……?
いや、ある訳がない。
だってアホな妹が作ったゲームだからだ。
俺は仕方なく、他に仲間になる奴がいないか地下迷宮を探し回った。
しかしそれらしい奴は1人もいなかった。
……いねえのかよ!
それからどれくらい歩いただろうか?
俺は襲ってくる「みおちゃん」を殲滅しながら、懸命に上へ上と地下迷宮の階層を上がっていった。
「あ、光が見えてきたぞ!」
俺はとうとう地下迷宮を抜け出したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。