028 - おねえちゃん -

028 - おねえちゃん -



「・・・んぅ」


むくり・・・


私は寝心地のいいベッドから起き上がりテーブルに置いてあった照明のスイッチを押しました。


「・・・」


激務のせいで死ぬほど疲れているのに夜中に目が覚めたのは爺やが用意してくれたお茶を寝る前に飲み過ぎたから?。


私はお気に入りの可愛いもふもふスリッパを履いて寝室に併設されているお手洗いへ・・・行こうとしたのですが外の廊下が騒がしいです。


「爺や?」


ここは皇族のプライベートスペース、部外者は立ち入り禁止の筈・・・。


「`#@*”$%<+**”!!」


誰かが話しているのに分厚い扉に遮られて会話が聞き取れません、外の様子を伺おうと扉に近付くと・・・。


ばぁんっ!


ごっ!


ごろごろっ


「痛ったぁぁぁい!、頭ぁぁぁぁ!」


勢いよく開いた扉に弾き飛ばされ床に転がる私の前に現れたのは真っ黒な金属製の化け物でした!。


「グルルルル・・・グギャァァァ!」


ふるふる・・・


「わぁ・・・わぁぁん!、怖いよぉ・・・」


しょわわわぁ・・・


ほかほかぁ・・・


「お嬢様っ!」


「きゅぅ・・・」


私は恐怖でお漏らしをして意識を手放しました。


・・・


・・・













・・・


「お嬢様っ!・・・おいジュノー!、お前という奴はぁぁ!」


「待てヴォレー、ちょっと脅かしてやろうと思っただけだ、俺様は悪くねぇ!」


「どう見てもお前が悪いだろうが!」


僕の名前はシエル・シェルダン、今僕達はベネットおじさんに連れられてどこかのお屋敷に居る。


目の前には部屋に乱入しようとしたニートと口論する執事服を着た初老の男性、それを見守る僕とリンちゃん、それからベネットおじさん。


・・・とても豪華なお部屋の中にはお漏らしをして気絶している僕とよく似た顔の女の子が居た。


「クリーン」


ベネットおじさんが女の子に近付き手を翳すと・・・光る魔法陣?が身体を包み床や女の子の濡れた服が一瞬で乾いた。


「シエル、こいつがお前の姉貴だ」


ぱんっ!ぱんぱんっ!


おじさんが謎の笑顔で僕にそう言うと女の子を抱え起こし両頬を平手で張り倒した!、いやちょっと待って、女の子の扱いが雑過ぎない?。


「あぅ・・・痛い・・・」


「ギャハハハ!、キシャァァァ!キシャァァァ!!」


「ぴゃぁぁ!」


目を覚ました女の子の前に割り込み再び奇声を発してニートが威嚇する。


「ふはははは!、驚いたかアーシアぁ!、久しぶりだな元気だったか?」


「えぐえぐ・・・だっ・・・誰?」


女の子が涙と鼻水を流しながらニートに尋ねた。


「俺様だ!」


「ジュノー?・・・それに・・・ベネットおじ様ぁ!」


「この人が・・・僕のおねえちゃん?」


・・・




その後、僕達は執事さんの案内で寝室の隣にある居間に通された。


広い部屋の中には豪華な絨毯やソファ、上品な装飾品が置かれていて壁には大きなモニターと沢山の絵が飾られている。


女の子が顔を洗って来ると言って部屋を出て行ったので僕達はソファに座って大人しく待つ。


「あの絵が気になるのか?」


僕が一際大きな5枚の絵を見ていると後ろに立っているニートが話しかけてきた。


「うん、気になるというか・・・神話に出て来るドラゴンだよね、かっこいいなぁって」


絵には凶暴そうな5体のドラゴンが描かれていた、ドラゴンは空想上の生き物で絵本や小説、映画によく登場して星団の人々に恐れられている。


「ぷっ・・・」


僕の隣に座っていたおじさんが吹き出した。


「なんで笑うんだよベネット!、俺様の真の姿だぜ超かっこいいだろうが!」


ニートが意味不明な事を言って怒ってる・・・。




ギィ・・・


とてとて・・・


「お待たせしました、お恥ずかしい姿をお見せして申し訳ありません」


ぺこり・・・


寝室の扉が開いて女の子が居間に入ってきた、足元は可愛らしいもふもふなスリッパ、着ているのは何かのキャラクターが沢山入った子供用?の寝着(パジャマ)のようだ。


「遅ぇぜアーシアぁ!、顔を洗って来るなんて言ってたがクソでもしてたんじゃねぇのか?」


「なぁっ!・・・ジュノーがそんな格好で余(よ)を驚かせるからでしょ!」


「ははっ!、あれくらいで漏らしやがって聖帝のくせに情けねぇな、お前幾つだよ?」


ふるふる・・・


ニートの酷い言葉で女の子が震え始める、顔を赤くして泣きそうだ。


「え・・・聖帝?」


思わず呟いた僕の言葉に皆が反応する。


ベネットおじさんはニヤリと悪い笑顔を浮かべ、執事さんと女の子は信じられないという表情、リンちゃんは驚きで固まっている。


ニートはパワードスーツだから表情は分からないけどあれは絶対笑ってる!。


「黙ってたがこいつの名前はアーシア・フィーネ・ユーノス、ユノス星団の君主で最高権力者だぜ」


「ひっ・・・」


そんな話僕聞いてない!、待ってよ、昨日初めて居ると知らされた姉が聖帝陛下?・・・。


「ジュノー、この子達は誰?」


どうやら彼女も僕の事は知らないようだ。


「お前の妹とその友達だが」


アーシアと紹介された女の子が目を見開いて驚いてる・・・おそらく僕も同じ表情をしていると思う。


「聞いてないよ!、父さま達何も言わなかったし!」


叫ぶ女の子にニートが答える。


「当然だぜ、シエルはあいつらが城を出た後で産まれたからな」


「・・・」


「ほらシエル挨拶しろよ、お前の姉貴だぜ」


ニートに促されて僕は女の子と向き合った。


「初めまして・・・シエル・シェルダンと言います」


「どうも、アーシア・フィーネ・ユーノスです、聖帝やってます」


「・・・」


「・・・」


気まずい沈黙が流れる・・・。


「あのっ・・・僕は30年ほど前にベンダル・ワームに襲われて宿主にされました」


嫌な顔をされたら悲しいけど・・・これだけは先に言っておかないとダメだと思い僕は首に巻いているマフラーを取り首輪を見せた。


「・・・」


また気まずい沈黙が流れた・・・アーシアさん・・・聖帝陛下が頭を抱えている。


「俺様がちょうど故障しちまってる時に襲われたようだ、まだ宿主になって30年しか経ってねぇが色々と苦労してたらしい」


沈黙を続けている聖帝陛下にニートが言った。


「・・・なんで?」


「え?」


「何で余を頼ってくれなかったの!、余はあなたのお姉ちゃんみたいだし権力もあるから困ってる妹を助けられたと思うの!」


どうやら彼女は宿主の僕を変な目で見ていないようだ、正直ホッとする。


「えーと、でも僕も今初めて聖帝陛下だって知らされたし・・・」


ばっ!


陛下がベネットおじさんを見た。


「待て、俺はノルド達がシエルに言ってなかったから訳ありで隠してんのかと思って言わなかった・・・ってかこいつと会ってまだ40日ちょっとしか経ってねぇ!」


くるっ・・・


次に陛下はニートを見る。


「別に隠してた訳じゃねぇが俺様だって故障から目覚めて70日も経ってねぇぜ!」


「・・・まぁいいわ、それで、父さま達は今どこに居るの?」


「アーシアを心配させねぇように2人からは口止めされてたんだが・・・」


ニートが僕達にゆっくりと話し始める、それは信じられないような内容だった・・・。






「お前達の兄貴が死んだ・・・いや殺されたってのが正しいな」


「待って!、僕にはお兄ちゃんまで居るの?」


思わず僕は叫んだ!、お兄ちゃんも居るなんて聞いてない!。


「あぁ居るぜ、敵対勢力に殺されたらしい、新しい身体の準備に200年ほどかかりそうだったからその間「向こう」の統治と執務をやらなきゃならねぇって言ってたな」


「初耳だな・・・俺の兄貴は知ってんのかよ」


ベネットおじさんが話に割り込んできた、おじさんも知らなかったらしい。


「エッシャーのクソ野郎は仕事で忙しいと思ったから話してないぜ」


「ユーリ兄様がそんな事に・・・予備の身体は無かったの?」


陛下はどうやら話についていけてるようだ。


「培養してた設備丸ごと吹っ飛ばされた、念の為アーシアの予備を持って行ったようだがユーリの奴は嫌がるだろうな」


「そうだな、あいつの事だからこんな貧乳絶対に嫌だって言うだろうよ」


「ベネットおじさま酷い!、余はちょっとだけならあるもん!」


「何処にあるんだよ!」


「わぁぁん!、あるもん!、寄せて上げたらあるもんっ!」


・・・


「・・・どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


話が全然理解できなくて途中で考える事をやめた僕と隣で最初から話を聞いてなさそうなリンちゃんに執事さんが暖かなお茶を淹れてくれた。


リンちゃんは昔から理解出来ない話は流し聞きして分かったようなフリをするのだ!。


ベネットおじさんやニートとじゃれあっている陛下を見ると・・・驚くくらい僕と似ている。


艶やかな少し銀の混じった黒髪、華奢な身体、透き通ったグレーの瞳。


僕が見ていると目が合った。


すっ・・・


「大変だったね・・・」


陛下が立ち上がり、僕に近付いて抱きしめてくれた・・・今僕は聖帝陛下に頭を撫でられてる!。


「陛下」


「・・・お姉ちゃん(ぼそっ)」


「え?」


陛下が何か呟いたけれどよく聞こえなかったから聞き返す。


「余の事はお姉ちゃんって呼んで!」


陛下がお姉ちゃん呼びを要求してきたよ!。


「お・・・お姉ちゃん?・・・」


「きゃぁぁ!、おじさま見て!、余の妹可愛いわ、前から妹が欲しかったの!」


僕の頭を撫で回して陛下がはしゃいでる・・・映像で見た時は威厳があって格好良かったのにこんな人だったの?・・・。





















・・・


・・・


ごごごごご・・・


「やった、解けたぞ!・・・こんな厳重な封印初めてだぜ」


ごごごっ・・・


「さすがは王家の谷だわ、ここに来るまで散々酷い目に遭ったし早くお宝を探しましょう!」


「まずは俺が先に行く」


「何処に罠が仕掛けてあるか分からねぇからな、気を緩めるなよ」


「分かってるよ」


じゃり・・・


すたすた・・・


・・・


・・・


・・・


「おい、この道どこまで続くんだよ!」


「言い伝え通りなら谷底に神殿があってそこに秘宝があると言われているわ」


「道は下に続いてるから谷に向かってんじゃねぇのか?」


・・・


・・・


ごごごごご!


「三重の結界魔法・・・ここの魔法陣が一番やばかった!、おそらく神殿はこの扉の奥だ」


「早く行きましょう!、お宝を見つけて大金持ちになるのよ!」


「王家が権力闘争して警備が薄くなってる今しか狙えねぇからな、どんなお宝か楽しみだぜ」


・・・


「暗くて中がよく見えねぇな・・・ローズ、灯りを頼む」


「分かったわ・・・シャイン!」


ぱぁっ!


「何も無ぇぞ・・・向こうの奥にあるのは何だ?、黒い岩?」


「エリック・・・」


「何だよダニー」


「ありゃ岩じゃねぇ・・・上を見てみろ!」


「上・・・なっ・・・何だありゃ!」


「やべぇ・・・化け物だ・・・」


「私・・・教会の書庫で見た事があるわ、あれは黒龍・・・」


「おいローズ、黒龍ってまさか・・・」


「空から舞い降りし魔王軍・・・勇者と共に黒龍ジュノーが殲滅す・・・」


「有名なお伽噺だな、5大国を守護する5頭の龍を率い勇者が魔界に旅立つ・・・ってやつだろ、子供の頃に絵本で読んだぜ」


「宝ってこいつかよ・・・」


「ねぇエリック、帰りましょうよ・・・眠ってるようだけど神獣相手に人間が敵う訳ないわ」


「眠ってるのか?・・・死んでるなら鱗一つでも持ち帰れば一生遊んで暮らせそうだぞ」


・・・


・・・


「近寄るとデカさが尋常じゃねぇな、まるで山だぜ」


「剥がせても持って帰れねぇぜ」


「ここまで来て手ぶらで帰れるかよ!、おいローズ、浮遊の魔法陣で剥がした鱗を浮かせられるか?」


「やってみないと分からないわ・・・浮かせても出口まで私の魔力が保つかギリギリね」


「魔力ポーションは何本持って来てるんだ?」


「5本・・・全部使えば何とか行けるかも?」


「じゃぁ1枚剥がしてみるか」


・・・


・・・


がきんっ!


「畜生!、俺の剣が折れた!」


「傷一つ付いてねぇぞ!」


・・・


ぞくり・・・


「ひゃぁ!、何この魔力?」


「くそっ、気持ち悪くて吐きそうだ!」


「魔力酔いだ・・・っておい見ろ!、黒龍の目が開いてる!」


・・・


「おい・・・逃げるぞ」


「ダメだ、足が動かねぇ!」


ばきっ!ごきっ!


「ぐぁぁ!、腕が・・・足の骨が折れた!」


「嫌ぁ!、誰か助けて!」


・・・


・・・

















・・・


「・・・ト」


・・・


「ねぇ、ニート!」


「ふぉっ!、な・・・何だよシエル」


「お姉ちゃんがもう明け方近いから話は明日にしようって・・・」


「どうしたジュノー、もしかして寝てたのかよ」


「寝てねぇし!、うるさい羽虫が居たから追い払っただけだ」


「虫なんて居ないし、寝ぼけてるんじゃないの?・・・船に戻るよ」


「俺様は寝ぼけてねぇ!」

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スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜 柚亜紫翼 @hkh

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